(完結)主人公の当て馬幼なじみの俺は、出番がなくなったので自分の領地でのんびりしたいと思います。

濃子

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番外編 出産までの長い道 

第11話 マキラは心配する

 ーーなんて忠義者だ、さすがは俺の自慢のじいや……。エリンに盛られた薬の後遺症もなく、元気そのものーーいや、俺の子供を面倒みるからって前よりいきいきとしてるぜーー。

 「ーーこれは失礼。ずいぶんと繊細な伴侶様ですね……」
 ほほっ、と笑いながらウズラが俺の前から離れて行く。ーーありがとう、マルス。おかげで冷静になったよ。

 ーーそうだよ、いまはこんなヤツにかまってる場合じゃないのに、俺はダメだな……。

「ノア、アイゼは……?」
「ーー申し訳ございません……。いまだ、見つかっておりません……」
 隊員達の顔も沈んでいく一方だ。

 ーーアイゼ……、おまえ、どこに行っちゃったんだ?怖い目に合ってないか?……、ホントに攫われたわけじゃないよな?ーー俺のせいで、あんな怖い目に合わせてしまったら、どうしよう……。

 脳裏には、はっきりとあのときの記憶が残っている。

 大勢の前に商品として引っ張り出されたあの記憶……。あれを体験した俺だって、怖すぎて2度はごめんだよーー、あんな非現実的な世界、いくらアイゼだって、耐えられるかわからない……。



「ーー殿下、どうしたの?」
「え?」
 顔をあげるとそこにはマキラがいて、俺に毛皮のコートを差し出してきた。
「そんな薄い格好してたら、風邪引くよ」
 身体を温かい毛皮でまかれ、俺は目を瞬かせる。
「あっ、ありがとう……」
 アートレと何か約束しているのかな……、っていうかあいつどこにいるんだ?この騒ぎにどうして何も言ってこない?

「ーーアートレと?」
「え?ーーああ、違うよ。この前の家具屋でインテリアを見てたんだけど、兵士が煩わしいから出てきたの。ーーここには、たまたま寄っただけーー……」
 そうなんだ。相変わらずあいつの一方通行っぽいな。

「マキラさん……」
「何、どうしたの?」
「アイゼが……、アイゼがいなくてーー……」
 俯く俺に、マキラが大きなため息をついた。
「はあーー、あの夫夫。身重の殿下に子守りさせてるの?ーーこれ、キサラは知ってる?」
「………」
「いえ、今日はたまたまアイゼ坊っちゃまと出かけることになりましてーー」 
 黙っている俺に代わり、マルスが話を続けてくれる。ーーそう、たまたまなんだよ……、たまたま絵画教室に来たのに、誘拐なんかされるか……?ああいうのって、行き当たりばったりなんかじゃ上手くいかないだろ…?

「ーーひと買いって、あちこちにいるもんなの?」
「そんなわけないでしょ?向こうも王都は避けるよ……、王都近くで活動できる闇ギルドなんて、高官とつながってなきゃ無理だね」
「うちの貴族が、人買いとつながってるのか!?」
「落ち着いて、殿下。ーーエウローペー王都近郊じゃ、いまいる闇ギルドなんかおとなしい奴等ばかりだよ」
 マキラの話にマルスが眉をひそめた。いるにはいるんだ……。 

「ーーそれに、アイゼなんかに手を出せば、後が怖い…。誰も大公の鷹なんかに喧嘩は売らないってーー」
「報復とか……」
 エドアルドはいままでかなりの数の闇組織を潰してきたらしく、裏社会からは超恐れられてるけど、恨みも買ってるはずだ。父親のことはどうにもできないから、息子にーー、って考えるやつだっていないとも限らない。

「考えられないこともないけど、この辺は平和なものだしね……。エウローペーの闇ギルドでいま一番ヤバいのは、エストレーヤ領にいる『ランゲー』かな」
「詳しいな」
「半年ぐらい前、ボスが捕まったそうだよ。ーーあくまで飲み屋の情報だから正確さには欠ける話だけど……」

 ーーちょっとカッコいい……。俺も将来的にエトルカーナ領で、暴れ◯坊将軍みたいなことやろうかな……。






 ーー普段はボール蹴ってるだけのクロノ君。しかし、その正体は、泣く子も黙る大公アディオン!ーーみたいなやつ。
「エトルカーナで悪さをするとは運のつきーー、その方ら、この顔見忘れたか?」
「はは~~、大公殿下ぁ~~~!」





 ………そこは、上様がいいよな……。



「ーーじゃあ、アイゼはどこに……」
 あーー、俺の頭の中がぐちゃぐちゃだ。ちゃんと整理して、冷静にならなきゃ……。アイゼのことだから、つかまっても相手に蹴り入れてそうだから、犯人を怒らせてないか、それが心配だけど……。


「ーー殿下、……キサラに会ってきなよ」
「え?」
「甘えたいときは甘えに行かなきゃ」
 真剣に俺の心を案じる目をされて、俺はちょっと安堵した。俺ってば、旦那様の兄弟からも愛されてんじゃんね。

「……ーー何言ってんだよ、マキラさん。キサラは仕事で大変なとこにいるんだからーー」
 よし、ーーがんばれよ、俺。迷惑なんかかけるな、キサラの潜入場所は命がけのとこが多いんだし……。

「あーー、……何かあったら、『俺を頼らせろ』、って言われてるの」
「え?」
「遠慮するだろうから、させるなって。ボクがこの辺りにいるのも、『念のためいてくれ』、って言われたからだよ」
 照れくさそうな顔を横に向け、マキラが髪をさわった。この照れ屋な感じは、キサラと一番似てるな。サキナさんとタキナは、ーーなんかノリが違うし…。

「……」
「正直、ボクなんか魔法も使えないから役立たずだけどね」
「マキラさん……」

 ーーいやいや、ありがとう。……キサラってば、そんなことを弟さんに頼んでくれてたんだ……。


「マキラさん……。俺、キサラに会いに行ってもいいの?」
「あたりまえでしょ?ーー何を遠慮してるの。会えば落ち着くでしょ?」
「ーーうん。逢いたい……、抱きつきたいーー」
「それでいいんだよ……。新婚さんなんだから、当然の権利だ……」

 ーーキサラ……、いまどこにいる?ーーあ……、マーキング魔法陣が西南にある………。これは、エストレーヤ領?エウローペーにいるのか?


『ーーエウローペー王都』
 キサラからの返事は早かった。びっくりするぐらい早くて、逆に大丈夫なのか心配になったよ。ホントに仕事の邪魔にならないかな?俺、うざくないかな……?


 ーーいいじゃん……。キサラがいいって言ってんだし、いま行っても大丈夫なんだろ?


 俺の顔が自然にあがる。
「じいや、ちょっと行ってくる!」
 栄養補給してくるからな。
「はい、お気をつけてーー」
「うん!ーーーーんっ!」
「どうされました!?」
 俺が眉を寄せたからマルスは大慌てだーー、けど、……心配はいらないぜ。

「はははっ……、大丈夫だよーー………」


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