(完結)主人公の当て馬幼なじみの俺は、出番がなくなったので自分の領地でのんびりしたいと思います。

濃子

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当て馬王子 アディオン 編

第27話 与一、それってもしかしてーー。

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 あいつとは?、と聞いても答えてくれなさそうな彼の表情だ。そもそも、お互い自己紹介もしていない。


「名は?」
「ーー俺のか?」
「ああ。私はアディオン。アディオン・クロノ・アンガーティ・エウローペーだ」
「ほんとに王子なんだな」
「そうだ」
 ふふっ、と小馬鹿にするように口元をあげ、かしらが言った。


「ーーキサラだ」
 ぶっきらぼうに言い捨てたイケメンは、自分の名前が気に入っていないような気がした。

 だけど、なんだかその名前はーー、
「サキナ殿の、身内か?」
「名乗るとすぐにバレる」
 嫌そうな目をキサラがした。うん、関係者ってわかりやすいよ。
 
「兄弟か?」
「ああ、すぐ下の弟」
 へぇー、イケメンなのも頷けるな。

「では、エドアルド殿のこともーー」
「ーー話には聞いた。俺はあいつが結婚したときにはーー、って何を話しているんだか…」
 いや、暇なんだから話そうよ。

「いいだろう?」
「なんでだ?」
「減るものでもないのにー」
 聞きたいな。サキナさんの弟なら良いとこの坊っちゃんのはず、それがなんで盗賊してるのとかさ。
 

「ふうん。俺に興味があるのか?」
 まあ、ちょっとはーー、うん……、結構ーー、いや、、、かなり、かな……。

 素直に首を縦に振ると、キサラが軽く目を見開いた。そのきれいな緑色の目で、俺の顔をまじまじと見る。

「ーー変わった奴だな」
「そう、か……」
 グイグイいき過ぎたみたいだ。キサラからの距離を置きたい様子を見て俺は反省する。初対面で、敵っぽいポジションなのに、仲良くはできないよな。


 板の木目でも見ていようかーー。
 下を向くと、犬の顔のような木目を見つけ、飼ってたシロを思い出す。クレしんの真似して、シロってつけたんだよな。黒い犬だったのにーー。

「おいーー」
 ん?会話してくれるのーー?
 顔をあげた俺の髪を、キサラがさわった。
「ーーおまえのほうが、きれいだ」







 ーーーッ!!?







 そのとき、俺の心臓に刺さったものは何だったのかーー。



 キサラが俺の髪の毛をさわった。

 ただそれだけだーー。


 エドアルドにだって、ルーカスだって、アートレにだってさわられたりしたけど、こんなにドキドキすることはなかった(よく考えると、なんだか俺もビッチだな)。



 それなのにーー……、



「あ……」
 目があったままそらせない。
 胸がドクドクと、浮いて見えるほど脈打つ。

 どうやってよそを向いたらいいんだーー。まとまらない頭の中、彼の手が動いたのを目がキャッチした。

 キサラの手が、俺の耳の横の髪の毛を撫でる。


 ゾクッーー、、、



「ーー、やめろ!」
 大声をだして俺は彼から顔を背けた。首が震えそうになる…、何だよ、いまのはーー。

「悪い……」
 キサラが顔を伏せた。ーーあっ、俺、感じすげぇー悪い……。

「ち、違う。色々あって、髪の毛が砂ぼこりだらけ、でーー」
 何を言い訳してるんだーー。キサラの態度に気を使ってる自分が、信じられない。さらわれて、どっかがおかしくなったんだろうかーー……。



 ーーあっ、なんだ。


 あれだよ。犯人と一緒に閉じ込められると、犯人を好きになるやつ。ストックホルム症候群だ、きっとそうなってんだな。



「色々?」
「ーー誘拐される前、エドアルド殿とルーカスという者とで、魔ドラゴン退治に行っていたのだ」
「魔ドラゴン?エド……アルドが斬ったのか?」

「斬ったのはルーカスだ。エドアルド殿には斬り方を教えていただいた」
「ふうん。自分で斬ったほうが早いだろうにーー、よっぽど魅力的な褒賞だったんだな」

 魅力的かはわからないけど、唯一無二の褒賞だよ。ただし、アートレが先にやらないとエドアルドとルーカスとはないらしい。ーーって、なんじゃそりゃーー。



 ーー俺、アートレのこと好きになれるのかな……。いまは友情以上のものはないけど、そのうち、がんばったら恋人の好きになるのかな…。

 で、あいつとえっちしちゃって、次はエドアルドにルーカス、それが終わったらまたアートレと恋人としてえっちするの?




