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第36話 扉の向こう
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(な、何これ……)
いつものように放課後の図書室へやってきた私は、入り口のドアを開けた瞬間に固まってしまった。
これまで見たことがないくらいに図書室がにぎわっていたのだ。たくさんある閲覧席のほとんどが埋まっている。
私お気に入りの特等席にも、知らない男子生徒が座っていた。
「──富永さん」
囁き声で名前を呼ばれ我に返る。声の方を見てみれば、カウンターの内側から佐伯先輩が手招きしていた。
「佐伯先輩、これは……」
カウンターの方に歩み寄りながら尋ねると、佐伯先輩は苦笑しながら理由を話してくれた。
「……期末テスト、ですか」
予想外の単語にぽかんと口が開いてしまう。
佐伯先輩によれば、彼らは期末テストの勉強のために図書室に集結しているらしい。中には普段通り読書を楽しんでいる人もいたのかもしれないけれど、ぱっと見た感じでは少数派だろう。
「でも期末前だからってなんでこんな……」
横目で閲覧スペースを見ながらつぶやく。五月にも中間テストがあったけど、その時はこんなふうに図書室が混みあうことはなかったのだ。
そう言うと、佐伯先輩は「たしかに、ちょっと変だよね」と笑った。
(さて、どうしようかな……)
私は改めて図書室を見渡してみる。空席はあるにはあるものの、両側にもれなく誰かが座っているような感じで、普段のようにゆっくりできそうな雰囲気ではなかった。
迷っていると、佐伯先輩がカウンターから出てきた。
「富永さん、ちょっと時間いいかな?」
「え? はい、大丈夫です」
何だろう、と思いながらもうなずくと、佐伯先輩は「こっち」と誘うように歩き始めた。そして、とある扉の前で立ち止まる。
「ここって……」
カウンターの隣、「司書室」というプレートのついたそのドアを、佐伯先輩はノックした。
「……あら、佐伯くん。どうしたの?」
返事を待っていると、内側からドアが開いて司書の辻先生が姿を現した。ドアを片手で押さえたまま一歩内側に入り、私たちを招き入れてくれる。
「辻先生、こちらがこの間お話した一年生の富永さんです」
佐伯先輩がそう紹介してくれたので、私は慌ててぺこりと頭を下げた。
「一年三組の富永香乃です」
そう名乗ってから(あれ?)と思う。この間話したというのは、いったい何の話だろう?
でもその答えはすぐに明らかになった。
「富永さんね。いつも来てくれてるからお顔は把握してたんだけど。佐伯くんから聞いたわ。夏の蔵書整理を手伝ってくれそうだって」
なるほど。そういえば、前に佐伯先輩と委員会の話をしたときに蔵書整理の話も出たのだった。
「それじゃ、僕は戻りますね」
辻先生と私を引き会わせた佐伯先輩は、そう言って司書室を出て行った。図書委員の仕事に戻るのだろう。
そんな佐伯先輩を「ありがとうね」と見送った辻先生は、司書室のドアが閉まるなりうふふ、と少女のような笑い声をあげた。驚いて振り返った私は、その顔を見てピンとくる。
(あ、これは……)
そう、アレだ。体育祭の時のともちゃんと同じ──。
いつものように放課後の図書室へやってきた私は、入り口のドアを開けた瞬間に固まってしまった。
これまで見たことがないくらいに図書室がにぎわっていたのだ。たくさんある閲覧席のほとんどが埋まっている。
私お気に入りの特等席にも、知らない男子生徒が座っていた。
「──富永さん」
囁き声で名前を呼ばれ我に返る。声の方を見てみれば、カウンターの内側から佐伯先輩が手招きしていた。
「佐伯先輩、これは……」
カウンターの方に歩み寄りながら尋ねると、佐伯先輩は苦笑しながら理由を話してくれた。
「……期末テスト、ですか」
予想外の単語にぽかんと口が開いてしまう。
佐伯先輩によれば、彼らは期末テストの勉強のために図書室に集結しているらしい。中には普段通り読書を楽しんでいる人もいたのかもしれないけれど、ぱっと見た感じでは少数派だろう。
「でも期末前だからってなんでこんな……」
横目で閲覧スペースを見ながらつぶやく。五月にも中間テストがあったけど、その時はこんなふうに図書室が混みあうことはなかったのだ。
そう言うと、佐伯先輩は「たしかに、ちょっと変だよね」と笑った。
(さて、どうしようかな……)
私は改めて図書室を見渡してみる。空席はあるにはあるものの、両側にもれなく誰かが座っているような感じで、普段のようにゆっくりできそうな雰囲気ではなかった。
迷っていると、佐伯先輩がカウンターから出てきた。
「富永さん、ちょっと時間いいかな?」
「え? はい、大丈夫です」
何だろう、と思いながらもうなずくと、佐伯先輩は「こっち」と誘うように歩き始めた。そして、とある扉の前で立ち止まる。
「ここって……」
カウンターの隣、「司書室」というプレートのついたそのドアを、佐伯先輩はノックした。
「……あら、佐伯くん。どうしたの?」
返事を待っていると、内側からドアが開いて司書の辻先生が姿を現した。ドアを片手で押さえたまま一歩内側に入り、私たちを招き入れてくれる。
「辻先生、こちらがこの間お話した一年生の富永さんです」
佐伯先輩がそう紹介してくれたので、私は慌ててぺこりと頭を下げた。
「一年三組の富永香乃です」
そう名乗ってから(あれ?)と思う。この間話したというのは、いったい何の話だろう?
でもその答えはすぐに明らかになった。
「富永さんね。いつも来てくれてるからお顔は把握してたんだけど。佐伯くんから聞いたわ。夏の蔵書整理を手伝ってくれそうだって」
なるほど。そういえば、前に佐伯先輩と委員会の話をしたときに蔵書整理の話も出たのだった。
「それじゃ、僕は戻りますね」
辻先生と私を引き会わせた佐伯先輩は、そう言って司書室を出て行った。図書委員の仕事に戻るのだろう。
そんな佐伯先輩を「ありがとうね」と見送った辻先生は、司書室のドアが閉まるなりうふふ、と少女のような笑い声をあげた。驚いて振り返った私は、その顔を見てピンとくる。
(あ、これは……)
そう、アレだ。体育祭の時のともちゃんと同じ──。
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