あやかしマフラー

わかば

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悲しみの帰宅

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 空から二人がルククの家に帰宅したとき、ルククの両親は心底驚いていた。が、どこか嬉しそうでもあった。
「帰れない。」
そう話したとき、ルククの両親はどこか安心したような顔をした。本当のところ、嬉しかったのだろう。行ってしまうかもしれないと覚悟していた、自分の息子が帰ってきたのだ。それに、帰れないということはずっとこの世界にいるということだ。もっと息子と一緒にいられる。それを喜ばない親は少ないだろう。
「そうか、そうか。」
二人は私たちを慰めてくれた。その上、これからは私もこの家の娘のしてむかえてくれるという。
「流石にそれは申し訳ないです…。」
「いいのよ。その代わり、父、母と呼んでさえくれたら。」
お父様も、お母様も、優しかった。けれど、私はどうしてもと断った。断ったとき、二人はかなりショックな顔をしていた。でも、どうしてもそれだけは譲れなかったのだ。私には、向こうの世界にだが両親が、家族がいるのだから。それに、もし帰れるとなった時に足かせにならないように……。
「でも、今日はもう遅いから、とりあえず今日は泊まって行きなさい。……竜さんも、泊まっていく?」
「いやいや、私はいいよ。私の羽なら家の谷まですぐだからね。」
そして、私たちを慰めるように竜はいった。
「向こうの世界に返してやることはできないが、いつでもおいで。私にできることなら、君たちのためになることなら、私がしてあげるからね。」
竜は優しく私たちの頭を撫でた後、空に飛び立ち、帰っていった。
「さあ、そろそろうちに入りましょう。そろそろお風呂に入って、ご飯を食べないと…。」
はい、と言って笑いつつ、頭の中では向こうの世界にいる両親と妹のことをかんがえていた。今でも向こうで私のことを探してくれているはずの、両親と妹のことを……。
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