(完結)主人公の当て馬幼なじみの俺は、出番がなくなったので自分の領地でのんびりしたいと思います。

濃子

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当て馬王子 アディオン 編

第39話 与一、ようやく家に帰る。

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「無事でよかった」
 兄リディアンのホッとした顔を見て、俺は家に帰ってきたことを実感する。家っていうか、城だけどさ。

「心配をおかけしました」
「おまえ、後天性アザ花種だったのだな」
 珍しいものを見るような目で、父レディガンが言った。実際にレアらしいもんね。
「自分でも驚いていますーー」




 城に戻った俺を、まずはマルスが大泣きで迎えた。その後は、父上とリディアンからの質問責めだ。 
「ーーなんだかんだ楽しかったのか?」
 うらやましそうなリディアンの声に、このひとはいずれどこかに逃亡しないかと俺は心配になる。

「良い経験になりました」
「まあ、人身売買など経験せんでも生きていけるがな」
 そりゃそうだ。パピーはわりと深いこと言うよね。

「だが、我が国にも奴隷はいる。辺境伯のなかには王家が奴隷制度を廃止しても、従わぬ者がいる。けして他人事と捉えぬようーー」
「はい、父上ーー、」

「そうですね、この問題はなかなかなくなりませんね……、ところで、アディ」
「はい、兄上ーー」
「ラース大公子息とは、どんな人物なのだ?」
「……」
「はっきり言いなさい。どっちから告ったのだ!?」
 親父、急にはりきりだしたなーー。そんなんまだ言えるかよーー。

「てっきり、アートレが押すと思ったが」
「大穴だったな」
 紙を取り出しふたりでこそこそと話をする。何やってるの?、このふたり。

「ーーひとで遊ばないでください!」
「おやおや、、、」
「アディ、そのように怒るのだな」

「私だって、怒るときは怒ります!」
「ふ~ん。そんなこと言ったら、おまえに来てた見合いの話、断わってあげないぞ」
「父上!」
「どうしようかなーー」
「すべて破棄!」
 必死な俺に、レディガンが高らかに笑った。


「ーーでは、しばらくはゆっくりしなさい。ラース大公陛下には書簡を送るが、隣の大陸だから返事はしばらくこないだろう」
「父上……」

「向こうのトップの家だぞ。マルスがいうには先代の時代にはラース大陸の四分の一も領地があったそうだ」
「四分の一とはーー、負けましたね」
 リディアンがわざとらしく頭を押さえた。いやいや、うちも似たようなものじゃん、絶対に思ってないだろ。

「ーーおまけに、世界一の金の産出領だとーー……」
 その悪い顔はなんだ、お父様。
「アディ、令息に塊3つぐらいもらってきなさいーー」
 ーーチロルチ○コもらうみたい言うな。無茶苦茶だな……。
 
 


「しかし、家柄的には良縁だ。逆にアザ花種となったおまえにここまで合う話もない」
 親父の『よくやった』、という顔が、ちょっと怖いーー。

 けど、それはそうか……。普通はネコ側のほうが、玉の輿に乗るイメージだもんな。


「おまえが子供を産むなら、リディアンにしばらく子がいなくても安心だな」
「ええ、その間、私もテレゼと遊ぶことにします」
 なんでやねん。

「テレゼがこちらの学院に通うことになったから、エスコートしてあげなくては」
「ーー愛しておられますね」
「そうだろう?毎日が楽しくて仕方がないよ。エドアルド殿を呼んでくれたおまえには感謝しかない」

 ーーたしかに、あの家族がこなかったら、俺もキサラと出会えなかったもんな。ありがとうーー、エロマスター。


「ーー父上、セディランは?」
 言いにくそうに俺が言うと、レディガンの男前な顔が曇った。
「自室にて謹慎中だーー」
「そうですか……」
「まったく、男のひとりやふたりで大騒ぎして」
 呆れたようにリディアンが言うんだけど、このひとの頭の中、外交問題は大丈夫なのか?

 だけど、マキラはどういうつもりなんだろうーー。

「ーー……」

 あの性格じゃ、ロンドスタットの箱入り大公子には手に負えないと思うんだけどなーー。

 あっ!



 ーーそうだ、あの約束はどうなるんだろうーーー。


















「ーー失礼する」
 その部屋に入ってすぐに思ったのは、ミルクくさいなー、だった(失礼よ。by サキナ)。

「まあ、殿下!」
 こちらを見て微笑んでくれたひとに、俺は笑い返す。見ると部屋にはサキナ以外のひとはいない(もちろん、ベビーベッドに赤ちゃんはいるけど)、いやいや気が緩みますなぁ~~。

「ご出産おめでとうございます」
「ありがとうございます。今回は予定より一ヶ月も早くて、すぽんっと出ちゃったのーー」
 俺の空気に合わせて話し方を変えてくれる、ほんと器用なひとだよ。

