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32.失恋?
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「………」
絵だ。引き出しに絵がはいっている。写真みたいにリアルな絵ーー。俺はそこに描かれている人物の姿を、じっと見つめた。
少女と少年がふたりでソファーに座っているその絵は、まるでふたりが生きて動くんじゃないかってぐらい、緻密に、丁寧に描かれていた。
「…………ーー」
絵の少女、ーー残念ながら俺にはその子が可愛いかどうかの判断がつかない。まあ、一般的な容姿なんじゃないか?けど、少年のほうは文句無しの美少年ってやつだよ、これ以上のイケメンは探すのが難しいだろうなーー……。
少年のほうは表情こそ無表情だけどさ、雰囲気で幸せそうなのがわかったよ。少女のほうは聞くまでもないってぐらい、幸せいっばいな顔で、びっくりするぐらいお似合いなふたりの姿がそこには描かれているーー………。
絵の中の少年と目が合っているような気がするけど、俺はこいつを知らないし、こいつも俺なんか知らないーー……。
ーー見たことのない顔だ……、まるで他人だ……。
パタンッ。
「ーーセラフィナ様……」
引き出しを閉めて、声がしたほうを見る。
「………ん?ごめん、探検してたんだよ。非常識だったよなーー」
クラメンに笑顔を見せて、俺はその部屋から出た。
「申し訳、ございませんーー」
突然、クラメンが俺の顔を拭いてきた。
「何がだよ……。変なクラメンーー」
どうしたんだ?びっくりするじゃないかーー。
「ーーー泣いておられますので……」
「………、ああ…、ゴミだよ……、目が痒くてさ……」
何で俺は泣いているんだ……。何か悲しいことでもあったのかーー?
「ーーセラフィナ様……」
「ん……?どうした?」
「お好きですか?ーーー陛下のことが………?」
ドクンッ。
それは俺が経験するはじめての気持ちだ。いままでは、「あの子がいいな」、「このアイドルカワイイ~」、ってぼんやりと思ってきたけど、俺には明確な好みなんてない。告白されたことはあったーー、けど、冷やかされるのが恥ずかしくて付き合えなかったりして、友達といるほうが楽だった。
「ーークラメン」
「はい」
「俺はひとを好きになったことがない。人間的に良いヤツとか付き合いやすいダチはたくさんいたけど、それがなくなっても泣くことはないと思うんだーー」
近所に住んでた気の合う幼なじみ、小学校からの友達、高校にはいってからの部活仲間。みんな大好きなひと達だったのにーー。もう、会えなくても、「そっか」、ってあっさりしている自分がいる。
「そうですか……」
「好きなひとって、どういう感じなの?」
どういうひとを好きになったらいいのかな?やっぱり自分のことを好いてくれるひと、かなーー……。
俺とクラメンの間に静かな沈黙がおりる。この数ヶ月の間に、俺達は本当に助け合い、信頼しあってやってきた。クラメンは俺が言葉にださなくても、俺より俺のことをわかってるようなとこあるんだよな……。
「ーーそうですね……。ふとしたときに必ず思い浮かべてしまうひと、でしょうか……」
「思い浮かぶ……」
「何をしてても気にしてしまう……、気づけば目で追っている、そんな自分でも自分をとめられないほど夢中になってしまうひとが、わたくしの過去にもいました」
「………そっか…」
……あいつの過去……、あいつの心の中に、ーーいまも、……いるんだろうな………。
「陛下のことを考えましたかーー?」
クラメンの言葉に胸がざわざわする。指摘されると「恥ずかしい」、っていうのもあるし、「自分てそうなのかな?」、って戸惑ってしまう。
「う~~~ん。なんだか、好きだと思う前に、失恋したって感じかな?」
「………そうですか…」
俺の気持ちなんかわかっていたんだろうな……、クラメンがつらそうな顔で俺を見ている。
ーーあ~あ、そういうことなんだよな………。うんーー、いろんなことが腑に落ちる思いだーー……。これは何もはじまらない、ってやつか……。
「ーーここは、誰からの紹介なんだ?」
「………」
クラメンからの答えはなかった。唇を噛みながら、必死の思いで話すのを我慢してる顔を見たら、俺もそれ以上何も聞かないけどさーー。
「ーー………」
