だから彼女は自殺した

わかば

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彼女の過去

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 2005年8月6日午前8時15分。彼女は大きな産声をあげた。おんぎゃあ、おんぎゃあと。両親、おばさんとおじさんはそりゃあもう喜んだ。家では、三日三晩宴会が続いたという噂まで聞いたことがある。それほど彼女は愛されていたのだ。


 2、3歳になって、彼女は初めて言葉を発した。
「ママ。」
その時も両親は本当に喜んだ。
同じくらいの時、彼女は初めて立った。その時も両親は本当に喜んだ。


 4、5歳になって彼女はピアノを始めた。初めての発表会の日、彼女は何度かミスをしたものの、なんとか最後まで曲を弾ききった。その時も両親は本当に喜んだ。僕も聴きにいった。頑張っている彼女は綺麗だった。

 小学校に入った彼女は、いつも人気者だった。時々冗談を言い、授業は真面目に受ける。理想の子供だった。棒はそんな彼女が大好きだった。

中学に入った彼女は美しかった。執行委員をやったり、率先して手をあげたり。中学でも彼女は人気者だった。先生にも可愛がられていた。それでも僕のことを大切な幼馴染だといってくれて、嬉しくて、何より誇らしかった。


 愛されていたのに。喜んでいたのに。綺麗だったのに。大好きだったのに。彼女は、もういない。もうこれ以上、彼女との思い出は増えない。薄れて、さびれて、消えていくだけ。もしも本当にこれが神様の仕組んだことならば、僕は神を殺すだろう。あんなに愛されていた彼女を、僕たちから奪ったのだから。彼女の未来を、奪ったのだから。

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