(完結)主人公の当て馬幼なじみの俺は、出番がなくなったので自分の領地でのんびりしたいと思います。

濃子

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魔法とアザ花種 編

第7話 久しぶりに一緒にお風呂に入る?

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 エドアルドが黒い箱をルカルドに渡した。
「ーーよく使いこんでくれちゃって~~~、カワイイひとね~」
「ああ。良い剣だ」
「アナタじゃないわよ。キサラのほうよ~~!」

 ルカルドの態度から、エドアルドは好かれていないんだろうな、と俺は悟る。ただ、話の内容から思い当たることがあり、それがポンッと脳みその中に浮かんできた。
 
「ーーーキサラの剣のーー、」
「聞いてるの~?キサラも婚約者とは会話ができるのね~。アタシは鍛冶屋をやってるの~。まあ、気にいらなきゃ受けないんだけど~」

「ーーハリード殿下の弟君、なのでは?」
「アタシ、身分が低いから~。自由にしていいのよ~~。兄上もだけど、弟もふたりいるからね~」

 へえー、それもいいなーー。職人てカッコいいもんな……。


「ーーいいな…、」
 ポツリと言ってしまい、俺は慌てて下を向く。他領でそんなこと言っちゃだめだよなーー。
「あら?現状にご不満~~?」
「そういうわけではないが、……生きていることを管理されるだろ?」

「ああーー、そうね……。兄上なんか、もろそれだわ~。それが嫌なら死ぬしかないもんね~~」
 俺の言葉に激しく同意し、ルカルドがぶんぶんと首を振る。うん、やっぱり風圧がすごいなーー。


「ルカルド」
「あら、ごめんなさい~。何度言われてもアナタの剣は引き受けないわ~~」
 後ろにいた細身の青年がため息を吐いた。
「従兄弟なのに、冷たいな」
「ーーベリアド、アナタ、イイ噂を聞かないわよ。アザ花種を買っていたんですってーー?」

 ルカルドの言葉に、俺は驚いてその青年の顔を見た。神経質そうな青年は、皮肉げに口元をゆがませて言葉を返す。

「ーー買った、だなんてーー。使用人としてどうかと言われただけだよ」
「そう……。使用人には困ってないくせに」
「ーーちゃんと正規の手続きをしてる」
 手間だけどね、とその青年は迷惑そうに言ってのける。

 俺は思った。


 ーーはい、こいつ敵ーーーッ!!心のバリア発動ぉ~~~!

 これ以上ないぐらい無表情になる俺にエドアルドが苦笑する。挨拶だってしませんよ。
「早く帰ってちょうだい。アタシ、これから忙しいの~」
「ーー!」
 悔しそうな顔で青年はルカルドを睨んだ。でも、何もできないのか、無言で歩き出したんだけど、俺の前に来て足を止める。

「ーーアディオン殿下、ですよね?」
「失礼、イガーティ閣下。殿下には話しかけないでいただきたい」
「おや……。ーー婚約者が側におられないようですし、殿下の御心があればーー」
「わかりませんか?お顔が無理だと仰せになっている」
 
 ーーエドアルドよ。その通りだーー。そちもなかなかわかっておるのぉーー。

 顔の中央にパーツを寄せるように変顔して睨んでやる。そう、ヤンキー風ガン飛ばしだ。中指立ててもいいんだけど、この世界でそれやっても意味ないんだよな。
  
 キメキメにキメた俺の顔を見て、ぷっ、とルカルドが吹きだした。真っ赤な顔になった彼の従兄弟は、ドカドカと去っていく。


「なかなかキモが座った王子様じゃない~~」
「ーー好かない」
 まー、嫌いよ、あんな高慢ちきなやつ。俺の言葉にイリスも共感したのか、ブンブンと首を縦に振る。

「ルカルド、あいつは何だ?」
 嫌そうな目でベリアドの後ろ姿を見ながら、エドアルドが言う。

 ん?従兄弟だろ?何を聞きたいんだーー?

