(完結)主人公の当て馬幼なじみの俺は、出番がなくなったので自分の領地でのんびりしたいと思います。

濃子

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当て馬王子 アディオン 編

第43話 与一、油断は禁物だ。

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「少し歩かなければならないのだが、大丈夫か?」
「ひと月たちましたからーー。ですが、長い距離は歩いていませんので、ーーがんばります!」
 と言ったサキナの顔が可愛らしくて、俺は忍び笑いをもらした。

「ーー何です?」
「いやいや、あなたは可愛いひとだとーー」
「まあ、おくちがお上手ですね」
 本当のことなんだけど……。

「今日はエロ、、、マスターは?」
 エドアルドはうちの兵士達からも、『マスター』、とか『大師匠』って呼ばれるようになった。レディガンがへブリーズ大公に相談して、うちからも『マスター』の称号を贈って、城への出入りも自由にしてもらうそうだ。

 あれは、一国一領じゃおさまらない器だよなーー。
 
「へブリーズ大公に呼ばれてあちらに行ってます」
「行ったりきたり大変だね」
「へブリーズの都はエウローペーの国境からは近いんですよ」
「そうか…」
 頭の中で地理を引っ張り出す。たしかに、ふた町越えれば都だな。
「それに、旦那様は馬ではなく、飛竜を飼っていますから」
「ん?」
 聞き慣れない名前がでたな。

「飛行するドラゴンですよ」
「ドラゴンに乗るんですか!?」
 いくらなんでも無理だろーー!!

「草食竜なので気は優しいのです。もちろん乗る人間のほうが強いことが条件になりますがーー」
 うん、つまりマスター限定か……。絶対にあのひとと喧嘩しないようにしないとなーー。











「ーーフロアは同じなのに、町側のバルコニーまでが遠いんですよ」
 城の中ってほんと、なかなか目的の場所に辿り着かないよね。
 毎日どれだけ歩くのかーー、すべての廊下に空港にあるエスカレーター?みたいなの欲しいよな。


 エウローペー城は城あるあるだけど、攻められにくいように後ろは巨大な湖だ。すごい見晴らしいいからデートにはおすすめよ。
 たしか、一般公開日には1階しかはいれないけど、裏手まで見れるんじゃないのかな。

 でっ、その湖の真ん中に王族の教会があるんだけど、外装がすんごい細かい彫刻で、マジきれいで世界遺産系建物なんだよ。いつかリディアンとテレゼもそこで結婚式をするんだろうな……。



 ……………♡。






「ふー、ふー、」
 サキナの息があがっていることに気づいた俺は、廊下の途中だけど立ち止まった。
「ゆっくり行きましょう」
「すみません、体力が落ちてしまってーー」
 室内馬車みたいなのがあればなーー、キックボード?セグウェイ?

 おじいちゃんの移動するやつ!シニアカー!!って、あんなのこの世界観には合わないな。
 と、しょうもないことを考えていた俺の耳にその声が入った。


「ーーサキナ」
 後ろを見ると、白い騎士服もキマリにキマったエドアルドが歩いてきている。

「ーー旦那様、どうされました?」
「用事がすぐに終わったので戻ってきた。婚約のこと、レインが鷹を飛ばしてくれてなーー」
 言うなりエドアルドがサキナを抱きあげた。ほんと、ひょい、って軽がるよ。

「ーー助かります」
「おまえはできないことはできないと言えないのか?」
 ひとを抱えてるなんて思えないぐらい、すたすたと歩いていくイケメン剣士には、ほんとドン引きだよ。

「だって……」
「いや、本当にこちらが申し訳ない」
 慌てて会話のなかに割り込む。そんな俺に不敵な笑みを見せ、エドアルドが言った。


「ーーあれの手綱を引くとは、思い切ったことを」
「……良い方だと思うがーー」
「どうなろうとも、愛しぬく覚悟はあるのか?」
 挑むような視線に怯みながら、心を奮い立たせる。世界よ~、オラに勇気をわけてけろ~~~。


「無論ーー。冥府の国まで付き合う覚悟だーー」
 いらんて言われたら、俺ストーカーになる自信があるよ。

 答えに、満足そうな顔をエドアルドがした。
「ふふっ、よい目だ。ーーひとつ教えておこう、あれがなぜ今の仕事を選んだか」
 エドアルドの言葉に、サキナが目を伏せた。

「理由が?」
「ああ、サキナにはサシャラ殿以外にも従兄弟のリーダとエルダがいるのだが、いつの間にか姿を消したそうだ」
「ーーまさか、アザ花種?」
 ざわついてくる胸が苦しい。そのふたりも今回のようなトラブルに巻き込まれているのだろうかーー?

