スキしかいらない

みやび

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意地悪なのは…

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今あるべき姿と現状のギャップ…そう言った諸々を兎に角事細かに聞かれて行く桜。それでも相手が会長という立場であるなどお構いなしに自身の思う事を伝えていく。それを静かに、時に笑いながらも聞き入れてくれた。

「…さてと、じゃぁ、最後に何か聞きたい事は?」
「…聞きたい事…ですか?」
「うん」
「これと言って…」
「話足りない事は?」
「ありません。」
「そっか。参考になった。」
「でも皆さん同じ様な事言ってるかと思うので今更な事ばっかだと思いますけど…」
「あー、ある意味同じ様な事だね」
「ですよね…すみません」
「謝らなくてもいい。これと言って特にありません。ばっかりだったから貴重だな」
「…へ?」
「うん、そういうこと。ありがとう」
「あ、はい…」
「…終わり」
「…ありがとうございました。」

そうして頭をペコリと下げた桜はフロントに戻っていった。

「…おっそ!」

フロントに戻るなり、その一言で出迎えられた。

「…あれ、中条さんは?」
「帰ったよ、」
「あ、そうでしたか」
「てかさ?何をそんなに話す事ある訳?」
「…あー、何か色々と…」
「ふぅん?」

そう少しばかり棘のある言い方をしてくるのは横井だった。桜はそれほどでないにしてもなぜか横井の桜に対する当たりがとても強い事が唯一の桜の悩みでもあった。

「…で?本当は遊んでたんじゃないの?」
「遊んで…って…鳳凰の間で、ですか?」
「そこから出てどこかでさぼってたんじゃないのかって話。」
「それは無いと思いますけど…」
「言い切れないんだ?まぁいいから仕事してよね!」

そう突っかかってくる横井に軽く挨拶をして桜は黙々と仕事を進めていく。全部屋のチェックアウトが終わる頃に牧田が二階から降りてくる。

「お疲れ様」
「あ、お疲れ様ですー!会長!」
「ん、お疲れ」
「会長は今日いつまでいられるんですか?」
「さぁ、どうかな?」

横井は牧田に擦り寄る様な口調で話しかける。ちらりと桜が視線をあげれば牧田と視線が交わされた。そのタイミングで会釈をすれば『じゃぁまた来るかもしれない』と言い残して、その場を離れていく。

「…何してんのよ。仕事!」
「はいはい…」
「何なのその態度!私のが先に入って仕事できるんだ…」

横井のセリフを遮る様に桜はなる始めた電話を取った。

「…何よ。」

横井はそんな電話に出ている桜を見てフンっと鼻を鳴らしながらもフロントを出て行ってしまった。

「…はい、はい、……かしこまりました。」

そうして通話を終えた桜。それから時期に牧田がフロントに戻ってくる。

「…あれ?横井さんは?」
「あー、電話出てる間にどこかに行かれてしまって…場所は解らないんですけど…」
「ならこれ、コピー頼んでもいいかな?」
「はい、大丈夫です。何枚くらいでしょうか?」
「全部二十部ずつ」
「…二十、ですか?」
「うん。お願いね?」

そう言って書類的には一部五枚ほどの資料だったものの、二十ずつともなれば他の物は手に負えなくなるのも事実。それでも牧田かの依頼であればといつもやっている事務作業を一旦手を止めて、桜はコピーに張り付くことにした。

ガチャ…

「…あれ?何してるわけ?」
「あ、頼まれまして…」
「頼まれた?」
「はい。会長に」
「…ふぅん。」
「……」
「で?」
「で、とは?」
「コピーしてる間に他の仕事出来るでしょ?何待ってんの?」
「いえ、でも…」
「言い訳?へぇ…」

しかし横井の戯言を無視するかの様にただ頼まれた仕事をこなしていく桜。二十部ずつできたものをそれぞれ一部ずつ順番にページを揃えて組み終え、いざ持っていこうとした時だった。

「貸しなさいよ」
「はい?」
「いいから!!さっきまで何も仕事の手を止めてやって居なかったんだから!私が持っていくから仕事しなさい!」

そういうなり横井は半ば奪い取るかの様にして桜の手から資料を取り上げ、牧田の元に向かって行くのだった。それから一時間と返ってこない横井。どうしたものかと思いつつも待っていればガチャリと扉が開いた。

「ありがとうございます。」
「別に?当然でしょ?あ、それと、先に休憩してきたから、あとは暇な時間に行って?」
「…あ、はい。じゃぁ、これだけ終わらせていってきます。」

休憩もしていたのか…と思いつつも桜は敢えてそれを口に出さなかった。ひと段落付けて休憩に入ると伝えても返事をもらう事は出来ずにそのまま扉を開けて隣接している事務所兼休憩室に入っていった。

「…はぁ…」

ため息を溢してしまうのもいけないと思いつつも桜の口からはため息が零れだしていく。

「途中で放棄したって思われただろうな…」

横井の態度はよく知っている。それでも最近入って来た牧田相手では接してきた時間は当然ながら違っている。あまり知らない今日会ったばかりのスタッフと、既に何度かあっているスタッフとでは人となりの条件にしてもどちらを重視するのかは目に見えている結果だった。

「だからってあそこで喧嘩とかしたくなかったし…」
「なるほどね?」
「…へ?」
「ノック、一応したけど?」
「会長?」
「コピー、ありがとう」
「え、あ…はい。でも横井さんが届けてくれて…」
「彼女がしてくれた仕事じゃないのは解るよ」
「…えーっと…」
「それとも?途中で投げ出したと思っていた方がよかった?」
「…それは…嫌ですけど…」
「ならいいな?助かった。」

そう牧田が桜に言ってくれる事があるとは桜も思いもよらなかった。時間目一杯まで休憩を取り、フロントに戻れば重苦しい空気が待っているものの、それでも午後からの仕事は少しばかり気が楽になっていた桜だった。
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