自分でもとめられない想いか……。ふふっ、俺はまだ大丈夫そうだ………。
絵だ。引き出しに絵がはいっている。写真みたいにリアルな絵ーー。俺はそこに描かれている人物の姿を、じっと見つめた。
少女と少年がふたりでソファーに座っているその絵は、まるでふたりが生きて動くんじゃないかってぐらい、緻密に、丁寧に描かれていた。
「…………ーー」
絵の少女、ーー残念ながら俺にはその子が可愛いかどうかの判断がつかない。まあ、一般的な容姿なんじゃないか?けど、少年のほうは文句無しの美少年ってやつだよ、これ以上のイケメンは探すのが難しいだろうなーー……。
少年のほうは表情こそ無表情だけどさ、雰囲気で幸せそうなのがわかったよ。少女のほうは聞くまでもないってぐらい、幸せいっばいな顔で、びっくりするぐらいお似合いなふたりの姿がそこには描かれているーー………。
絵の中の少年と目が合っているような気がするけど、俺はこいつを知らないし、こいつも俺なんか知らないーー……。
ーー見たことのない顔だ……、まるで他人だ……。
パタンッ。
「ーーセラフィナ様……」
引き出しを閉めて、声がしたほうを見る。
「………ん?ごめん、探検してたんだよ。非常識だったよなーー」
クラメンに笑顔を見せて、俺はその部屋から出た。
「申し訳、ございませんーー」
突然、クラメンが俺の顔を拭いてきた。
「何がだよ……。変なクラメンーー」
どうしたんだ?びっくりするじゃないかーー。
「ーーー泣いておられますので……」
「………、ああ…、ゴミだよ……、目が痒くてさ……」
何で俺は泣いているんだ……。何か悲しいことでもあったのかーー?
「ーーセラフィナ様……」
「ん……?どうした?」
「お好きですか?ーーー陛下のことが………?」
ドクンッ。
それは俺が経験するはじめての気持ちだ。いままでは、「あの子がいいな」、「このアイドルカワイイ~」、ってぼんやりと思ってきたけど、俺には明確な好みなんてない。告白されたことはあったーー、けど、冷やかされるのが恥ずかしくて付き合えなかったりして、友達といるほうが楽だった。
「ーークラメン」
「はい」
「俺はひとを好きになったことがない。人間的に良いヤツとか付き合いやすいダチはたくさんいたけど、それがなくなっても泣くことはないと思うんだーー」
近所に住んでた気の合う幼なじみ、小学校からの友達、高校にはいってからの部活仲間。みんな大好きなひと達だったのにーー。もう、会えなくても、「そっか」、ってあっさりしている自分がいる。
「そうですか……」
「好きなひとって、どういう感じなの?」
どういうひとを好きになったらいいのかな?やっぱり自分のことを好いてくれるひと、かなーー……。
俺とクラメンの間に静かな沈黙がおりる。この数ヶ月の間に、俺達は本当に助け合い、信頼しあってやってきた。クラメンは俺が言葉にださなくても、俺より俺のことをわかってるようなとこあるんだよな……。
「ーーそうですね……。ふとしたときに必ず思い浮かべてしまうひと、でしょうか……」
「思い浮かぶ……」
「何をしてても気にしてしまう……、気づけば目で追っている、そんな自分でも自分をとめられないほど夢中になってしまうひとが、わたくしの過去にもいました」
「………そっか…」
……あいつの過去……、あいつの心の中に、ーーいまも、……いるんだろうな………。
「陛下のことを考えましたかーー?」
クラメンの言葉に胸がざわざわする。指摘されると「恥ずかしい」、っていうのもあるし、「自分てそうなのかな?」、って戸惑ってしまう。
「う~~~ん。なんだか、好きだと思う前に、失恋したって感じかな?」
「………そうですか…」
俺の気持ちなんかわかっていたんだろうな……、クラメンがつらそうな顔で俺を見ている。
ーーあ~あ、そういうことなんだよな………。うんーー、いろんなことが腑に落ちる思いだーー……。これは何もはじまらない、ってやつか……。
「ーーここは、誰からの紹介なんだ?」
「………」
クラメンからの答えはなかった。唇を噛みながら、必死の思いで話すのを我慢してる顔を見たら、俺もそれ以上何も聞かないけどさーー。
「ーー………」
自分でもとめられない想いか……。ふふっ、俺はまだ大丈夫そうだ………。
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