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ラース家の一族 編
第21話 ラース家の謀(はかりごと)
しおりを挟む「ーーああ」
『もうちょっと早く呼んでくれよ~!』
「すまない……」
その頭を撫でながら、俺は父を見る。驚愕に目を見開いた、間抜け面をな。
「なっ、」
「で、アディ殿下ーー?」
兄や弟達が口を開けたまま、言葉を続けられない。
『おいおい!なんで俺の許可なく髪の毛切ってんだ?』
不服そうに眉を寄せられ、俺は苦笑した。
「焦げたからな」
『切った髪どうしたんだ?枕に入れたいんだけど』
「チクチクするだろうな」
しかも、焦げくさいだけじゃない、獣臭い。
『毎日おまえの匂いに埋もれて寝たいんだよーー』
甘える口調に頬が緩んでしまう。
「ーー他のものを考える」
『約束だぞ。幼少期から使ってるブランケットとかないのか?』
「ない」
『チッ。そういえば俺、へブリーズのおまえの家には行ったことないな』
「たいしたものはない」
『ーー元カレの物とか置いてないだろうな?』
「………」
誰もが宙に浮くアディを見て、呆然としている。だが、俺も内心の動揺を悟られないように必死だ。ーー誰だ?アディに余計なことを言ったのはーー(ごめ~ん byサシャラ)?
『ーーまあ、伸びていく過程が見られるのか……、それもまた興奮するポイントだよ』
頬に唇があたる感触がする。泣けてきそうになる感情をこらえ、俺は話を続けた。
「身体は大丈夫なのか?」
『うん、近くに世話してくれるひとはいる』
「世話?」
『エアロとムシュカって若いオジサン』
「えーーーッ!!」
兄が叫び、父は頭を抱える。
「どんな場所だ?」
『ーーひどいと思う』
「大丈夫か?」
『婚約者の実家に来て、起きたら地下牢みたいなところだなんて、俺はどれだけ嫌われてるんだ?』
「余裕だな」
『害はなさそうなんだけど、話しかけてもスルーなんだよ』
「そうか……」
『まっ、大事な息子さんを、俺なしじゃ生きていけなくしたんだから、うらまれても仕方ないか』
頬にギュッとくっつかれて、俺は笑ってしまう。
「……違いない」
『なあ?ーーん、あれ、リーダってひと?』
まわりをくるりと見回したアディが、唖然としているリーダに気づいた。
「そうだ。おまえの運命の相手らしいぞ」
『へぇ~。なんだ、運命と好みって違うんだな』
「ーー違ったか?」
『運命なんかいらないよ。俺にはキサラがいればいいもんーー』
俺の前に移動してきたアディを、かかえるみたいに抱いてみる。それは光なのに、アディの身体に触れているような温みを感じた。
これは完全に『精神体移動魔法』だな。魔法を3つも所持とはーー、恐ろしいやつだ。
『ーーなあ、キサラ』
「どうした?」
『なんで隣りにエリンがいるんだ?エリンとリーダができているのか?』
リーダの隣りにいたアディオンの身体が、ビクッと震えた。ああ、なるほど、アディには視えているのかーー、精神体には、そのひとの本来の姿がわかるんだな。
「ーーやはり、……エルダかーー」
「エルダ!?えっ?」
兄が口を押さえた。
「変化の魔法だな?」
確信を得たように言うと、これ以上はごまかかせないと思ったのか、アディオンが肩を落とした。
はぁ………。
嘆くような息が吐かれる。それと同時に身体が変化していった。
実のところ、従兄弟といえど俺はあまり接点がなかったため、なんとなくでしか覚えていない。そんな状態でよく探そうと思っていたな、と言われそうだが、ラースのアザ花種は顔を見ただけでわかる。
流れるような艶のある金髪に、翡翠のような色のはっきりとした瞳。そして、兄のような容姿端麗な人間達ーー……。
ーーなんだ、が……?リーダと兄弟のはずなのに、あまり似ていない……。
「ーーエルダ、本当に?あなたなのーー!?」
どうしたのか、兄が困惑しているような表情でエルダを見ている。
「元気そうですね、ーーサキナ兄様……」
遠慮がちに口を開いた青年は、髪の毛も金色より薄いし、目の色も黄緑色に見える……。
「ーーマキラ、タキナ」
兄の様子から、俺は弟達にも確認をとる。
「………記憶と違う…」
「う、うん。ぼくもそう思う……」
「……」
ーーどういうことだ……?