「ああ。まったく影も形もないらしい。向こうを探し尽くし、こちらにいるという噂を耳にしたりーー」
「人身売買なのか?」
「ーーわからん。マキラもそれらしい話は聞かないと言っていた。そのため、今の仕事をしながら消えた従兄弟をさがしているーー」


「ーーよほど、大切な方なのだな……」
「さあ?」
「え?」
「大切ではなくとも、真剣にやる。あれはそういう人間だーー」

 ……。

 何だろう、胸がドキドキするよ。


 ーー俺は少し下を見ながら廊下を歩いた。……でなきゃ自分の真っ赤な顔を、みんなに見られちゃうからさーー。














「やっときたなーー。ほら、婚約誓約書だぞ、うれしいかーー」
 尊い紙をペラペラふって罰当たりなーー。

 王都を一望するバルコニーに、レディガンはいた。その前には美しい黒檀の台があって、そこに紙を置いて記入するみたいだ。

 俺は親父を睨みながら紙を受け取った。ちらっとレディガンの後ろに目をやると、控えている近衛兵のなかにアートレの姿はない。

 ーー当分は無理だろうな…、いや元のような関係なんてムシがよすぎる……。


『 婚約誓約書
 この両名の婚姻を国神エウロペラに代わり、大司祭アルカヌムをはじめ、神官庁が認める。


 夫
 伴侶           』 


 ほんとはもっと難しい言葉で書いてるのよ。まあ、読みにくい文面なんだよね、これ。
 
 ーーふふ~ん。いま、まわりにひとがいなかったら、大音量でウルトラソ○ルを歌ってるだろうな。ああー、誰かこの感動を分かち合うひとはいないのかーーーーっ!!



「ーーサキナ殿、よろしいか」
「は、はい!」
 サキナさんから書くのかーー。

 それはそうだな、向こうが旦那様なんだから。うん、旦那様なんだよなーー。旦那様ーー。俺の旦那様かーーー。

 目頭を押さえた俺の隣りで、サキナがペンを受け取った。
「あっ、練習してもよろしいですか?」
 左手にペンを持ちながら、自信なさげに眉を寄せる。それもそうだよな、ほんとすみません。

 俺はサキナから婚約誓約書を受け取り、リディアンが書類の書き損じを台の上に置いた。
「いくらでもどうぞ」
「ありがとうございますーー」
 丁寧に頭を下げ、サキナが名前の練習をはじめる。その一生懸命な顔に、俺の心も緊張してきたよ。

 ーー紙がつまったらどうしよう。インクがボタって落ちたりとか……、あかん、マイナスに支配される。ここは深呼吸だーー。

「ーーサキナ、スペルが違うぞ」
「え?どこですか!?」
 覗き込んでいたエドアルドから指摘され、サキナが慌てて彼の顔を見た。
「あいつのミドルネームはーー」
 
 そのときだった。
 俺の背後から、人の気配がしたのはーー。

「ーーえ?」
「アディ!」
「アディオン殿下!」
 リディアンとサキナの悲鳴が聞こえる。

 俺は後ろにずるずると引きずられ、バルコニーの手摺前に連れて行かれた。俺をつかまえに来たやつはひとりふたりじゃなかった、ーーなんと、5人もいるんだよ~~~!!


「ーーアディオン殿下」
「よくも、アートレ様をもて遊んでくれましたね!」
「ボク達はあなたを許しません!」
「そう、僕ら!」
「アートレ親衛隊がっ!!」

 なんだよそれーーーーーッ!!

 甲高い声の爽やかな青年達に前後左右からはさまれ、逃げ出すこともできない俺。
「お前たち!やめないかっ!!」
「坊ちゃまをお放しください!」

 リディアンとマルスの説得を無視し、俺を拘束した奴らは、なんと手摺に俺を座らせた。ご丁寧に短剣まで突きつけ、ひとりは俺の足をもってやがる。

 お、落とす気なの?ここ、3階よ、城の3階だからマンションの3階とかと違って、1階の天井までの距離、なかなかえぐいよ。ーー何度もいうよ、城の3階だからね、2階も天井まで、高いんだってーー!

 ーー冗談だろーーーッ!!


「何が婚約誓約書だ。この純な恋心もて遊び王子が!」
 ひとりが紙を奪い、俺の顔の前でひらひらと振ってみせた。な、何するんだよ、ちくしょう!誰が誰の恋心をもて遊んだんだよ!!

「ーーかわいそうなアートレ様……。婚約してすぐによそに乗り替えられるなんて、あなたひととして終わってますよ」
「浮気者」
「ビッチ」
「尻軽」
「ガバガバ」
 言いたい放題言われ、さすがに傷つく。最後のガバガバには異議ありだけどな。

「何をいう。アートレはあいつの一方的な懸想だろう」
 呆れた声でエドアルドが嘆息した。頼む、余裕ぶってないで助けてちょうだいよ。

「その心を、キープしたんですよ、この悪党は!」
 強い口調で責められ、俺は言い訳もできない。そりゃ、俺にはアートレをもて遊んだ覚えもないし、キープしたつもりはない。けど、あいつからしたらそう思う要素があったのかもしれないーー。





ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 いつも最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます😊

 思ってもなかった多くの応援に、ただ涙がでてきます🥹ぽっと出が、上位にくい込んだ「!?」な作品ですね😱



 後、3話になりますが、お付き合いくださいね~~☺️
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