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魔法とアザ花種 編
第37話 さらなる問題の勃発 (魔法とアザ花種 完)
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翌日、ハリードとルカルドに挨拶をした俺は、ロンドスタット宮殿を後にする。ワイムド爺様は自分の村に帰れることになって、喜んでるみたいだけど、ひとりで見張りとかできるのかねーー?
「やだ~、ワイムド爺様は自分の村で暮らしたいだけよ~。ベリアドはマルメルモ砦の牢屋行き~。そこで刑に服すの。自分の領内だと甘くなるから、へブリーズ預かりなの~」
ルカルドに背中を叩かれそうになり、キサラが庇ってくれた。うん、今日までは痛くないと思うけど、やっぱり風圧が怖いよ。
「ーーキサラ、ホントにラブラブなのね~~、うらやましいわ~」
「ああ、らぶらぶだ」
「ブフッ!」
吹いたのはイリスとサシャラだ。失礼だね、君たち。
「じゃあ、サシャラさん。またね」
「うん。楽しかったーー。ありがとう……」
サシャラはエドアルドが送ってくれることになった。エロマスターは研がれた剣を手にごきげんだ。はじめて見るけど、鼻歌うたってるぜ。
「コランティ卿は、社交的だな」
「ああ、俺とアートレがポンコツだった分、イリスが引っ張ってくれた感じだよ」
「ーーあいつはまだ腑抜けているのか?」
「知らないよーー。あっ、なあ、マキラさんはあいつにマーキングをしたのか?」
「ーーいや、あれは天然だ」
「それは、マジすごいな……」
やはり、次はマキラさんに弟子入りをーー……。
「アディオン殿下ーー」
不穏なことを企む俺に、声がかけられた。
俺の名前を直に呼べる人間は、この領内にはそうはいないーー。本来よそでは、王太子弟殿下って呼ぶのよ。自分から、アディオンでいいです、って言うけどさ。
「ーー大公陛下」
「この度は、甥が誠に申し訳ございませんでしたーー」
ラジードに深々と頭を下げられ、俺は手で彼の行動をとめる。
「ーーいえ、残念なことになりましたね………」
残念どころじゃないな。人でなしの甥御さんをもって大変ですな……、とか?まあ、伯父さんが悪いわけじゃないもんなーー……。やっぱり本人だよ。
「あのーー、少しよろしいですか……」
「はい。どうかしましたか?」
その視線からキサラ達から少し離れる。ふたりになるところに行って俺は扇をだす。向こうが持ってたから、よほど聞かれたくない話なんだろう。
何の話だろうーー?ちょっと不安になるなーー……。
「ーー以前、ガルナバ領で手にいれた薬の話なのですがーー」
こそこそと扇を近づけて、まるで平安貴族みたいだ。
「あー、あの危ない薬ーー」
言いにくそうなラジードの顔に嫌な予感しかない。
「ーー廃棄したはずのものを、侍従がベリアドに渡していたそうで……」
「………」
「ーー気になりまして………、侍従を問い詰めたところ………」
一番考えたくないことを、俺は口にした。
「……………、お風呂あがりの水、まさかーー………」
ーーあれに入ってたとしたら!?
「ーーどうなるか、ご存知ですか……?」
喉が渇いてくるんだけどーー。声が震えてくるじゃんね……。
「ーー服用後、少々眠りにつくことで子宮に薬が定着します。そして、個人差はありますが、48時間以内に性交に及ぶと、高確率で子ができるとーー……」
「!」
お、お、お、おいっ!ガッツリやってんぞッ!!ヤバいぐらいガッツリなッ!!
何考えてんだよ!あのアホッ!!侍従も侍従だろーーッ!!
「重ね重ね申し訳ございませんーー」
「ーー花が産まれるかもしれないものを、私に飲ませるとはーー……」
アホとしか言いようがないーー………。イリスも飲んだけど、あいつ、何もしなかっただろうなーー?
