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魔法とアザ花種 編
第20話 修行はつらいよ。
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太陽がちょうど真上にあるぐらい、キサラがへブリーズ領から戻ってきた。サシャラとふたりで飛竜に乗ってたんだけど、わかっていることなのに心がざわざわするな。
ーーそうだよ、嫉妬だよーー、従兄弟だからそっちのほうが付き合いが長いのはわかってるのにな……、感情をコントロールできない俺で、ほんとごめんよーー。
「ご多忙の中、ありがとうございます」
俺は線の細い美青年に深々と頭を下げた。
「あー、大丈夫です……。ダウリーも久しぶりにキサラに会えてうれしそうだったしーー」
もじもじしてるんだけど、これがこのひとのテンプレなんだろうな。不思議なひとだよーー。
「ありがとう、キサラ」
抱きついちゃえ。
「いやーー」
たいしたことはない、だろ?
「宮殿に飛竜を降ろさせてもらって、申し訳ない」
飛竜ブルーテイルが、青い巨体を芝生の上に横たえて欠伸をしている。いかついけど、カワイイんだよな。
「いいよ。ラジードにも言っておいたから」
にこにことワイムドがキサラに話しかける。何だか孫とじいちゃんみたい。こことキサラって、そんなに仲がいいのかなーー?
「ーーちょっと準備します…、」
そう言うと、サシャラが地面に杖で円を描きはじめた。ほうほう、魔法陣ってやつね。あーー、なんだろこのひと、ミントみたいなーー、けど甘い匂いだな……。なんか知ってるーー、なんだっけ……。
「ーーアディ~」
呼ぶ声とともに、俺めがけて走ってくるのはイリスだ。あー、気まずいままだったよな……。
「転移魔法の体験するんでしょ?僕もしてみたい」
「お断りだ」
「え!?何か言った!?」
愛らしい青年が小さな肩をいからせて俺を睨む。はいはい、聞きますよ……。
「ワイムド様……」
「いいですよ」
「負担がかかるのでは?」
ひとりよりふたりのほうがしんどいし、さらにひとり増えたらもっとしんどいんじゃーー。
「最初は近い距離の移動からですから、そこまで力を使いません」
「やった~~!僕、何にも使えないから、この機会に覚えられないかな」
「……」
ルンルンのイリスの顔を見ながら、俺は首をひねる。
こいつはこのゲームの主人公なのに、何で魔法あり設定の世界で何にも使えないんだろう……。他のモブキャラのほうが凄い魔法を使えるなんて変じゃないかーー?
あるいは、気づいていないだけで、とんでもない魔法が使えるとか……?
「保護魔法をかけますので、そこに立ってください」
文字を描き終わった魔法陣が、輝き出した。サシャラに手招きされて、俺とイリスが白く輝く魔法陣へと足を踏み出す。
「あっ、踏んでも大丈夫なんですか?」
「ええ、完成していますから」
あっさりいうけど、これも凄い魔法だよな。真ん中に立った俺達を強い光が包んでいく。
「いいですよ」
「ーーでは、すぐそこに転移してみましょうかーー」
ワイムドが言った。その直後ーー、俺の目の前が真っ白になってーー。
「ーーアディ!アディ!」
イリスの声に俺は目を瞬いた。
「……イリス………」
「大丈夫?真っ青だよ……」
あー、たしかにふらついてるーー。身体にとんでもない力がかかったのがわかるよ……。
「イリスさんのほうが、向いていますね」
「うっそーー!やったぁ~~~!!」
クソッ、マジかッ!
「アディ!大丈夫かッ!」
キサラの声に俺はまわりを見渡す。あっ、庭の敷地内で移動しただけかーー。
「50メートル程でしたが、どうですか?」
「気持ちが悪いです」
「少し横になるか?」
心配し過ぎてオカン状態だなーー。ここまで心配されるのってさ……、やっぱりマーキングしちゃってるからなのかな……?
そう思うと、やるせない感満載よーー…。
「僕、全然平気~」
「これは頼もしい」
「……」
何も考える間もなかった。まばたきもできなかった。あれだ、雷が落ちる前のピカってやつだよ。こんな状態で、自分を分解して再構築するなんて、ーー無理難題じゃね?