 ……俺、終わってんな……。頭痛がしてきたぜ。


 けどさ、アートレがアディオンを好きだったことには、アディオンもショックを受けてるような気がしないでもないんだよ……。何でも話せる一番の親友と思ってたし……。


「ーー私は牢屋行きか?」
「いや、着いたら風呂を用意してやる」
 待遇の良い人質だな。
「ありがたい」

 盗賊のお風呂ってどんなんだろう。外にドラム缶を置いて、湯をいれる、みたいな風呂かなーー。正直洗えたらなんでもいいけど。

「おまえ達は賊のわりには臭いがしないな」
 気になっていたことを口にすると、馬鹿にしたような目で見られる。

「ふん、臭けりゃ侵入したらすぐにバレるだろ」
 あっ、そうだよな。ペット飼ってるやつってにおいでわかるもんな。俺も言われたよ。

「城に侵入するときは、前もってその城の兵士が使ってる石鹸で身体を洗うんだ。でないと気づく奴はすぐに異変に気づくからな」

 はー、悪いひと達も考えてんだな……。そうだよな、よその石鹸とか洗剤って、なんかにおいが違うもんな……。兵士のにおいなんか気にしたこともなかったけど、勉強になるよ。

「エドアルドが異変に気づけば計画がパアになるところだったが、奴も父親だったなーー」

 と、丁寧に説明してくれる横で、俺はまったく違うことを考えていた。




 キサラが俺の石鹸で身体を洗うーー……。

 

 ーーーーーだめだ!俺は何を想像してるんだ!俺の、俺の石鹸って、それはいったいなんなんだぁーーー!!


「ん?もしかして、兵舎の石鹸の減りが早かったのはーー」
「俺達だ」
「それはそれは、後で請求しておこう」
「王都の特産品だったか、たしかに泡立ちがよかったな」



 ーー泡立ち……。



 ーー泡に包まれたキサラ……、、、







 ーーだからっ!俺は何を血迷ってるんだよぉーーーー!! 



 心臓の跳ねに振り回されながらも、俺は馬車でどこかに運ばれていく。仮眠のときは座布団みたいなものも敷いてくれたり、とても親切にしてもらいながらーー。

 ーーうん、人質は大切に扱うんだろうな。うんうん、そうだ。そうなんだろう(棒読み)。






「ーーカシラ!もうすぐ着きますぜ!」
 外から声がした。あの片目のおじさんだな。

 よかったーー、これでキサラとふたりっきりとはおさらばだ。




 これ以上は、ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、俺の心臓がもたないぜ。







…………………………………………………………………



 おまけのおはなし♫

『与一と咲夜 1』

アディオン
「サキナさん、こっちに来てどれぐらいっすか?」
サキナ
「9年目に突入よ」

アディオン
「ひゃ~~。マジっすか。そういえば、この城ってやつ、怖くないっすか?」
サキナ
「どこが?」

アディオン
「地震が起きたら一発アウトっすよ!」
サキナ
「あー、ニホン人は地震が怖いわよね。私がこっちにきてから地震が起きたこと一度もないわよ」

アディオン
「ーーマジっすか?うそん」
サキナ
「元々ニホンが地震大国だから、耐震工事とか建築基準法が厳しいのよ」

アディオン
「ーーさすがっすね……」
サキナ
「火山があることから、地殻形勢の条件は同じだと思うんだけどーー、、、」

アディオン
「あっ!マルスのプリンができる頃だ!じゃあ、またっ!!」

サキナ
「は~い。またね」





 …………。

アディオン
「ーー才女って、怖いな……」






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