(完結)主人公の当て馬幼なじみの俺は、出番がなくなったので自分の領地でのんびりしたいと思います。

濃子

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ラース家の一族 編

第29話 ラース大公ナディア ※キサラ視点※

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「ーーお祖父様!孫いじめも大概になさってください!」
 扉につっかえながら兄が部屋に入ってくる。ーー鈍臭いところは変わらずか……。

「サキナか……。はあーー、残念だ。まさか、おまえに裏切られるとはなーー……」
「裏切られるほうに問題があったんでしょうね!」
 
 凄いーー、兄は祖父の顔を見ても、動揺せずに堂々としている。

「エウローペーの血ほしさに、ずいぶんと手を尽くされたご様子で」
「ああ、ラースと並ぶ古い血だからな、是非とも手に入れたかった。これに、私を産んでもらいたかったのだがーー……」
 はあーー、と落胆した様子の祖父に、兄の目が細められる。

「……」
 だが俺は、祖父の言葉や態度から、悟ることができた。
 ーー調べはしたが、アディの子宮は子供ができる状態じゃなかったのか……。


「ナディア様!マキラ様とタキナ様がおられます!あのふたりのどちらかにーー!」
 兵士に拘束させているカルロが、外から叫んでいる。あいつの忠義心には、底がないな。

「もうよい……。外の風が入ってくる……、雨上がりの良い風だーー……」
「………」
「こんなところに籠もっていたところで、何の楽しみもないーー……」
「ですが……!!」

「ーーまだ寿命があるなら、その間にやるべきことはしておかないとな。サキナ、アイゼを雲瀏にやる」
「!」
「奴らは長年ラースの領地を狙っている。ちょろちょろとうっとおしい………。おとなしくさせるためなら、子供のひとりぐらい差し出せ」
「ふざけないでください!」
「ふざけているように、見えるか?」
「あの子は、旦那様の子です!お祖父様の好きにできる子ではありません!」

「何を言っているーー、ラースのアザ花種から生まれたアザ花種は、皆ラースのものだ」
「何を馬鹿な!」
「それで、ラースの民を守れるのだ。ラースのアザ花種にはラースの民を守る使命がある。普通に生まれた者では、民の役に立たない」
「お祖父様……」
「ラースの領地が奪われてもおまえは平気なのか?自分の子のほうが可愛いのか?」
「……」

「ーー平和に解決するには婚姻しかない。おまえにもそれを理解して欲しかった……」
「お祖父様ーー。お祖父様の理想はよくわかりました。ですが、アディ殿下にお祖父様のクローンを生ませるとは、そこは理解ができません。そんなもの、お祖父様ではないでしょ?」
 正論をぶつけても、無駄のようだな。祖父には兄の言葉など聞く気がない。ほんの少しも自分が間違ってるとは思っていない面だ。


「その通りだーー。だが、私と同じなら、臓器も同じだろう?」
「ーーお祖父様、何をおっしゃっているのです?」
 兄の顔色がみるみるうちに変わっていく。

「クローンを成長させ、必要な臓器を入れ替える。ただ、それだけだ」
「……なんて、馬鹿な考えを……。それではお祖父様の寿命が先に尽きます」

「クローン魔法技術を私はいつから手を付けたと思っている?その成長は普通の人間よりはるかに早いとされているのだ。ーーそれに、見てわからないか?」
 からかうような祖父の言葉に、兄が少し考える顔になった。


「………お若い?」
「そうだーー。シャーリの保護魔法は私にもかけられている。奴が生きている間、私が死ぬことはないーー」
「………」

 祖父の語る話の内容には、恐怖しかない。自分のためにクローンを作って、臓器を入れ替えるなど、正気の沙汰じゃないだろ。


「ーーこっわ、ありえない」
 扉をひょいっと、軽々持ち上げたタキナが身を震わせる。重さをなくしたのだろう、扉は簡単にあいつの身長ぐらいまで開いた。
「まじでイカれちゃったんだ……。保護魔法のかけっぱなしもよくないんだよね……」
 マキラも表情が凍りついている。

「ーーまず脳がやられるんだ……。まともに思考が働かなくなってくる」
「ーーエアロとムシュカもかかっているのね……」
 兄が、椅子に座ったまま動かないエアロを見て、肩を落とした。

「ーーあの頃と歳が変わらなく見える……。苦労をかけたわ、エアロ……」
 悲しげに眉を寄せる兄を見ても、エアロの表情は変わらなかった。ぼんやりとした顔で、「ああ、サキナ様ですか。お元気そうで」、と口を動かす。姿は昔と変わらないのに、まるで別人のようだ。


 完璧に見えるかもしれないが、保護魔法には欠点がある。短期間なら影響はでないのだが、長期に渡って人体にかけ続けた場合、音や匂い、食味などからも身体を保護してしまうのだ。それでは人間らしさを保つことなどできるはずがない。

 ーーダウリーも保護魔法をかけ過ぎた弊害からか、性欲がないらしいーー……。もちろん、そんなことはサシャラにだけは言えるわけもなくーー。

 兄もそこには気づかなければいいのだがーー……。


「エアロ、外に出なよ。保護魔法を解除しないと……」
 マキラが外を指差す。
「でも、どうやって?」
「ジーヴァ様の正伴侶メイリェ様が言ってた。高温のお湯に長時間浸かると、保護魔法の効力がだんだん無効化されてくるって」
「なんで~?」
「ええと…。代謝をあげて、保護膜を無理やりはがす、みたいなことを言ってたんだ。温泉がいいそうだよ」

 うろ覚えで悪いけどーー、と言うマキナを見て俺は思った。ダウリーは風呂を嫌う。のんびり浸かっている間に襲撃されることもあるからだ。

 ーーいいことを聞いた。今度、温泉に誘ってやろう。エウローペーの地獄温泉にな……。






ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 いつも最後まで読んでいただき、ありがとうございます☺️

 そうですね……、ナディアじいさんがラース家を大きく領地を平和にしたことは事実なんですよーー。現実問題、王侯貴族が恋愛結婚するなんて、稀なことですもんねーー……。


 明日の更新はいよいよ、アディとキサラの感動の再会ーー、になると思います!どうぞ、ご期待ください🙏
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