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番外編 出産までの長い道
第10話 ウズラ・ミミクリー
「ーー失礼致します。王太子弟殿下にご挨拶申しあげます」
俺はそのひとが現れたとき、さっきの荷物を運んでいた男性との会話を思い出した。
「ウズラ・ミミクリーと申します。私の施設内でこのようなことが起こり、誠に申し訳ない次第でございますーー」
丁寧に頭を下げられた。ーー真緑色の髪色をした頭をだ……。
じゃあこのひとが、色を変える魔法を使えるひとなんだろうな。
「いや、謝るのはこちらだ。当施設内でこのような騒ぎを起こしてしまい、申し訳ない」
本当に営業妨害だよ。
「……そんな、王太子弟殿下、とんでもないことにございますーー。どうかそのようなことはお気になさらずーー」
ウズラの心がこもるような言葉に安心したいところなんだけど……、俺の感知に引っかかるっていいのか、なんだか変に感じるところがあった。
親切な物言いをされているんだけど、……なんだろ?視線が厳しい?ーーまあ、それも当然だよな……、こんな事件が起きちゃって本音は困ってるはずだ。俺相手じゃ文句のひとつも言えないなんて、このひとも被害者だよ……。
「協力できることは何でも致しますので、何なりと申し付けてください」
「礼を言う。だが、色を変えることはいまは必要ないのでーー」
「え?ーーなぜ私の魔法をご存じなのです?」
驚いたウズラが警戒するような目で俺を見た。そうだ、これは本人から聞いたわけじゃないのに話しちゃって、マナー違反だったよな。
「あっ……、申し訳ない……。さきほど荷を運んでいた者が話してくれたのだ」
「ーーああ、そうですか……。おしゃべりな職員で申し訳ございません。お耳汚しでございましたね」
「面白い魔法だな」
「ほほ、王太子弟殿下には到底叶わない魔法ですよ……。あーー、職員から聞いたのですかーー……」
「?」
ーーなんだ、このひと?やっぱりさっきから変だな……。ツンツンしてるって言うのか……。
「そういえば、髪の色が黒ならよかった、とは?」
ついでに気になったことを聞いてしまおう。俺の質問にウズラが眉をひそめた。
「ーーそんなことまで言いましたか……。無礼な職員で申し訳ございません。ーー深い意味はありませんよ」
「そうか……。我が王家に興味が?」
「ーーそんな恐れ多いことをーー……。ですが、王太子弟殿下ーー、御本人様には興味がございます……」
きらりと吊り気味の目を光らせて、ウズラが俺を見た。
「え?」
「ーー以前、私は殿下の夫君といろいろありましたから……」
「!」
俺の手からコップが落ちた。
パリーンッ、と床でコップが割れてしまい、慌てて俺はそれを拾おうとした。
「殿下!」
気づかわしげにマルスが俺の手をつかんで、動きをとめてくる。
「割れております、お手をだしてはなりませんーー」
「あ、ああ…、」
ーーうん?じいや……、こいつはいま何て言いました?
「いえいえ、そのようにご心配される仲では、ーーありませんよ」
俺の顔色を見て、優位に立ったような顔でウズラが言った。言葉だけ丁寧なのに、他はやる気満々なのが気に障るよ。
ーーそんな挑むみたいな目で見てくるのに、心配いらないだとーー?