「ーーワイムド様、自分を分解するのと転移するのでは、分解のほうが先ですか?」
「おや、もうそれがわかりますかーー。殿下は大天才ですね」
えっ?そうかなーー?マジ、照れんぜ。
「転移場所をまずイメージします」
「はい」
「自分を分解して目的地に飛びます。転移してからだと、すぐに身体がバラバラになり、再構築が間に合いませんーー」
「着地の少し前に再構築かーー」
「それもタイミングがずれると、骨折や大火傷します」
ーー思ったより大変だな……。
「イリス、おまえは先に保護魔法を覚えたほうがいいかもな」
「アディは覚えないの?」
「治癒を覚えているから……。保護魔法と転移魔法となるとーー」
「魔法科学センターがほっとかないよね」
ですよねーー。上級魔法の3点盛りだよーー。
「治癒魔法は保護魔法には応用できないの?」
「ーー無理だと思う」
「何で?万能そうだけど……」
イリスの問いに、俺はキサラを見た。ほら、カッコよく説明してくれ。
「ーー治癒魔法は身体に不具合がない場合、かけても毒になるだけだ」
「?」
そうそう、それ。魔法の先生も言ってましたよ。
「やり過ぎると細胞の老化を早め、身体の内部を傷めたり、最悪は寿命が減る」
大きなイリスの目がさらに大きくなった。
「ーー怖いんだね……。でも、アディ、生命エネルギーをルー……、死にかけのひとにわけれるんでしょ?あれは、寿命をわけてるの?」
「それは違う。疲れとかって寝たり食べたりしたら回復するだろ?」
「うん」
「そこのエネルギーを補助してるだけだ。イリスが言ってる魔法は寿命の譲渡、かなーー?あれは、誰か知り合いで聞いたような気がするんだけど……」
誰だったかな……。怖すぎだよなーー……。
「へぇー。世の中にはすごいアザ花種がいるんだね……」
そうなんだよな。セディランの視覚を奪う魔法だって、すごすぎない?広範囲に使えるなら、戦ができないよな。
「ワイムド様、もう一度いいですか?」
「いいよ。今度は距離を倍にしてみるかい?」
「はい」
「アディ、大丈夫なのか?」
ありがとう、キサラーー。でも、俺さーー。
ーーこういう無理なミッション、燃えてきちゃうんだよなーー。
その後も何度も転移魔法を使ってもらい、距離もどんどん伸ばしていってもらった。
気持ち悪いのは変わらなかったんだけど、一瞬で移動していたのが、何となく間があることに気づいて、ここで身体を再構築するっていうタイミングがわかったんだよ。
ワイムドに、100年にひとりの大天才って言われたんだぜ。ーーけど、イリスのほうが適性はあるんだって、あいつ、全然酔わなかったからな……。
ーーそうだよ、嫉妬だよーー、従兄弟だからそっちのほうが付き合いが長いのはわかってるのにな……、感情をコントロールできない俺で、ほんとごめんよーー。
「ご多忙の中、ありがとうございます」
俺は線の細い美青年に深々と頭を下げた。
「あー、大丈夫です……。ダウリーも久しぶりにキサラに会えてうれしそうだったしーー」
もじもじしてるんだけど、これがこのひとのテンプレなんだろうな。不思議なひとだよーー。
「ありがとう、キサラ」
抱きついちゃえ。
「いやーー」
たいしたことはない、だろ?
「宮殿に飛竜を降ろさせてもらって、申し訳ない」
飛竜ブルーテイルが、青い巨体を芝生の上に横たえて欠伸をしている。いかついけど、カワイイんだよな。
「いいよ。ラジードにも言っておいたから」
にこにことワイムドがキサラに話しかける。何だか孫とじいちゃんみたい。こことキサラって、そんなに仲がいいのかなーー?
「ーーちょっと準備します…、」
そう言うと、サシャラが地面に杖で円を描きはじめた。ほうほう、魔法陣ってやつね。あーー、なんだろこのひと、ミントみたいなーー、けど甘い匂いだな……。なんか知ってるーー、なんだっけ……。
「ーーアディ~」
呼ぶ声とともに、俺めがけて走ってくるのはイリスだ。あー、気まずいままだったよな……。
「転移魔法の体験するんでしょ?僕もしてみたい」
「お断りだ」
「え!?何か言った!?」
愛らしい青年が小さな肩をいからせて俺を睨む。はいはい、聞きますよ……。
「ワイムド様……」
「いいですよ」
「負担がかかるのでは?」
ひとりよりふたりのほうがしんどいし、さらにひとり増えたらもっとしんどいんじゃーー。
「最初は近い距離の移動からですから、そこまで力を使いません」
「やった~~!僕、何にも使えないから、この機会に覚えられないかな」
「……」
ルンルンのイリスの顔を見ながら、俺は首をひねる。
こいつはこのゲームの主人公なのに、何で魔法あり設定の世界で何にも使えないんだろう……。他のモブキャラのほうが凄い魔法を使えるなんて変じゃないかーー?