「体調は悪くならなかった?」
「ふふっ、ユドンってひとが帰った後でこっそり教えてくれたわーー。たくましい子だとは思ってたけど……」
 なら、よかった……。

 俺は軽く息をついた。マキラも結局は、サキナさんを嫌いじゃないんだろうなーー。




 ーーしかし、ーー出るって、やっぱり出るんだよな……。

「ーーあら、どこから出るのか気になる?」
 顔に書いていたかーー。
 そりゃ、気になるよーー、と俺は頬を擦った。

「殿下も必要になるのよねーー。そのときになったらわかるわ」
「……」
 え?俺も必要にーー、、、。



「ーー俺、産むほうになったのか……」
 いや、さっき親父からも言われてたけど、全然現実味が無い話としか思わなかったなーー。

「ーー後天性の場合、しばらくは身体が整うまではないと思うけどーー。私達とは異なる部分もあるかもしれないし、一度魔法科学センターを訪ねてみてもいいわね」

 うん、今度行ってみようーー。


 抱かせてもらったリンゼちゃんの可愛さに、自然に顔がデレデレしてくる。
「ーー王太子殿下には何から何までお世話になってーー」
「ははっ、兄もテレゼ殿のご家族なら何より大切にしますよ」
 うん、最高優良物件だよな、あのひと。 

「何だったら住んでくれ、と」
「ああ、いいじゃないですか!」
「ーー旦那様はへブリーズ大公に仕えるためにこちらの大陸に来たから」

「あっ、そうかーー。サキナさんがキサラのお兄さんなら、サキナさんもラース大公の令息なんだ」
「ーーええ……」
 サキナの顔の表情がこわばる。よけいなことを言ったのかな……。



「もとは隣の大陸にいたんですよね?」
「ーーええ。あちらのへブリーズ家が後継者問題でなくなってしまい、祖父がへブリーズ家ごと旦那様を自分の下に抱き込んだの。とても欲しかった人材らしくてーー」
 ふむふむ。お爺さん、見る目はあったんだな。

「でも、旦那様はへブリーズ家に仕えていたかったので、こちらの大陸にへブリーズ家があると聞いて移住してきたのよ」
「そうなんだ。ほんとは向こうが分家なんだけどねーー」
「らしいわね。こちらのへブリーズ大公と従兄弟のサシャラが結婚しているの」
 へぇー。

「マキラさんも王様のところに行ったんでしょ?」
 黄色王だったかーー。
「王様、というか……、夜の世界の帝王、といえばいいのか………。そうだ、サシャラは違う方のところへ行く予定が、現へブリーズ大公と恋に落ちて、こちらに逃げたそうなの」

「はあーー、へブリーズさんも男前だったんだな」
「ふふっ、旦那様が言うことを聞かないので頭を抱えてるわ」
「あー、強すぎだから抑えるのも難しいよな」

 いろいろ問題児っぽいよな、あのひと。


「……なぁ、サキナさんはノエルは嫌じゃないのか?」
「あーー、あのときは本当にごめんなさいーー」
「そんな、謝らないでよ。俺が無神経だったんだし」
「いえいえ、無神経なのは旦那様の方だから」
 それは言えてる。

「ノエルは私と結婚する前からの旦那様の恋人でね、私の方が邪魔者よ」
「そんなーー」
「ーーというより、ノエルとは家族みたいなもので、まったく気にならないの」
「ふうん、そんなもの?俺なら気になるなーー」
 と、俺が言うと、サキナがくすくすと笑った。

「ーーごめんなさいね。私はキサラのことはあまり知らないからーー」
「え?弟なんでしょ?」
 サキナの表情が暗くなり、口を開くのも嫌そうな顔になる。

「ーー祖父は、アザ花種の子以外は、すぐに外にだしたからーー」
 悲しそうに、申し訳なさそうな顔でサキナが俯いた。

「キサラと過ごしたのは寄宿学校に入るまで、サキナの記憶にしかないけれどーー、利発な我慢強い子だったわね……」
「……」
「寄宿学校を卒業して軍に入って、国境砦で旦那様と知り合ったらしいわ」

「あーー、それでエド兄、って言うんだ」
「そうみたい。こちらにへブリーズ領があることを旦那様に教えたのもキサラだったそうよ」
 私、何も聞かされてなくてーー、と考え込むようにサキナが言った。

「盗賊としてあらわれたときは信じられなかったけど、まさか公安みたいな仕事をしてるとはーー」

 そうだ、『あいつはすぐに顔にでる』、って言われてたっけーー。

「旦那様もちょっとは教えてくれてもいいのにーー……」


「ーー子供のことで過敏になっているおまえに、いらぬことを耳にいれたくはない」
 ドアが開いてエドアルドが入ってきた。俺の顔をみて、不敵に笑む。

「また、私の伴侶を口説きにきたのか?」
「お祝いを持ってきた」
 果物の籠を持ち上げると、エドアルドがおかしそうに笑った。籠の底の金貨の袋にはいつ気づくかなーー。

 彼が果物の籠を受け取り、軽く上げ下げする。そして、籠の底に隠した金貨の袋を取り出した。
「ーーこちらはお返しする」

 もう、気づかれたよ。

「お祝いだ。こちらとあちら、二重に生活するにも必要なものだと思うがーー」
 俺の言葉に、エドアルドが笑みを引っ込めた。

「士官せよと?」
「ふたつぐらい軽いものだろう?」

「なるほど、それもありかーー。話は変わるが、アートレは振られたそうだな?」


 ぎくっ。



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