俺達の疑惑の視線など気にならない表情のエルダが、アディに頭を下げた。
「ーー殿下、ご迷惑をおかけしました」
『ん?なんかあったの?』
「ーー僕があなたの従者になったのは、ラース家から、エウローペー王家に入り込むように言われたからです」
『え?なんで?』
「もちろん、ラース家とエウローペー王家の婚姻のためです……。ラース家は、アザ花種ではなくなったリーダの使い道を探していた……」
『使い道、って……』
「アザ花種のセディラン殿下にはすでに婚約者がいました。後の御二方はアザ花種ではないと聞いていましたが、エウローペー大陸では、後天性の研究が遅れている」
『………』
「僕が殿下の身体を確認したところ、子宮があったので、計画が進められたのです」
『え?どうやって調べたんだ?え?中でも触ったのか!?』
「ーー僕は産助手の勉強をしていましたから、………外からでもわかります」
嘘をつくな。中からと外からじゃなければわからないはずだ。
『え?そうなの!?』
すごいんだな、とのんきに言う。この警戒心のなさでは、入り込むのも楽だったろう。いや、俺達が仕事でエウローペー城にはいったときも、兵士達ですら警戒心が薄かった。
……一度も攻められたことがない国とは、そういうものなのかもな。
「そして、アディオン殿下をラースに連れて行く策が考えられました。ですが、まさかキサラがでてくるなんてーー……」
「……」
「先に目をつけたのは僕達なのに、計画を変更せざるを得なかったーー」
「計画ーー」
「ええ。誘拐する計画です。僕が殿下に変化して、エウローペー城で王子になりきる。殿下はこちらで、リーダと暮らすーー……。なのに、キサラがよけいなことをした所為で、城の警備がきつくなった」
「ーーそれはそれは」
「忌々しい、ラースの出来損ないがーー」
唇を噛んだエルダを見て、アディの顔色が変わる。
『ちょ、エリン!おまえ、俺のキサラに何言ってんだ!』
抗議する姿には惚れ直すしかないが、かなり恥ずかしい。
「ーーさらに問題だったのは、殿下の性格の変化」
『うっ!』
「すべて記憶したと思っていたら、一からやり直しーー」
『それは、なんとも申し訳ない次第ですが……』
「謝る必要はない。こいつらはおまえを勝手にさらって、リーダとの間に子供を作ろうとしていたんだぞ」
『ありゃ~、また俺の地位目当てなんだな……。ん?でも、なんでキサラじゃだめなんだ?よけいなことするよりキサラがラース大公になりゃ、俺もこっちにいるじゃん』
「……」
『ん?』
「アザ花種だったリーダのほうが、アザ花種が産まれる確率が高いのかもな……」
『はい、出ました!俺はアザ花種を産む道具じゃねえわ!おまえんち、ほんと変わってるよなーー!』
「ーーええ、狂った家ですよ……」
『おい!まさか、おまえ、じいやを巻き込んだな!?』
「………一服盛りました」
『最悪だな!一番許せないことだ!』
「……ああいう場合、マルス様がどう言われるか、予想していましたから……」
『!』
アディがエルダをきつく睨みつける。酷い話だが、たしかにあの御仁がいれば、エルダがアディに化けようが即バレていただろう。
ただ、俺ならあまり近寄らないようにすれば、すぐにバレることはない。そのために『運命』を利用したんだな。
『もう、絶対に許さないからな!』
「かまいません。ですが、殿下には殿下にしかできないことをしていただきますーー………」
『なんだよ……?あーー、身体が引っ張ってきた』
「どの辺にいるんだ?」
『ウロウロしてる』
「ーー大人しくできない、か……」
『うん。迷っても最初のところに転移できるからさーー。そうだ、最初の部屋は魔神馬の馬舎の近くだよ。鳴き声が聞こえた』
「ーーそうか、居城の入り口に近いな。そこに転移できるか?」
『いいよ』
アディがパッ、と姿を消した。その場に残った光の粒が、俺の身体を包んできらめく。
「ーー馬舎に行ってくる」
「エアロとムシュカもそこにいるのね?」
「だろうな……。ただ、味方とは思わないほうがいいーー……。何かの目的で捕らえているんだろ?」
俺の問いかけにリーダが小さく頷いた。
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いつも最後まで読んでいただき本当にありがたとうございます😊
いいね、エールでの応援、感謝いたします。
はな様、見事予想通りです😄
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