あるいは、気づいていないだけで、とんでもない魔法が使えるとか……?
「保護魔法をかけますので、そこに立ってください」
文字を描き終わった魔法陣が、輝き出した。サシャラに手招きされて、俺とイリスが白く輝く魔法陣へと足を踏み出す。
「あっ、踏んでも大丈夫なんですか?」
「ええ、完成していますから」
あっさりいうけど、これも凄い魔法だよな。真ん中に立った俺達を強い光が包んでいく。
「いいですよ」
「ーーでは、すぐそこに転移してみましょうかーー」
ワイムドが言った。その直後ーー、俺の目の前が真っ白になってーー。
「ーーアディ!アディ!」
イリスの声に俺は目を瞬いた。
「……イリス………」
「大丈夫?真っ青だよ……」
あー、たしかにふらついてるーー。身体にとんでもない力がかかったのがわかるよ……。
「イリスさんのほうが、向いていますね」
「うっそーー!やったぁ~~~!!」
クソッ、マジかッ!
「アディ!大丈夫かッ!」
キサラの声に俺はまわりを見渡す。あっ、庭の敷地内で移動しただけかーー。
「50メートル程でしたが、どうですか?」
「気持ちが悪いです」
「少し横になるか?」
心配し過ぎてオカン状態だなーー。ここまで心配されるのってさ……、やっぱりマーキングしちゃってるからなのかな……?
そう思うと、やるせない感満載よーー…。
「僕、全然平気~」
「これは頼もしい」
「……」
何も考える間もなかった。まばたきもできなかった。あれだ、雷が落ちる前のピカってやつだよ。こんな状態で、自分を分解して再構築するなんて、ーー無理難題じゃね?
「ーーワイムド様、自分を分解するのと転移するのでは、分解のほうが先ですか?」
「おや、もうそれがわかりますかーー。殿下は大天才ですね」
えっ?そうかなーー?マジ、照れんぜ。
「転移場所をまずイメージします」
「はい」
「自分を分解して目的地に飛びます。転移してからだと、すぐに身体がバラバラになり、再構築が間に合いませんーー」
「着地の少し前に再構築かーー」
「それもタイミングがずれると、骨折や大火傷します」
ーー思ったより大変だな……。
「イリス、おまえは先に保護魔法を覚えたほうがいいかもな」
「アディは覚えないの?」
「治癒を覚えているから……。保護魔法と転移魔法となるとーー」
「魔法科学センターがほっとかないよね」
ですよねーー。上級魔法の3点盛りだよーー。
「治癒魔法は保護魔法には応用できないの?」
「ーー無理だと思う」
「何で?万能そうだけど……」
イリスの問いに、俺はキサラを見た。ほら、カッコよく説明してくれ。
「ーー治癒魔法は身体に不具合がない場合、かけても毒になるだけだ」
「?」
そうそう、それ。魔法の先生も言ってましたよ。
「やり過ぎると細胞の老化を早め、身体の内部を傷めたり、最悪は寿命が減る」
大きなイリスの目がさらに大きくなった。
「ーー怖いんだね……。でも、アディ、生命エネルギーをルー……、死にかけのひとにわけれるんでしょ?あれは、寿命をわけてるの?」
「それは違う。疲れとかって寝たり食べたりしたら回復するだろ?」
「うん」
「そこのエネルギーを補助してるだけだ。イリスが言ってる魔法は寿命の譲渡、かなーー?あれは、誰か知り合いで聞いたような気がするんだけど……」
誰だったかな……。怖すぎだよなーー……。
「へぇー。世の中にはすごいアザ花種がいるんだね……」
そうなんだよな。セディランの視覚を奪う魔法だって、すごすぎない?広範囲に使えるなら、戦ができないよな。
「ワイムド様、もう一度いいですか?」
「いいよ。今度は距離を倍にしてみるかい?」
「はい」
「アディ、大丈夫なのか?」
ありがとう、キサラーー。でも、俺さーー。
ーーこういう無理なミッション、燃えてきちゃうんだよなーー。
その後も何度も転移魔法を使ってもらい、距離もどんどん伸ばしていってもらった。
気持ち悪いのは変わらなかったんだけど、一瞬で移動していたのが、何となく間があることに気づいて、ここで身体を再構築するっていうタイミングがわかったんだよ。
ワイムドに、100年にひとりの大天才って言われたんだぜ。ーーけど、イリスのほうが適性はあるんだって、あいつ、全然酔わなかったからな……。
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