「ベリアドはトナルドスタット公爵よ~」
「ーーほぉ。道理でな……」
「何が~?」
「菓子祭などとのんきなものを開催しているわりには、治安がよくなかった」
「あらーー……」

 嫌そうな言い方に、ルカルドが困った顔になる。俺はそれを聞いてもどのへんが治安が悪かったのかわからないんだけどさ……。こいつがいうなら何か気になるところがあったんだろうな……。

 エドアルドはそのへんはちゃんとしてるもんな。

 そのへんは、なーー……。



 俺はルカルドの顔を見て、聞きたかったことを口にする。
「ーー気になったのだが、アタシ、というのは……?」
 こっちにきてからはじめて聞いたような……。サキナさんはたまに言うけどさーー。

「あら、女性は自分のことをアタシ、っていうのよ~。アタシみたいな心は女性、っていう人間もね~~」
「?」
 
 ーーまさか、ルカルドはアザ花種なんだろうかーー!こんな立派な身体で!ーーって、そりゃ偏見か。見た目が弱っちい=アザ花種と思い過ぎだよな。

「ーーアザ花種じゃなくても、ネコはたくさんいるわよ~」
 ルカルドの俺を見る目が、完全にあきれている。

 それはそうかーー。いや、アイゼもこれぐらい鍛えといたら、成人後もサッカー選手として活躍できるかもしれない。

「ーー殿下は筋肉に興味があるの~?」
 ルカルドが両手をクロスして自分を抱きしめる。いや~ん、ってやつだな。
「あっ、見過ぎた。すまないーー。エドアルド殿やキサラはこんな筋肉でもないのに、力は凄いと思ってーー」

「あらま~。キサラのセクシー筋肉を知っているのね~~!妬けるわ~~!」
「ああ、まあ、そこそこ、がっつりーー」
 何を言ってるんだ俺は。

「アタシは見せ筋だからね~。作り方が違うのよ~」
 たしかに、実用性は無さそうだなーー。
「ルカルド、ワイルド爺様は起きているか?」
「ワイムド爺様ね、どうかしら~。もう、明日のほうがいいわよ~~」
 
「なら、泊まる部屋を用意してくれ」
「はいはい~~~。テリッサ~~!!」
 ルカルドの大声に、遠くにいた青年がすごいスピードで走ってくる。

「はあい!殿下!お呼びですかーー!」
「この3人、貴賓室宿泊で~。アザ花種の方がいるから警備が一番厳重なとこね」

 厳重と指示をするのを聞いて、俺もだけどイリスも安心するような顔になった。俺達って、高額売買の商品になっちゃうからねーー。他所の領地じゃ警戒は強めなきゃ。


 ーーこのひと、見た目よりものすごくマトモなひとだな……。いや、マトモとは、何をもってマトモなのかーー、うちの連中が異常なだけか……。


「はいっ!」
「超おもてなしでね~。でも、父上には見つからないようにぃ~~~」
「わかりました!」
 元気な青年が胸を叩いて、また走って行く。


「ラジード陛下に見つかるとまずいのか?」
「ーー前にセディちゃんがだめなら、アナタって言ってたこともあったからね~。用心のためよ~」
「………」
 ルカルドが、しょうがない父親でしょ~、と言うのを聞きながら、俺は思う。



 ーー大公はあの薬、ちゃんと返したんだろうか……。 花が産まれてしまう、恐怖の薬をーー。







「ねえ、アディ。久しぶりに一緒にお風呂に入る?」
「ーー入らない」
 イリスにとんでもない提案をされて、俺の心臓が跳ねあがった。マジびびらすなよーー。

「えーー、アザ花種同士だから、堂々と一緒に入れるんだよーー?」
「気持ち的に無理だ」
 俺はともかく、アディオンが勝手に反応しそうで怖いんだよな……。

「え?まさか、僕を見て興奮するの?」
「ーーそんなわけない」
「あら~、一緒にはいりなさいよ~、広くて気持ちいいわよ~~~。滝もあるんだから~~。ーーあら、ちょっと失礼……」

 突然、ルカルドが何かに気づいたように、庭のほうに走っていった。そのときに、俺の顔をちらりと見て、笑ったような気がするんだけど、気のせいかな?


 
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