冷酷な皇帝陛下の妃候補(身代わり)になったんだけど、男だってバレたら殺されるらしい。

濃子

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33.本物?

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「何をおっしゃるの?わたくしがセラフィナですわ。無礼なことをいうのはやめてちょうだい」
「そうでございますよ。こちらの御方がまぎれもないニバリス国王女セラフィナ・ニゲル・アドルム殿下でございます」
 大勢の家臣に囲まれ、ツンと肩をそびやかせているのは、ニバリス国の民族衣装を着た女だ。女は自分をロウバイ宮殿の主、セラフィナだと主張するのだがーー……。




「……どういうことだよ」
「わかるかよ……」
「感じも違うよなーー」

 突如あらわれたセラフィナ御一行様に、皇帝の広間にいたものは当惑するしかなかった。

「ーーえ、っと……」
 カメリアは眉をしかめた。どう考えてもいままでのセラフィナとは違うーー、だが、この家臣の数を見ると、こちらが本当のセラフィナなのだろうか?

「ーーあなたは声がだせないはずです。陛下を謀っておられたのですが?」
 まずはそこだ、とカメリアは切り込んだ。
「失礼な!セラフィナ様はおつらい闘病の末、お声の病が治られたのですよ」
 セラフィナの前にいた体格の良い男が、心外だとでもいうように、オーバーな身振りで腕を広げる。

「いいのよ、セチア。病気のつらさなんて、他人にはわからないものなのだから」
 セラフィナがしおらしく服の袖で顔を覆った。
「ですが、ーーそちらにおられるセラフィナ様はどう見ても前からおられる方と違いますよね?」
「同じですよ」
 男には何の動揺も見られない。妙に堂々としていて、気味が悪いくらいだ。

「………」
「陛下のご側近なのに、お目が悪いとはーー」
「何を!」
「セチア、わたくし疲れましたわ」
「そうでございましょう。慈善活動も大変でございましたね……。さあ、ロウバイ宮殿に帰りますよ」
「ホント、疲れたわぁ」
 わざとらしく肩をさわり、セラフィナがカメリアを睨んだ。そして、そのまま皇帝の間から下がろうとする。

「お待ちくださいーーー」
 カメリアの静止など、どこ吹く風だ。その様子に顔をしかめ、セラフィナに詰め寄ろうとしたカメリアを、近衛兵ブラコアがとめた。「カメリア、陛下が来られたぞ……」、と静かに彼女に耳打ちをする。

 ほどなくして、奥の皇帝の扉から、グラキエスが姿をみせた。

「陛下が……」
「やはり、ロウバイの乙女様の身を案じて……」
 ひそひそと話し声がする中、グラキエスがセラフィナの側に寄る。

「………おまえはーー」
「陛下!」
 セラフィナが待ちかねていた様子で、グラキエスの胸に飛び込む。たが、その瞬間、グラキエスの愁眉がきつくよせられた。彼はやわらかい女の身体を、ゴミをはらうように押しのけ、顔を背けて言う。

「下がれ」
「まあ、早くお会いしたかったのに……」
 ひどいですわ、と泣き真似をする女を凍りつくような目で見ながら、グラキエスは言葉を続けた。
「死にたいのか?」
 低く響いた声を気にせずに、強気な乙女がグラキエスに触れる。

 彼にしか聞こえない声でセラフィナが囁いた。
「ーー陛下ぁ。ツキリはどなたに似てらっしゃるのぉ?」
「………」
 目を見開いたグラキエスを満足そうに見て、セラフィナが笑う。

「どうして欲しいですかぁ?」
「………」
「ふふっ。そうでしょうね………。さあ、わたくしの大切な陛下。そのようなお顔はやめてくださいなーー」
「……もう、話はよろしいでしょう?では、陛下。我々はロウバイ宮殿に下がりますので、失礼致しますーー」
 堂々とした態度をくずさずに、セラフィナ達が広間から出ていく。


「陛下、よろしいのですか!」
「……」
「ーー陛下?」
「……部屋に戻る」
「え?」
 グラキエスの言葉を聞き、カメリアが口をポカンと開けた。

「ーー陛下?」
「カメリア、陛下はどうされたんだ?」
「わかりません……」
「じゃあ、あのセラフィナ様は本物でいいんだな?」
「………」


 
 混乱の中、建国祭は終わるーー。 



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