頬の引きつりを根性でとめながら俺は尋ねる。
「仕事仲間のほうか?」
「ーーまあ、それもありますが……」
潜入捜査員のなかには普段は普通の仕事をしているひともいる、ってキサラは言ってた。非常勤みたいな立場のひとだってーー。もしかして、そういう感じなのかな……。
いや、ーーこのひとはへブリーズのひとじゃないはず……。うちの国でそういう組織があるなんて、俺は聞いたことないんだけどーー。
「……ああ、ーーミミクリー家は元はへブリーズ大公領で、小さい店をやっていました。ですが、あちらは商売に対する法律が厳しいので、こちらにうつることにしたのです……」
俺ってそんなに思ったことが顔にでるのか?嫌だな……、王族はポーカーフェイスがテンプレなのに。
「そうなのか…」
はいはい、うちはチョロいって言いたいのかね?そりゃ、へブリーズより一等地の税は安いと思うよ。あそこは、ちょっとやり過ぎだって兄貴が言ってたくらいだしさ。
「ギルドに加盟していない商会は、そこで商売ができない……。それが上手いこと折り合いがつきませんでした……。仲良しこよしもいいんですがーー」
「……なるほど」
現代国家と同じようにはいかないけど、商人達には商人法があって、主に横のつながりを大事にする法律だ。
例えば、いまウズラが言ってるのは『営業権の確保』、同職ギルドに加入してないと、そこで商売ができないやつね。後は、商品の品質を維持し、不当な競争を防ぐために価格や生産量を商人同士で協定している『品質管理と価格協定』、が有名どころかな。
ーーダウリーならもっと縛りを強くするか……、だから暗殺未遂が多いんじゃないか?サシャラさんも大変な伴侶をおもちだよな…。
「エウローペーに移ったことで商売も上手くいっており、一族で喜んでおります……。ふふっ、義父からは、後は伴侶だけだな、と言われておりますが。……私も殿下のような伴侶がいるなら喜んで結婚しますよーー」
「それは、まあ、……」
無理だろうな。ーーそこはちゃんと言っておく。あんなSSSRがその辺に転がってるわけないだろ?
「ええーー、私、側夫でもいいと思っております」
「!」
「ラース閣下さえよければですが……。そのときは、殿下も私のことをお認めくださいますか?」
「ミミクリー殿!いまの発言はあまりにも不躾すぎます!殿下の心身に何かあれば、あなたは責任がとれるのですか!?」
俺の前に立って、マルスがきっぱりと言った。その後ろ姿から、俺を絶対的に守ろうとする気持ちが伝わってきて、目がうるんでくるよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつも最後まで読んでくださりありがとうございます😊はじめて読んでくださった方、お目をとめていただき、本当にありがとうございます🙇
感謝、感謝です。
最初、10話ぐらいかな~、っと思ってましたが、もう少し続きます。また、あれやこれや詰め込む悪い癖がでております🥹
すみません😅しばらく付き合ってくださるとうれしいで~す。
俺はそのひとが現れたとき、さっきの荷物を運んでいた男性との会話を思い出した。
「ウズラ・ミミクリーと申します。私の施設内でこのようなことが起こり、誠に申し訳ない次第でございますーー」
丁寧に頭を下げられた。ーー真緑色の髪色をした頭をだ……。
じゃあこのひとが、色を変える魔法を使えるひとなんだろうな。
「いや、謝るのはこちらだ。当施設内でこのような騒ぎを起こしてしまい、申し訳ない」
本当に営業妨害だよ。
「……そんな、王太子弟殿下、とんでもないことにございますーー。どうかそのようなことはお気になさらずーー」
ウズラの心がこもるような言葉に安心したいところなんだけど……、俺の感知に引っかかるっていいのか、なんだか変に感じるところがあった。
親切な物言いをされているんだけど、……なんだろ?視線が厳しい?ーーまあ、それも当然だよな……、こんな事件が起きちゃって本音は困ってるはずだ。俺相手じゃ文句のひとつも言えないなんて、このひとも被害者だよ……。
「協力できることは何でも致しますので、何なりと申し付けてください」
「礼を言う。だが、色を変えることはいまは必要ないのでーー」
「え?ーーなぜ私の魔法をご存じなのです?」
驚いたウズラが警戒するような目で俺を見た。そうだ、これは本人から聞いたわけじゃないのに話しちゃって、マナー違反だったよな。
「あっ……、申し訳ない……。さきほど荷を運んでいた者が話してくれたのだ」
「ーーああ、そうですか……。おしゃべりな職員で申し訳ございません。お耳汚しでございましたね」
「面白い魔法だな」
「ほほ、王太子弟殿下には到底叶わない魔法ですよ……。あーー、職員から聞いたのですかーー……」
「?」
ーーなんだ、このひと?やっぱりさっきから変だな……。ツンツンしてるって言うのか……。
「そういえば、髪の色が黒ならよかった、とは?」
ついでに気になったことを聞いてしまおう。俺の質問にウズラが眉をひそめた。
「ーーそんなことまで言いましたか……。無礼な職員で申し訳ございません。ーー深い意味はありませんよ」
「そうか……。我が王家に興味が?」
「ーーそんな恐れ多いことをーー……。ですが、王太子弟殿下ーー、御本人様には興味がございます……」
きらりと吊り気味の目を光らせて、ウズラが俺を見た。
「え?」
「ーー以前、私は殿下の夫君といろいろありましたから……」
「!」
俺の手からコップが落ちた。
パリーンッ、と床でコップが割れてしまい、慌てて俺はそれを拾おうとした。
「殿下!」
気づかわしげにマルスが俺の手をつかんで、動きをとめてくる。
「割れております、お手をだしてはなりませんーー」
「あ、ああ…、」
ーーうん?じいや……、こいつはいま何て言いました?
