17 / 194
当て馬王子 アディオン 編
第16話 与一、ルーカスを見守る(エドアルドのセクハラあり)。
しおりを挟むいつも読んでいただき、本当にありがとうございます✨
応援ありがとうございます😊
では、続きをどうぞ♥
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ひとを見ないなーー」
村に入ったのに、ひとの姿がない。
「魔ドラゴンが近くにいるのなら、避難するしかないのだろう」
エドアルドが剣を構えた。
なんでもない仕草だ、他のひとならばーー。なぜ、このひとだとこうも違うのかーー。むしろ顔は優しいのに、空気がひとじゃない。御者のおじさんがこわごわとこちらを振り返るが、気持ちはわかる。
「ふふっ、明るいうちは襲ってはこないかーー」
「敵が?」
ルーカスが顔色を変えた。
「無人の村を根城にしている盗賊だろう。ーー気配は20人ほど、たいした奴はいないな」
嘘だろーー、と俺とルーカスは顔を見合わせた。
「ーーなぜ、大師匠はそんなに強いんですか?」
うん、ほんとそう。なんでなの?実は中身が100年以上修行した仙人とかなの?
「さあ?剣しか取り柄がない男に、その質問は愚問でしかない」
言うが早いか、エドアルドがルーカスの顔の前に剣を向けた。
「え!?」
剣に矢が当たる。
パキッ、と割れた矢の破片を、エドアルドが俺にあたらないように剣ではらった。
男前だよなーー。
ちょっと、紳士すぎて照れるよ。
「……」
「ご挨拶かーー」
いやー、こいつ連れてきてよかったーー。俺とルーカスだけじゃ、即死ぬルートだったな~~~。
連なった古い家の影を、エドアルドは注意深く見ている。
「来るぞ。ルーカス、アディの身はーー」
「大師匠!おれが行きます!」
ルーカスが荷台から飛び降りると同時に、茶色のマントをはおった男達が家の裏からでてきた。
「ほぅ……。惜しい男を亡くした」
「まだ、何もないだろうーー」
予言じゃないよな?何をルーカスはムキになってんだよ。エドアルドにまかせときゃいいのにーー。
向かってくる盗賊をうまくかわして足で蹴り飛ばし、ルーカスは盗賊に斬りつけていく。
「はっ!」
囲まれても相手の剣を必死にさばきながら、彼は何度も剣を振った。上段からロングソードを振り落とされ、力を込めて受ける。ルーカスもかなり腕が立つほうだろう。
「ーー気合いだけでは勝てん」
いや、そうなんだけどさーー。
「エドアルド、私は自分の身ぐらい自分で守れる」
だから、助太刀に行ってくれ、と言いかけた俺をエドアルドが手でとめる。
「心配ではあろうが、ひとりで20人ぐらい相手にできないようでは、魔ドラゴンは到底斬れるものではない」
「……」
言いたいことはわかる。ルーカスのために必要なことをしているのもーー。
だけど、だけどさ……、
「ーーエドアルド、、、。胸をさわるな」
服の上からとはいえ、ボインもないのに何やってんだよこいつは!
「小さな乳首だ……」
言い方が、ひたすらやらしいな。
「ーーいじられたことがない、清楚な乳首……」
おまえが今がっつりいじってるけどな。カリカリ乳首を引っかいて何やってんだかーー。だいたい、乳首に清楚もビッチもねえだろ、ルーカスに集中してくれよーー!
泣きそうになりながら、ルーカスの戦闘を見守る。彼は息があがっているものの、確実に敵の数を減らし、勝利に近いところまで来ていた。
「クソッ!」
「ひとりに何を手間取ってる!」
言葉の訛りがひどい、エウローペーのひとじゃないのかな。
そのとき、ルーカスがぬかるみに足をとられ、尻もちをついた。
「死ね!ガキが!」
盗賊の渾身の一刀に、なんとか自身の剣をぶつける。右足で盗賊の脛を蹴り、体勢をくずした敵の剣をはね飛ばし、形勢を逆転した。
「はっ!」
腹筋の力で跳ねるように起き上がり、盗賊を斬っていく。致命傷にならないようにしているみたいだが、あいつ、すごい強いじゃないかーー。
しなやかな豹を思わせるような動きを、俺は食い入るようにして見た。その横で、つまらなさそうにエドアルドがため息をつく。
「ーー時間がかかり過ぎだな……」
おい、褒めてやろうな。人間の大半は褒めて伸ばすんだよ。
ルーカスが最後の敵を地に沈め、ぜーぜーと肩で息を繰り返す。
すっげー、カッコいいじゃん!戦闘後のボロボロの姿だって、絵になるなんてーー。さすがはヒーローだよな!
「ーーよくやった」
俺はもちろん褒めるぞ。
ルーカスが汗を拭きながら笑顔で馬車に近付いてきてーー、
「!」
なぜか、顔を真っ赤にした。
「怪我は?」
深い傷はなさそうだが、なんだろう…、様子が変だ。
「で、あ、アディ……」
ん?何か俺がおかしいのか?
もしかして、エドアルドの奴が俺の上着のボタンを外したからかーー?まったく信じられねえよな。
「エドアルドーー」
「邪魔が入ったか」
いま、そんな状況だったっけ?エロマスターの頭の中はよくわかんねえわ。
エドアルドの手をはらいのけ、俺はボタンをきちんととめる。いつもマルスにやってもらってるから、自分でやるのが新鮮だよ。
「……」
「ルーカス?早く乗れ」
「……あっ!は、はひっ!」
舌を噛みながら、ルーカスが返事をした。
俺は平静でいるようにつとめた。だけど、内心は動揺しまくりだぜ。
ーーなんでルーカスが、俺の胸見て顔を赤くしてんだよーー。
???
ほんとになんでなの?
急いで衣服を整えると、馬車が動き出した。今晩は野宿だろうけど、また盗賊が襲ってくるのかなーー。
1,188
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
【8話完結】魔王討伐より、不機嫌なキミを宥める方が難易度「SSS」なんだが。
キノア9g
BL
世界を救った英雄の帰還先は、不機嫌な伴侶の待つ「絶対零度」の我が家でした。
あらすじ
「……帰りたい。今すぐ、愛する彼のもとへ!」
魔王軍の幹部を討伐し、王都の凱旋パレードで主役を務める聖騎士カイル。
民衆が英雄に熱狂する中、当の本人は生きた心地がしていなかった。
なぜなら、遠征の延長を愛する伴侶・エルヴィンに「事後報告」で済ませてしまったから……。
意を決して帰宅したカイルを迎えたのは、神々しいほどに美しいエルヴィンの、氷のように冷たい微笑。
機嫌を取ろうと必死に奔走するカイルだったが、良かれと思った行動はすべて裏目に出てしまい、家庭内での評価は下がる一方。
「人類最強の男に、家の中まで支配させてあげるもんですか」
毒舌、几帳面、そして誰よりも不器用な愛情。
最強の聖騎士といえど、愛する人の心の機微という名の迷宮には、聖剣一本では太刀打ちできない。
これは、魔王討伐より遥かに困難な「伴侶の機嫌取り」という最高難易度クエストに挑む、一途な騎士の愛と受難の記録。
全8話。
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる