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第5話 はじめての朝というもの
しおりを挟む果てた後もイオスはイソラの身体を離さず、何度も行為を強請った。
「ーーイソラ」
「そろそろ怒るぞ」
「だって!好きすぎて死ぬ!」
「大袈裟すぎるな……」
やれやれ下がこんなに痛いとはーー、イソラは痛みを我慢しながら立ちあがる。
「ーー血がでたのか」
シーツに残った残滓を見てイソラが眉をしかめた。
「ごめん……。痛いよね?」
「血がでるとは、女のようだな……」
痛いとは言わずに、イソラが腹をさする。
「甘く、しびれている……」
「!」
妖艶な流し目がイオスの心臓をわしづかみにした。
「もうっ!死ぬ!」
「生きろーー」
「大好きっ!」
「ふふっ。イオスは面白いなーー」
イソラは用意してもらった服を着ながらつぶやく。
「ーー男でも他人が侵入できる部分があったのだな……」
「……」
その物憂げな表情を見ていると、イオスの危険物に再び火がつきそうになる。
「ーーでも、本当は、……良くなかったよね?」
落ち込んだ声に、イソラが首を横に振った。
「ああ、気にするな。私の男の部分は病気のようなもので、感じないのだ」
「病気ーー」
「ふふっ、後ろはちゃんと、気持ちよかったぞ」
胸がキュンとなったイオスは、イソラに抱きつく。
「ーー後悔してない?」
「いや、不思議なだけだ……。イオスになら愛される側も悪くはないと思うーー」
倒れたイオスを、イソラは抱えたそうだーー。
「襟がふわふわとした服は落ち着かない」
「そうだね。星藍国の服を作ろうか」
「とりあえずはいらない。また給金をいただくようになれば自分でつくる」
「給金ーー。本当に兵士になるの?」
「もちろん」
「イソラは僕の妻だ。働く必要はない」
「何を言っている。働かない妻などいないだろうーー。皆、何かしら仕事をしているものだ」
それはそうだけど……、軍になどいられたら毎日心配で心がもたないかもーー。
「……なら、僕の下についてもらう」
イオスの提案にイソラが頷く。
「ふむ。いいだろう」
「念を押すけど、誰かに夜の行為に誘われても絶対に行かないでよ」
「私が不貞を働くとでも?」
心外だ、とイソラが不満を口にした。
「言葉巧みに誘うヤツだっている。だまされないでね」
「わかった。イオスだけだ」
イオスは悶えそうになる自分と戦い、なんとか勝利をおさめた。
思った通りスズハが起きる様子はなく、それは三日たっても変わらなかった。
「ーー本当に疲れてるんだね」
雲龍山の過酷さと、この子供の強さに瞠目する思いだ。
「ーー辛いと言わん子だ。そのように躾られているのだろうーー。しかし、兄上には男児がおられなかったが、後継者がいなければ困るだろうに……」
「そう?親族には誰かしらいるもんじゃない?」
「兄上は三十を越えている。三十五までに男児の後継者がいない王は、退位を言い渡される」
「え?そうなんだ……。ちなみにイソラはいくつなの?」
「二十六だ」
「……」
まさかのふたつ歳上だった。
「そっか……」
「なんだ、がっかりしたのか?」
「違うーー、僕のこと頼りないと思わない?」
「まだわからない」
はっきりと言われイオスは笑うしかない。
「それはそうかーー。さて、スズハはメイドにまかせて兵舎へ案内しよう」
「うむ。待ちかねた。身体がなまっている」
「はははっ。元気だね」
「三日寝ない事などよくあったからなーー」
剣をかまえて振る真似をする。身体の動かし方に無駄がなくきれいだ。
「ーー敵が多かったの?」
三日寝かさなかった身としては、彼の体力にも自分の性欲にも呆れるしかないのだが。
「国が弱かったのだ。常に蛮族に舐められるほどにな……」
この三日でイソラとスズハの戸籍の処理をした。報告にイオスの兄達は特に興味もなさそうだったが、ラディウスは何かしら言ってくるだろうーー。
「じゃあ、行きますか」
「頼む」
結い上げた黒髪は艷やかに背中に揺れ、黒い切れ長の目が強く光る。イグニスのクリーム色と黒の切り替えの軍服が、イソラの精悍さを完璧に引き立てていた。本当に、非の打ち所のない美青年だ。
絶対に変なのが寄るーー、これはもうが仕方ない。
イオスは覚悟を決めて、彼を兵舎に連れて行った。
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