「ーー侍従の処分を……」
と、ラジードが言いかけたが俺は止める。
「ーーはあ……。いまさら言ってもどうにもなりません……。ですが、もう少しなんとかならなかったのですか?弟の先が不安で仕方ありません……」
処分しても、もう遅いだろ。
「お怒りはごもっともですーー……」
謝られてもな……、マジ、ツメが甘いおっさんだよ。まっ、セディランなら逆に手玉に取りそうな親子だけどさ。
「ーー何の話だった?」
無理に無表情をつくって戻った俺だけど、そりゃ聞くよねーー。
「………」
「アディ?」
うん、頭が痛くなってきた。
「あっ、そうだ。アディ、サシャラさんから聞いたんだけど、キサラさんにはマーキングがきかないんだってねーー」
「え?」
「お祖父様が、魅了魔法のバリアができるひとだったんだってーー」
イリスの話の内容に、キサラの目が細められた。じいさん関係は彼的にNGだからな。
「そうなんだーー……。でも、キサラのお祖父様は亡くなられてるんじゃーー」
「一生ものらしいよ」
「はあーー。それは凄いな……」
死後も魔法が残るなんて、どえらい大魔法使いじゃないか……。
「それを、アザ花種じゃない孫には赤ちゃんの頃にかけるんだって」
「過保護っぽいな」
「お祖父様が望まない血は、ラース家に混ざることがないようにしてたそうだよ」
「望まない血……」
「キサラさんなんか直系だからーー。お祖父様が喜べない相手は、選べないみたい」
「………」
「コランティ卿」
「いいじゃない。その代わり、お祖父様がオッケーな相手だと、相手が怪我したらわかるとかオプションがつくんでしょ?便利だよねーー」
「…………」
ーーなるほど……。
怪我がわかったのは、俺の魔法じゃなくて、キサラにかかってる魔法のおかげなんだねーー……。うん、キサラ、わかっててごまかしたな?じいさんのこと話したくないんだもんなーー。うん、うん、それは仕方ないよなーー……。
つまり、キサラにはじいさんのバリア魔法がかけられてて、それが恋人の俺にも影響してくる。怪我をアザで感じたりできるのも、じいさん的に俺が満点の相手だからかーー。
ーーしょせん、地位的にでしょ~~~ッ!?
「ーーイリス!おまえが拘束してるから相手の怪我がわかるとかいらんことを言うから!!」
「そういうカップルもいるよ、って言っただけだもんーー。すべてのひとが当てはまるわけないじゃない」
「……」
ーーこの、小悪魔がっ!舌をだすな!かわいいだろ!!
「ーーアディ…、そのーー……」
「ーーいいよ。悩みも解決、お祖父様にも認められて大変うれしいよ……。あっ、キサラにマーキング魔法陣貼りたいけど、バリアが発動しないのか?」
「アディの場合は問題ない。じじいの魔法も発動しなかった」
「?」
なんかしたっけ、俺ーー?
なんだかうれしそうな顔をしてるおまえには、それ以上ツッコまないけどさ……。
パッカ、パッカ、パッカ、パッカ、魔神馬が軽快に走る。彼らは休憩なしで、いくらでも走れるたくましい生き物だ。その馬車の中で、俺はキサラに話しかけた。
「なあ、お墓参りとか行ってもいいかな?御義父様に結婚式の案内状も渡したいしさーー」
あんまり早いのもどうかと思うし、準備もあるから半年後ぐらいはどうよ?
「アディ……」
「ん?何だよ、気にしてないよ俺ーー」
わかってるよ。じいさんのことは深くツッコまないって。
「アディも一年後ぐらいには結婚だもんね。そろそろお衣装とか考えないと」
「ーー正装じゃないのか?」
「それはキサラさんのほうじゃない?アディは花びらドレスの裾がもっと長いやつなんだよ」
「あれより長いって下が擦るんじゃ」
「子供達が裾をもつから。陛下や王太子殿下も裾持ちがいるでしょ?」
「マジか……」
似合うのか、俺?結婚はうれしいのに、結婚式は気が重いなーー……。
「それに、ふわふわしたお衣装じゃないと、お腹が目立つアザ花種って多いからね」
「ーーん?できてから結婚するのか?」
「多いんだよ、そういうひと」
ふ~ん。世間的にそうなのかなーー?
「キサラごめんな……」
「……」
照れるよな、そんな話。
「子供できたら髪は黒いけどさ、顔はキサラに似てるといいなーー……」
エウローペー王家とラース家の遺伝子の戦いだな。
「アディ、いや、そのーー……」
「?」
なんだろ?珍しくはっきりしないなーー。変なこと言ったかな……?
