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第6話 おれと坊っちゃんと若葉兄やん
旦那様の部屋から出て、2階にある坊っちゃんの部屋に行く。艷里小路家の屋敷はとても広い。そして、西洋のお城のような白い屋敷の中は、けして走ってはいけない。マナー違反だからだ。
軽快に階段をあがりながら、おれは坊っちゃんの部屋のドアを開ける。おれはノックがいらないからね。
「坊っちゃん~、絵本の時間ですよ~~」
あれ、手前の部屋にはいないや。もう、寝室にいるのかな?いつもなら、ネットのサブスク巡りしてるのにーー。
「坊っちゃんーー、すみません!寝ちゃいましたか!」
急いでドアを開けて、おれの目は丸くなる。
「よぉ、遅かったな」
「若葉兄やん!」
大きな広いベッドの上で、坊っちゃんは横になっていて、若葉兄やんが坊っちゃんの足首を触っている。
「坊っちゃんが、足が痛いっていうから診てたんだ。湿布は貼ったが……」
「えっ!?坊っちゃん、いつ足を!?」
焦るおれに、坊っちゃんが少し冷たい顔を見せた。それは一瞬だったんだけど、な、なんだよ、坊っちゃん!おれ、なんかしたかのか!?
「ありがと~♡若葉~♡」
坊っちゃんは、若葉兄やんにはとろけるぐらいの、とびっきりのカワイイ笑顔を見せたのに、おれにはどんな暗殺者よりも殺意のこもった視線をぶつけてくる。
ひどい、おれが何かしましたかーー?
「じゃあ、俺は行くから」
「あ、ありがとう、若葉兄やん。ーーそうだ、バロネスの修理をーー……」
「おっ、後で整備室に来いよ」
「いいの!」
「ああ」
「っ!」
いや、だから坊っちゃん。なんでおれのこと睨んでるんです?おれと坊っちゃんは心がつながった、主人と使用人の濃い間柄じゃないすか……。
「はい、坊っちゃん。今日は『お手紙届くかな』と『ともだちほしいぞオオカミさん』すよ」
「ぶ~~」
「あれ?嫌すか……。じゃあ、紙芝居のほうがいいすか?」
「ーー『どんなにきみがすきだかあててごらん』がいいなぁ」
「はいはいーー、ただいまーー」
本棚を漁りながら、おれは気づいた。
ーーうん?『お月様まで行って帰ってくるくらい、君が好きだよ』ってやつだよなーー。
坊っちゃんーー……、まさか、こ、こ、こ、恋をしてらっしゃるのではーー?
旦那様が悪い虫を近づけたくないのはわかる。だが、坊っちゃんのほうから近づいていくのは、どうなんだーー?
おれは坊っちゃんが眠るまで絵本を読みながら、内心は汗が噴き出ていた。ほんと、ジャバジャバよ。
こんなことは誰に相談すればいいのかーー……、ーーあっ、そうだ!いいひとがいるじゃんね……。
「ーーーーーってわけなんすよ。兄やん」
「そりゃ、坊っちゃんだってお年頃だからなーー。誰か目星はついてるのか?」
若葉兄やんはオフのとき、よく飴を口に入れている。いまも棒付きの飴が棒だけ見えるよ。
「いやーー、クラスメイトって、ただのガキっすよ」
「おまえにとってはガキでも、坊っちゃんから見たらわからねえだろ?」
「そっかーー!」
2歳の壁は高い!
兄やんが服の袖をまくって、見事な腕の筋肉を披露している。残念なことに観客はおれだけだが。そのきれいな筋肉といったら、這いつくばって崇めたいぐらいだよ。
「おい、翠。これ掃除しとけ」
「はい!」
バロネス(リールユニットを3基搭載した乗用の芝刈り機)のバラした部品を掃除するようにおれに指示をだす。へいへい、アニキ、なんでも聞きますぜーー。
「べアリングの交換だな……」
「いけそうっすか?」
「ーーおまえががんばってるから、消耗が早いだけだ」
皮の手袋を外して、若葉兄やんがおれの頭を撫でた。兄やんったら、絶対におれのこと好きだよなーー……。
おれだってさ……、兄やんだったら男でもいいんだけどーー……、兄やんなら抱かれたっていいよ……。兄やんならね………。
「いやーー、まいったね~~♡」
「何がだよ」
「そうだ、兄やん。おれってば今日告られたんだぜーー」
「ほぉ、人間か?」
「ーー確信はない。言語が通じないときがあったしさ」
おれの話に、若葉兄やんが肩を揺すって笑ってくれた。笑った兄やんのカワイさ、坊っちゃんと張っちゃうぞ。
「嫌だなーー。おれ、みんなより2つも上なんだぜ」
「たいしたことねえよ。俺から見れば、どいつが1年でどいつが3年かなんてわからねえーー。ガタイの良い奴は1年でもゴツイし、華奢な奴は3年でも幼いしな」
「そっかーー……」
「いいじゃねえか。そこでしかできないこと、しっかりやってこいよ」
「兄やん♡」
「もちろん、護衛優先だ」
「あたぼうですぜ」
はははっ、と楽しそうに笑う若葉兄やんを、おれはじっと見ていた。兄やんはおれより2つ上だ。2つ上だともう大人なのに、2つ下だとまだまだ子供。中間にいるおれは、どんな存在なんだろう。よくわかんねえよなーー……。
軽快に階段をあがりながら、おれは坊っちゃんの部屋のドアを開ける。おれはノックがいらないからね。
「坊っちゃん~、絵本の時間ですよ~~」
あれ、手前の部屋にはいないや。もう、寝室にいるのかな?いつもなら、ネットのサブスク巡りしてるのにーー。
「坊っちゃんーー、すみません!寝ちゃいましたか!」
急いでドアを開けて、おれの目は丸くなる。
「よぉ、遅かったな」
「若葉兄やん!」
大きな広いベッドの上で、坊っちゃんは横になっていて、若葉兄やんが坊っちゃんの足首を触っている。
「坊っちゃんが、足が痛いっていうから診てたんだ。湿布は貼ったが……」
「えっ!?坊っちゃん、いつ足を!?」
焦るおれに、坊っちゃんが少し冷たい顔を見せた。それは一瞬だったんだけど、な、なんだよ、坊っちゃん!おれ、なんかしたかのか!?