「いえいえ、そのようにご心配される仲では、ーーありませんよ」
俺の顔色を見て、優位に立ったような顔でウズラが言った。言葉だけ丁寧なのに、他はやる気満々なのが気に障るよ。
ーーそんな挑むみたいな目で見てくるのに、心配いらないだとーー?
頬の引きつりを根性でとめながら俺は尋ねる。
「仕事仲間のほうか?」
「ーーまあ、それもありますが……」
潜入捜査員のなかには普段は普通の仕事をしているひともいる、ってキサラは言ってた。非常勤みたいな立場のひとだってーー。もしかして、そういう感じなのかな……。
いや、ーーこのひとはへブリーズのひとじゃないはず……。うちの国でそういう組織があるなんて、俺は聞いたことないんだけどーー。
「……ああ、ーーミミクリー家は元はへブリーズ大公領で、小さい店をやっていました。ですが、あちらは商売に対する法律が厳しいので、こちらにうつることにしたのです……」
俺ってそんなに思ったことが顔にでるのか?嫌だな……、王族はポーカーフェイスがテンプレなのに。
「そうなのか…」
はいはい、うちはチョロいって言いたいのかね?そりゃ、へブリーズより一等地の税は安いと思うよ。あそこは、ちょっとやり過ぎだって兄貴が言ってたくらいだしさ。
「ギルドに加盟していない商会は、そこで商売ができない……。それが上手いこと折り合いがつきませんでした……。仲良しこよしもいいんですがーー」
「……なるほど」
現代国家と同じようにはいかないけど、商人達には商人法があって、主に横のつながりを大事にする法律だ。
例えば、いまウズラが言ってるのは『営業権の確保』、同職ギルドに加入してないと、そこで商売ができないやつね。後は、商品の品質を維持し、不当な競争を防ぐために価格や生産量を商人同士で協定している『品質管理と価格協定』、が有名どころかな。
ーーダウリーならもっと縛りを強くするか……、だから暗殺未遂が多いんじゃないか?サシャラさんも大変な伴侶をおもちだよな…。
「エウローペーに移ったことで商売も上手くいっており、一族で喜んでおります……。ふふっ、義父からは、後は伴侶だけだな、と言われておりますが。……私も殿下のような伴侶がいるなら喜んで結婚しますよーー」
「それは、まあ、……」
無理だろうな。ーーそこはちゃんと言っておく。あんなSSSRがその辺に転がってるわけないだろ?
「ええーー、私、側夫でもいいと思っております」
「!」
「ラース閣下さえよければですが……。そのときは、殿下も私のことをお認めくださいますか?」
「ミミクリー殿!いまの発言はあまりにも不躾すぎます!殿下の心身に何かあれば、あなたは責任がとれるのですか!?」
俺の前に立って、マルスがきっぱりと言った。その後ろ姿から、俺を絶対的に守ろうとする気持ちが伝わってきて、目がうるんでくるよ。
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いつも最後まで読んでくださりありがとうございます😊はじめて読んでくださった方、お目をとめていただき、本当にありがとうございます🙇
感謝、感謝です。
最初、10話ぐらいかな~、っと思ってましたが、もう少し続きます。また、あれやこれや詰め込む悪い癖がでております🥹
すみません😅しばらく付き合ってくださるとうれしいで~す。
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