「ら、来月ーー、じじいの年祭があって……、兄弟が呼ばれている……」
「う、うん……?」
「ーーお、おまえも、一緒に来てくれないか?」
「ーー来月……」
「来月と言っても終わりのほうなんだが、船が半月以上かかるから、来月に入ればすぐに発たなければならなくてーー」
しどろもどろ歯切れが悪いキサラを、俺はぼんやりと見ていた。
いろんなことが重なるときって重なるよなーー。なあ、これはもうどうしたらいいんだーー?
………。
「ーーわかった。すぐに準備しなきゃな」
「アディ……」
うれしそうなキサラの顔に俺はラース家に行くことを決めた。いろいろ不安はあるけど、考えたってしょうがないしさーー………。
本当は、いますぐにでも医療院に駆け込みたいんだけどーー……。
赤ちゃんか花かーー……、いや、そもそも俺の身体って赤ちゃんができるようになってんのかな……?
※※※
「ーー無事に帰ってきた……」
涙目の俺に、出迎えたマルスが不思議そうな顔をした。
「かくかくしかじか、大変だったんだーー」
パピーと兄貴に挨拶をした後、キサラがレディガンに話があるから俺だけ自分の部屋に帰った。転移魔法を使ってみてくれって言われたけど、疲れてそれどころじゃない。
それでも口は動く。咳き込むようにマルスに今回の話をする。どうよ、この涙無しには語れない話はーー、ちょいエリン、主の前であきれた顔をするな。
「おやまあ、坊っちゃま、がんばりましたねーー。それにしてもアレキサンドライトの指輪を断るなんて、坊っちゃまは贅沢者です」
「断ってないーー。申し訳なさすぎてな……、受け取れなかったんだ……」
「そうですか……」
後でいただいておきますから、ってマルス、やめなさい。
「あーー、でも楽しかったーー……。盗賊になるなんて、この先ないことだよ」
「ふふっ。それはようございました……。ーー私はどんな坊っちゃまでも、最後までお仕えいたしますよ……」
俺はびっくりして侍従長の顔をまじまじと見た。
「マ、マルス……」
も、もしかしてーー………!
「………」
イケてる紳士は口元に指をあてて、しぃ~、と唇だけ動かした。
ーーありがとう、マルス……。俺ちょっと寝るよーー……。しばらく起きないけど、大丈夫だからなーー………。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつも最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます✨
今日の更新で『魔法とアザ花種』は終わりです。次回は、ラース大陸へ行く話になりますが、またいつになるやら………😓あらたな問題もでてきて、アディはどうなるんでしょうね😱
では、ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました😊
「やだ~、ワイムド爺様は自分の村で暮らしたいだけよ~。ベリアドはマルメルモ砦の牢屋行き~。そこで刑に服すの。自分の領内だと甘くなるから、へブリーズ預かりなの~」
ルカルドに背中を叩かれそうになり、キサラが庇ってくれた。うん、今日までは痛くないと思うけど、やっぱり風圧が怖いよ。
「ーーキサラ、ホントにラブラブなのね~~、うらやましいわ~」
「ああ、らぶらぶだ」
「ブフッ!」
吹いたのはイリスとサシャラだ。失礼だね、君たち。
「じゃあ、サシャラさん。またね」
「うん。楽しかったーー。ありがとう……」
サシャラはエドアルドが送ってくれることになった。エロマスターは研がれた剣を手にごきげんだ。はじめて見るけど、鼻歌うたってるぜ。
「コランティ卿は、社交的だな」
「ああ、俺とアートレがポンコツだった分、イリスが引っ張ってくれた感じだよ」
「ーーあいつはまだ腑抜けているのか?」
「知らないよーー。あっ、なあ、マキラさんはあいつにマーキングをしたのか?」
「ーーいや、あれは天然だ」
「それは、マジすごいな……」
やはり、次はマキラさんに弟子入りをーー……。
「アディオン殿下ーー」
不穏なことを企む俺に、声がかけられた。
俺の名前を直に呼べる人間は、この領内にはそうはいないーー。本来よそでは、王太子弟殿下って呼ぶのよ。自分から、アディオンでいいです、って言うけどさ。
「ーー大公陛下」
「この度は、甥が誠に申し訳ございませんでしたーー」
ラジードに深々と頭を下げられ、俺は手で彼の行動をとめる。
「ーーいえ、残念なことになりましたね………」
残念どころじゃないな。人でなしの甥御さんをもって大変ですな……、とか?まあ、伯父さんが悪いわけじゃないもんなーー……。やっぱり本人だよ。
「あのーー、少しよろしいですか……」
「はい。どうかしましたか?」
その視線からキサラ達から少し離れる。ふたりになるところに行って俺は扇をだす。向こうが持ってたから、よほど聞かれたくない話なんだろう。
何の話だろうーー?ちょっと不安になるなーー……。
「ーー以前、ガルナバ領で手にいれた薬の話なのですがーー」
こそこそと扇を近づけて、まるで平安貴族みたいだ。
「あー、あの危ない薬ーー」
言いにくそうなラジードの顔に嫌な予感しかない。
「ーー廃棄したはずのものを、侍従がベリアドに渡していたそうで……」
「………」
「ーー気になりまして………、侍従を問い詰めたところ………」
一番考えたくないことを、俺は口にした。
「……………、お風呂あがりの水、まさかーー………」
ーーあれに入ってたとしたら!?
