殺人鬼との恋

しましまのしっぽ

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殺し屋さんが泊まっていって数日が経った。あの日学校に行くと同時にお別れしてから何事もなく過ぎた。

平凡な日常が数日前の非日常を消し去っていた。







今日は部活だとか委員会だとかの集まりで帰りは一人。
雨が降りそうな雲だなとか思いながらテクテク歩いていく。


ぽつりぽつりと雨が降ってきた。

傘を開いて足を進める。

傘の柄を見てふと思いだした数日前の非日常。

もう二度と起こる事のない非日常が脳内を巡る。


また会いたいなぁ

なんて思ってしまう。

だめだあの人は犯罪者。

会いたいなんて思っちゃだめ

というか
なんで会いたいなんて思ってしまうのだろうか?

美味しすぎた朝食のせいだろうか?

正直料理は苦手だからたまに作って欲しいな……


なんて余計な考えを巡らせてるうちに家についてしまった。

雨はいつの間にか強くなっている。






晩御飯のことを考えながら朝出来ていない家事を進めていく

父さんがいない一人暮らしで大変なことといえばこの家事たちだ。
父さんがいれば分担していたことも一人でしなくてはいけない…




ガチャッ



ん?
鍵を閉めたはずの玄関から扉を開ける音がする。

おかしいぞ?
父さんはいないしというか鍵閉めてるし…

近くにあった箒を手に恐る恐る音の原因を探しに行く。
怖すぎる
泥棒とかだろうか?





音の原因を目視して目が飛び出しそうなほど驚く。

だって眼の前に“人殺しさん”がいてるんだから


????

頭の中がはてなで埋め尽くされている間にあっちから声がした。


「ごめん。泊まらせて!ごはん作るから!」
スーパーの袋を見せながら言ってくる

人殺しさんはもっと怖い人なのでは?とかこんなにフレンドリーな感じでいいのだろうかとか思うことはたくさんある。

けど『ごはん作るから』この一言で断る理由はなくなってしまった。


「ご飯作ってくれるならいいですよ!」


喜んで!まで付け加えそうになったがぐっと我慢した。



俺のことは気にしないでいいからとか言ってるから放っておく。


「キッチンとか適当に使ってくださいね」

とは言っておいた。



絶対に極悪人なのに謎に信頼してしまう。

流石に気をつけないと…

晩御飯につられてさされたりでもしたら…

困ったな












用意してくれた晩御飯は文句なしにめっちゃ美味しい!

他の家事も地味に手伝ってくれて自分のことが捗った。
正直人殺しさんがいてるの助かりすぎてもうだめかもしれない。



もう辺りは真っ暗になっていた。

また何だかんだで1日が終わる。

人殺しさんの布団とかはもう直してしまったしめんどくさいので忘れていたことにしようと思う。

なんだか訳ありそうだったし…


余計なことは忘れて勉強に手を付ける。



















コンコン

部屋をノックする音が聞こえた。

人殺しさんだろう
やっぱり布団だろうか?




返事をして扉を開けるとたばこを吸いたくなったらしい。
この部屋を通さないとベランダまで行けないことから少し申し訳無さそうに感じる。

勉強をしてることだしイチイチめんどくさいので勝手に入って良いことを伝える。


苦いものを口にしたようななんとも言えない困った顔。

また新しい顔だ。

想像よりもコロコロ変わる顔にまた興味を持ってしまった。

本当にこの人は最初に見た人と同じなのかなんて思ってしまう。


「ありがとう。邪魔してごめん」


この人にそう言われると邪魔をされても憎めない気がしてきた。

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