アレが欲しいだけですの。 ー愛人から旦那様を寝取る目的はひとつですー

濃子

文字の大きさ
3 / 21

第3話 マジ早いなー、こいつ☆

しおりを挟む
 次の日からサキナとレインは屋敷から離れた場所にある離れの改修をはじめた。傷み具合を確認し、使える材料は置いておき、取り替えが必要な部分を解体した。サキナにはそういった知識はないが、咲夜はDIY女子だったので、段取り良く作業をこなす。
 レインは指示を受けながら首を傾げているがーー。

 板を掃除していたサキナは、視線を感じて振り返った。近くに軍服姿のエドアルドが立っている。
 怪訝な目で見返すとエドアルドは嫌そうな顔でサキナを見る。
「見送りは?」
 サキナはキョトンとした。

「昨日しましたが」
 苛立ったようにエドアルドは頭をかく。銀色の髪に瞳の色も銀色だ。
「そうか」
 見送って欲しいのだろうか。あいにくこちらは旦那様の顔など極力見たくはない。無視して作業を続ける。

「ーー何をしている」
 めんどくさいなー、集中してるときに何回も声をかけてくるな。
「リフォームです」
 エドアルドは目を眇めたが、黙ったままだ。
 何しに来たんだ。


 まさか、よね…。

「ーーレイン、足りない材料を買ってきてくれる?」
「はい、サキナ様」
 左手でさっと書いたメモを渡すと、レインはエドアルドを睨みながら買い物に出て行く。
 サキナは突っ立っているエドアルドの顔を見て、奥の庭を指さした。エドアルドはハッとした表情を浮かべ頷く。



「うっ!」
 エドアルドが気持ち良さそうに喘ぐ。ひと目につかない野外での行為とはーー。
「なんと淫らなやつだ……」
 誘われてホイホイついてきた奴が何を言うか。
 立ちバックで応じながらサキナは溜め息をつく思いだ。エドアルドはサキナの身体が気になるのだろう。

 貞淑といわれているラース大公の華が、愛人を突き飛ばして自分の上に乗るとは……。エドアルドも貞淑さを確かめずにはいられないのか、ただやりたいだけなのかー。


 だが、サキナは貞淑な人物だった。祖父にもまわりにもその辺りのことは厳しく育てられ監視されていた。万が一にもしょうもない男の種を仕込まれると、困るからだろう。

 しかし、咲夜は違う。大学生のとき当時の彼がセックスマシーンであったため、ありとあらゆることをそれなりに経験している。後ろもだが、野外も経験ずみだ。
 彼の部屋で彼親に乱入されたこともある。あれは恥ずかしかった。

 それにしてもーー。

 こいつ本当に早いしヘタクソだな。

 辛辣なことを考えながらサキナは適当に相手をした。見当違いなとこ突くなよ、とは思うが、口に出すのもめんどくさいので黙ったまま応じた。サキナの先は少しも反応しない。
 エロいことをすれば勝手に勃つんじゃないのかしら?

 こんな間近に人がいて、耳にも息がかかるのに感じないなんてーー。サキナは不感症なのだろうか。咲夜が入ってしまった弊害がこんなところにでてしまったのだろうか?
 
 つまらないーー。


 そのとき、がさり、と葉がこすれる音がした。
「え、エドアルド様ーー……」
「ノ、ノエル!」
 愛人の目が大きく開かれていた。大粒の涙が頬を伝う。
 ノエルは駆け出した。
「ま、まて!ノエル!これは!誤解だ!」

 馬鹿だ!

 サキナはおかしすぎて吹き出した。そのせいで腹が震えてしまい、エドアルドが快感に喘いだ。
 何が誤解か、しっかり突っ込んでおいてーー。
 しばらくサキナは笑っていたが、向こうは何度もイッているがこちらはさっぱりイケそうにない。
「どいてください」
 妙にくっついている身体をさっさと離し、衣服を整えるとサキナは離れに戻り作業の続きをはじめた。

 呆然とした顔でエドアルドはサキナを見る。
「お、おまえはなぜ?」
 彼の言葉の真意がわからずサキナは首を傾げた。
「はい?」
「なぜ私に抱かれた」
 抱かれているつもりはない。出させただけだ。
「子種のためですよ。あなたに用はない」
 サキナは銀髪の美青年には興味もない。板の古釘を外すほうが大切だ。

 傷ついた顔をエドアルドはした。それを見てサキナは笑い出したいのを我慢する。
「数ヶ月後が楽しみです」
 それが祖父から言われた自分の役目だ。サキナは挫折してしまったが、咲夜なら大丈夫。

 産めるなら、産んでみせよう、鷹の子をーー。  

 ーーな~んちゃってだ。

 馬鹿の子だと生まれて来る子がかわいそうだが、アザ花種が生まれたら間違いなく祖父に取り上げられるだろう。
 人口が減り続けるこの世界で、赤子が生まれるのは家の資産になる。ましてやラース大公の血を引くアザ花種なら値千金だ。

 アザ花種で生まれた意味を幼い頃から叩き込まれているサキナは、どこに嫁ごうが祖父に逆らわずに生きて行くのだろう。



 さて、咲夜はどうしようか。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~

TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】 公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。 しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!? 王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。 これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。 ※別で投稿している作品、 『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。 設定と後半の展開が少し変わっています。 ※後日譚を追加しました。 後日譚① レイチェル視点→メルド視点 後日譚② 王弟→王→ケイ視点 後日譚③ メルド視点

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

優秀な婚約者が去った後の世界

月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。 パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。 このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。

月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」 幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。 「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」 何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。 「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」 そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。 僕、殿下に嫌われちゃったの? 実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。

処理中です...