「ーーどうなるか、ご存知ですか……?」
喉が渇いてくるんだけどーー。声が震えてくるじゃんね……。
「ーー服用後、少々眠りにつくことで子宮に薬が定着します。そして、個人差はありますが、48時間以内に性交に及ぶと、高確率で子ができるとーー……」
「!」
お、お、お、おいっ!ガッツリやってんぞッ!!ヤバいぐらいガッツリなッ!!
何考えてんだよ!あのアホッ!!侍従も侍従だろーーッ!!
「重ね重ね申し訳ございませんーー」
「ーー花が産まれるかもしれないものを、私に飲ませるとはーー……」
アホとしか言いようがないーー………。イリスも飲んだけど、あいつ、何もしなかっただろうなーー?
「ーー侍従の処分を……」
と、ラジードが言いかけたが俺は止める。
「ーーはあ……。いまさら言ってもどうにもなりません……。ですが、もう少しなんとかならなかったのですか?弟の先が不安で仕方ありません……」
処分しても、もう遅いだろ。
「お怒りはごもっともですーー……」
謝られてもな……、マジ、ツメが甘いおっさんだよ。まっ、セディランなら逆に手玉に取りそうな親子だけどさ。
「ーー何の話だった?」
無理に無表情をつくって戻った俺だけど、そりゃ聞くよねーー。
「………」
「アディ?」
うん、頭が痛くなってきた。
「あっ、そうだ。アディ、サシャラさんから聞いたんだけど、キサラさんにはマーキングがきかないんだってねーー」
「え?」
「お祖父様が、魅了魔法のバリアができるひとだったんだってーー」
イリスの話の内容に、キサラの目が細められた。じいさん関係は彼的にNGだからな。
「そうなんだーー……。でも、キサラのお祖父様は亡くなられてるんじゃーー」
「一生ものらしいよ」
「はあーー。それは凄いな……」
死後も魔法が残るなんて、どえらい大魔法使いじゃないか……。
「それを、アザ花種じゃない孫には赤ちゃんの頃にかけるんだって」
「過保護っぽいな」
「お祖父様が望まない血は、ラース家に混ざることがないようにしてたそうだよ」
「望まない血……」
「キサラさんなんか直系だからーー。お祖父様が喜べない相手は、選べないみたい」
「………」
「コランティ卿」
「いいじゃない。その代わり、お祖父様がオッケーな相手だと、相手が怪我したらわかるとかオプションがつくんでしょ?便利だよねーー」
「…………」
ーーなるほど……。
怪我がわかったのは、俺の魔法じゃなくて、キサラにかかってる魔法のおかげなんだねーー……。うん、キサラ、わかっててごまかしたな?じいさんのこと話したくないんだもんなーー。うん、うん、それは仕方ないよなーー……。
つまり、キサラにはじいさんのバリア魔法がかけられてて、それが恋人の俺にも影響してくる。怪我をアザで感じたりできるのも、じいさん的に俺が満点の相手だからかーー。
ーーしょせん、地位的にでしょ~~~ッ!?
「ーーイリス!おまえが拘束してるから相手の怪我がわかるとかいらんことを言うから!!」
「そういうカップルもいるよ、って言っただけだもんーー。すべてのひとが当てはまるわけないじゃない」
「……」
ーーこの、小悪魔がっ!舌をだすな!かわいいだろ!!
「ーーアディ…、そのーー……」
「ーーいいよ。悩みも解決、お祖父様にも認められて大変うれしいよ……。あっ、キサラにマーキング魔法陣貼りたいけど、バリアが発動しないのか?」
「アディの場合は問題ない。じじいの魔法も発動しなかった」
「?」
なんかしたっけ、俺ーー?
