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31.引き寄せられた部屋
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「ーー申し訳ございません……」
「なんで謝るんだよ」
「ーー宿がないとは……」
「十分、十分」
建国祭でひとが増えた王都には、歩ける範囲内に泊まれる宿がなかった。食事だけはできたんで助かったんだけどさ。
どうしようかなーー……、って悩んでたらクラメンががんばって探して来てくれたんだよ。ホント、できたひとだよな。それも、どこかの貴族が亡くなって、空き家になってしまっている屋敷だって(民泊みたいなものなのかな?)。
「ワクワクするよな」
「………」
空き家っていっても、無人になってからそこまで年数がたっていない感じの、とてもきれいな状態だ。いや、普段から管理をしているひとがいるのか、掃除さえきちんとすれば、いつでも住めそうだよ。家具もそのままだし、こんなのリサイクルで欲しいひとたくさんいるんじゃないか?
「ーー高そうな家具だな」
「そうですね……。………ここは、ラノス伯爵家の別邸だったようです」
「ふ~ん」
伯爵だ、公爵だ、よくわからないな。
「ーーその一人娘であられるロディテ様が、ここをお使いになられていた、と……」
「ひとりで?」
こんな立派な屋敷を?貴族ってすごいんだなーー。
「いえ………」
「?」
どうしたんだろ?ーーこの屋敷に来る前からクラメンの様子が変なんだ。何か俺に言いたいことがあるのに、言い出せないような……、そんな顔を何度もする。
なんでだろーー……、いや、もしかするとこの屋敷に何かあるんだろうか……?
うつむいたまま動かないクラメンをそのままに、俺は簡易ランタンをもって屋敷内を歩く。
1階は玄関ホールの他は厨房や応接間なんかがあって、薪が積まれていたから暖炉が使えそうだ。正面の螺旋階段をあがると2階、そこは家人っぽい部屋が並んでて、特に変わったところはない。
そして、最後は3階。ここからは何もかもが下階とは違う。ロングギャラリーに飾られた絵画は、格調高い宗教画が多く並び、模様が美しい絨毯みたいなのも吊るしてあった。床に敷かれているしっかりとした絨毯、廊下を彩る調度品、すべてが素人が見てもわかるぐらい高級なものばかりーー。
よく盗まれないなーー、……ん?
大きな部屋を覗いた俺は、この部屋の中から、嗅いだことのある匂いがすることに気づいた。部屋全体は女子によくある甘ったるいニオイがしてるんだけど、その一部分からさわやかな氷、っていうのかな……すっきりした匂いを感じたんだ。
ーーこれが、令嬢のお部屋、ってやつかーー?
続き間になっていた寝室は、かなり乙女チックな内装だ。部屋全体が薄ピンクで統一されていて、ドレッサーやチェストも似た色になっていた。部屋のメインのベッドは、お姫様が寝ているベッド……ってイメージできるピンク系のへッドボードとフットボードに、天蓋は愛らしいレースがついている。
全体的に色褪せてはいるけど、贅沢品が全部つまったような部屋だよな……、どんな女子が暮らしていたんだろうーー。
これを見るとロウバイ宮殿なんかシンプルだ、調度品も最低限だし、色は自然だし……。いやいや、ひとの趣味にケチをつけるなんて悪趣味だよ、と反省した俺はそれ以上覗くのをやめて、クラメンのいるところまで引き返そうとした。
「………」
けど、ベッド脇に置いてある机の引き出しが開けっ放しになってて、なんだかそれが気になってしまったんだ。しかも、あの匂いもそこからでているような気がするしさ………。
普段ならひとのプライバシーに関わることなんかしないけど、俺はそこに吸い寄せられるように近づき、引き出しに手をかける。最初は閉めようと思っていたのにーー……、
ーーなんで見てしまったんだろうな……。
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