「ありがと~♡若葉~♡」
坊っちゃんは、若葉兄やんにはとろけるぐらいの、とびっきりのカワイイ笑顔を見せたのに、おれにはどんな暗殺者よりも殺意のこもった視線をぶつけてくる。
ひどい、おれが何かしましたかーー?
「じゃあ、俺は行くから」
「あ、ありがとう、若葉兄やん。ーーそうだ、バロネスの修理をーー……」
「おっ、後で整備室に来いよ」
「いいの!」
「ああ」
「っ!」
いや、だから坊っちゃん。なんでおれのこと睨んでるんです?おれと坊っちゃんは心がつながった、主人と使用人の濃い間柄じゃないすか……。
「はい、坊っちゃん。今日は『お手紙届くかな』と『ともだちほしいぞオオカミさん』すよ」
「ぶ~~」
「あれ?嫌すか……。じゃあ、紙芝居のほうがいいすか?」
「ーー『どんなにきみがすきだかあててごらん』がいいなぁ」
「はいはいーー、ただいまーー」
本棚を漁りながら、おれは気づいた。
ーーうん?『お月様まで行って帰ってくるくらい、君が好きだよ』ってやつだよなーー。
坊っちゃんーー……、まさか、こ、こ、こ、恋をしてらっしゃるのではーー?
旦那様が悪い虫を近づけたくないのはわかる。だが、坊っちゃんのほうから近づいていくのは、どうなんだーー?
おれは坊っちゃんが眠るまで絵本を読みながら、内心は汗が噴き出ていた。ほんと、ジャバジャバよ。
こんなことは誰に相談すればいいのかーー……、ーーあっ、そうだ!いいひとがいるじゃんね……。
「ーーーーーってわけなんすよ。兄やん」
「そりゃ、坊っちゃんだってお年頃だからなーー。誰か目星はついてるのか?」
若葉兄やんはオフのとき、よく飴を口に入れている。いまも棒付きの飴が棒だけ見えるよ。
「いやーー、クラスメイトって、ただのガキっすよ」
「おまえにとってはガキでも、坊っちゃんから見たらわからねえだろ?」
「そっかーー!」
2歳の壁は高い!
兄やんが服の袖をまくって、見事な腕の筋肉を披露している。残念なことに観客はおれだけだが。そのきれいな筋肉といったら、這いつくばって崇めたいぐらいだよ。
「おい、翠。これ掃除しとけ」
「はい!」
バロネス(リールユニットを3基搭載した乗用の芝刈り機)のバラした部品を掃除するようにおれに指示をだす。へいへい、アニキ、なんでも聞きますぜーー。
「べアリングの交換だな……」
「いけそうっすか?」
「ーーおまえががんばってるから、消耗が早いだけだ」
皮の手袋を外して、若葉兄やんがおれの頭を撫でた。兄やんったら、絶対におれのこと好きだよなーー……。
おれだってさ……、兄やんだったら男でもいいんだけどーー……、兄やんなら抱かれたっていいよ……。兄やんならね………。
「いやーー、まいったね~~♡」
「何がだよ」
「そうだ、兄やん。おれってば今日告られたんだぜーー」
「ほぉ、人間か?」
「ーー確信はない。言語が通じないときがあったしさ」
おれの話に、若葉兄やんが肩を揺すって笑ってくれた。笑った兄やんのカワイさ、坊っちゃんと張っちゃうぞ。
「嫌だなーー。おれ、みんなより2つも上なんだぜ」
「たいしたことねえよ。俺から見れば、どいつが1年でどいつが3年かなんてわからねえーー。ガタイの良い奴は1年でもゴツイし、華奢な奴は3年でも幼いしな」
「そっかーー……」
「いいじゃねえか。そこでしかできないこと、しっかりやってこいよ」
「兄やん♡」
「もちろん、護衛優先だ」
「あたぼうですぜ」
はははっ、と楽しそうに笑う若葉兄やんを、おれはじっと見ていた。兄やんはおれより2つ上だ。2つ上だともう大人なのに、2つ下だとまだまだ子供。中間にいるおれは、どんな存在なんだろう。よくわかんねえよなーー……。
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