(完結)主人公の当て馬幼なじみの俺は、出番がなくなったので自分の領地でのんびりしたいと思います。

濃子

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当て馬王子 アディオン 編

第41話 与一、イリスの気持ちを知る。

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 自分の私室に戻ろうと、絵画が無数に飾られた廊下を歩く俺の前に、そのふたりはあらわれた。

 ふたりとも俺の顔を見るなり、ひとりは目を吊り上がらせ、もうひとりは気まずそうに視線をはずす。


 ーーう~ん、これはいったいどうしたものか……。イリスと話したいけどひとりのときのほうがいいかーー……、と思った俺は偉そうに歩き続けた。
 
 イリスとルーカスの横を、何事もなかったかのような顔で通っていくんだけど、俺、ニホン人だから、正直ペコペコしないのはつらいのよ。



「アディ」
 美少年の声が尖りまくっている。
「ーーどうした?」
「やってくれたね……」
 おいおい、のっけから戦闘体勢だなーー。ネコが毛を逆立ててるみたいだよ。


 んーー。俺、なんかやった?


「ーールーカスが君のこと、好きなんだそうだよ」
「そうかーー、どうも私はモテるらしいな」
「自分を好きになるように仕向けたんでしょ?」
 俺は恋愛のプロか詐欺師か?あいかわらず無茶苦茶いうやつだ………………、ん?


 ーーなんか諦めにも似たような感情がイリスからくる?ーーああ、これが噂のアザ花種電波か…、なんかもやもやした感情がくるな……。
 
 俺が変な顔をしたからか、イリスが目を丸くした。ほらほら、おまえも俺の感情をわかってくれよ、いまルーカスがはいる隙間、1ミクロもないから。



「ーーアディオン殿下」
 本日もイケメン絶好調なルーカスが、俺の顔を真正面から見た。
「何だ?」
「魔ドラゴン退治のときは、ありがとうございました」
「いや、無事で何よりだ。そういえば、ルーカスのドラゴン痕はどこにでたのだ?」
「見たいですか?」
「まあ、」
 気にはなるよ。あのマーク、カッコいいじゃん。

「アレの横です。今夜、寝室に伺ってもよろしいですか?」
 下半身を抑えてそう言うってことは、そういう意味だよね……。


「……」
「ーーカッコいいから、見せてもらいなよ」
 イリスの苛立った声に俺は首を振った。

「ーーすまない。私はおまえのモノには興味がない」
「殿下ーー……」
 悲痛な表情でルーカスが嘆いた。

 あのなーー、アザ花種になったからって、俺がち○こに食いつくわけないだろ。ビッチじゃねえわ。


「ーーあなたを愛しているから、これ以上の無理は言いません……」
「ルーカス……」
 おまえ、イリスの顔見えてる?般若みたいになってるけど。

「ーーイリスと一緒になるのだろ?」
「ーーええ。奇跡が起きて、あなたとおれが一緒になることもあるかもしれないでしょ?」
「……」
「そのときに、身分の壁に阻まれたくはないんでねーー」
 ふっ、と笑う男に、以前にはない色気が備わっていた。


 ーーなんだか魔ドラゴンを討伐して、男があがったな、こいつ……。いままでのさわやかボンボンが、ダークサイドに片足突っ込んだみたいになってるぞ。

 婚約者の超イケメンぶりに、イリスが深くため息をつく。
「ルーカス、先に行ってて」
「ええ」
 去り際に俺に微笑み、ルーカスが足取りも軽く去る。俺は目をぱちくりしたい気分だ。


「ーーなんだあいつ?」
「ふんっ。アディのバカ」
「私はできることはすべてやった。全部おまえのためだ」
「はいはい、そうですか…。どうもありがとう」
 珍しいーー、こいつが礼を言ったよ。俺がそんな目で見ていたからなのか、イリスは心底嫌そうに口をへの字にした。

「ーーぼくね、アディ」
「なんだ?」
「君がアザ花種かも、って前から気づいてたよ」
「え……?」

「ーー昔、ぼくに感情共有して、ぼくしか知らないことを言ったときがあったものーー。魔法も使えるし、左利きでしょ?アザ花種は左利きが多いんだよ」


『……ひだり…?』

 あっ、キサラはあのとき俺が左手で文字を書くのを見て驚いてたなーー、そういうわけか……。

「ーーだから、ぼく、君の気持ちには応えないことにした」
「ーーなんで?」
 胸がざわざわする。
 アディオンが反応してるんだ。

「ーー知らないの?アザ花種の禁忌じゃない。減り続ける人間をどうにかしたくてアザ花種をつくったんだから、アザ花種同士の婚姻は認められていないでしょ?」

 ああ、そっか……。

 この世界の婚姻でタブーとなるのが、アザ花種同士の結婚。種を絶やさないようにする為にアザ花種ができたんだから、当然といえば当然なんだけどーー。

「結婚した後にわかった場合はいいみたいなんだけどねーー」
「ーーいや、イリス。ーー悪かったな」
「え?」
「あそこまで、ぎりぎりまで、……悩んでくれたんだろ?」
「……」
「もっと早くにふってくれればよかったのにーー」
 俺の言葉にイリスが首を振った。アディオンが好きだった淡い銀髪が、ゆらゆら揺れて虹が見える。

「ーーそりゃそうだよ。ぼく、アディが大好きだもん!ふるのだって、すっごくつらかったんだからね!!」
 とびっきりの笑顔に、胸が少し痛い。おまえは本当にかわいいやつだなーー。

「悪かったーー。私は自分の気持ちを押しつけただけだった……」
「ふふっ」
「ルーカスも、そのうち気の迷いをはらうだろう」
「ああ、いいんだよ。なんか悪に浸ってるのもカッコよくない?」

「ーー悪はいいな」
 俺が噛みしめるように言うと、イリスは吹き出した。
「アディの恋人も悪オーラでてるんだ……」

「ほ~~~~~~~~~~~んきで、カッコいいぞ!紹介しないからな!」
「そんなうれしそうな顔するんだねーー。アルが大泣きするわけだーー」

「……」
 あー、もうアディオンはポーカーフェイスだってわかってるのに、緩んでくるんだよな~、俺のほっぺ。いや、これは、あいつ限定仕様なんだから、よしとしてもらおう。

「かわいそうにーー。あそこまでアディのこと好きなやついないのに」
 イリスの台詞に、今度は俺が盛大に吹き出した。
「ブーメランだな」
「ーーだよね」

 しばらく、ふたりで笑ってしまい、見回りの衛兵は腰を抜かすことになっちゃったよーー。
 

 ーー俺はこれで、当て馬卒業なのかな……。姉貴がやってたゲームから、ずいぶんと遠ざかってる気がするんだけど……、まあ、いっか……。



 ……なぁ、アディオン。



 ……おまえ、ちょっとだけでも救われたかーー?



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