なんだかうれしそうな顔をしてるおまえには、それ以上ツッコまないけどさ……。
パッカ、パッカ、パッカ、パッカ、魔神馬が軽快に走る。彼らは休憩なしで、いくらでも走れるたくましい生き物だ。その馬車の中で、俺はキサラに話しかけた。
「なあ、お墓参りとか行ってもいいかな?御義父様に結婚式の案内状も渡したいしさーー」
あんまり早いのもどうかと思うし、準備もあるから半年後ぐらいはどうよ?
「アディ……」
「ん?何だよ、気にしてないよ俺ーー」
わかってるよ。じいさんのことは深くツッコまないって。
「アディも一年後ぐらいには結婚だもんね。そろそろお衣装とか考えないと」
「ーー正装じゃないのか?」
「それはキサラさんのほうじゃない?アディは花びらドレスの裾がもっと長いやつなんだよ」
「あれより長いって下が擦るんじゃ」
「子供達が裾をもつから。陛下や王太子殿下も裾持ちがいるでしょ?」
「マジか……」
似合うのか、俺?結婚はうれしいのに、結婚式は気が重いなーー……。
「それに、ふわふわしたお衣装じゃないと、お腹が目立つアザ花種って多いからね」
「ーーん?できてから結婚するのか?」
「多いんだよ、そういうひと」
ふ~ん。世間的にそうなのかなーー?
「キサラごめんな……」
「……」
照れるよな、そんな話。
「子供できたら髪は黒いけどさ、顔はキサラに似てるといいなーー……」
エウローペー王家とラース家の遺伝子の戦いだな。
「アディ、いや、そのーー……」
「?」
なんだろ?珍しくはっきりしないなーー。変なこと言ったかな……?
「ら、来月ーー、じじいの年祭があって……、兄弟が呼ばれている……」
「う、うん……?」
「ーーお、おまえも、一緒に来てくれないか?」
「ーー来月……」
「来月と言っても終わりのほうなんだが、船が半月以上かかるから、来月に入ればすぐに発たなければならなくてーー」
しどろもどろ歯切れが悪いキサラを、俺はぼんやりと見ていた。
いろんなことが重なるときって重なるよなーー。なあ、これはもうどうしたらいいんだーー?
………。
「ーーわかった。すぐに準備しなきゃな」
「アディ……」
うれしそうなキサラの顔に俺はラース家に行くことを決めた。いろいろ不安はあるけど、考えたってしょうがないしさーー………。
本当は、いますぐにでも医療院に駆け込みたいんだけどーー……。
赤ちゃんか花かーー……、いや、そもそも俺の身体って赤ちゃんができるようになってんのかな……?
※※※
「ーー無事に帰ってきた……」
涙目の俺に、出迎えたマルスが不思議そうな顔をした。
「かくかくしかじか、大変だったんだーー」
パピーと兄貴に挨拶をした後、キサラがレディガンに話があるから俺だけ自分の部屋に帰った。転移魔法を使ってみてくれって言われたけど、疲れてそれどころじゃない。
それでも口は動く。咳き込むようにマルスに今回の話をする。どうよ、この涙無しには語れない話はーー、ちょいエリン、主の前であきれた顔をするな。
「おやまあ、坊っちゃま、がんばりましたねーー。それにしてもアレキサンドライトの指輪を断るなんて、坊っちゃまは贅沢者です」
「断ってないーー。申し訳なさすぎてな……、受け取れなかったんだ……」
「そうですか……」
後でいただいておきますから、ってマルス、やめなさい。
「あーー、でも楽しかったーー……。盗賊になるなんて、この先ないことだよ」
「ふふっ。それはようございました……。ーー私はどんな坊っちゃまでも、最後までお仕えいたしますよ……」
俺はびっくりして侍従長の顔をまじまじと見た。
「マ、マルス……」
も、もしかしてーー………!
「………」
イケてる紳士は口元に指をあてて、しぃ~、と唇だけ動かした。
ーーありがとう、マルス……。俺ちょっと寝るよーー……。しばらく起きないけど、大丈夫だからなーー………。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつも最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます✨
今日の更新で『魔法とアザ花種』は終わりです。次回は、ラース大陸へ行く話になりますが、またいつになるやら………😓あらたな問題もでてきて、アディはどうなるんでしょうね😱
では、ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました😊
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