社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

文字の大きさ
44 / 201
第2章・モフモフで可愛いケモノっ子

043:重大事件

しおりを挟む
 ジャックから押収した聖剣を乗せたクロスロード連盟軍の船は世界連盟の本部に向けて進んでいる。


「中佐っ!! 前方から見知らぬ船が来ます!!」

「そんなの海の上なんだから当たり前だろ?」

「こちらに向かって大砲を撃ってきております!!」

「なんだと? また海賊かよ……直ぐに撃ち返す準備をしろ」


 前方からやってきた船はクロスロード連盟軍の船に向けて、大砲を撃って攻撃を仕掛けてきている。
 それに対して、この場の指揮権を持っているジョズエ中佐は、直ぐに打ち返す準備をしろと指示を出す。
 そして撃ち合いになったところで、ジョズエ中佐は何やら敵戦の違和感に気がついたのである。


「あの船は、何処かで見た事ある様な………まさか!?」

「正解だっ!! たくっ。こんな小物を相手にしなきゃいけない俺の身にもなってくれや………」


 ジョズエ中佐が違和感に気がついた瞬間に、その違和感の正体が背後に立っていた。
 その人間は声からしたら男の声だが、ローブを着て顔を隠しているので、どんな容姿だか分からない。


「銀翼の夜明け団かっ!? しかも幹部………どうして、この船を狙って来た!!」

「狙ってるモノは、お前たちの方が分かってんじゃねぇのか? 俺にさっさと渡せや」

――――銀翼の夜明け団・大幹部:憤怒ラース――――

「聖剣は渡さねぇぞ!! これをテメェに渡したら、この世界は恐怖のどん底になっちまうじゃねぇか!!」


 船に乗って来たのは世界最悪の犯罪組織《銀翼の夜明け団》の大幹部である《憤怒ラース》だった。
 ジョズエはラースの威圧感に押されて少し後ろに後退してしまう程だ。
 そしてラースが求めているのは、この船に乗っている聖剣を奪取する事だという。


「平和に交渉したいところだが、お前たちが渡さないっていうのなら………それなりの事をしないとな」

「やれるもんならやってみろ!!」


 その後に船は沈没し、ジョズエ中佐率いる部隊は全員が戦死したと伝えられ、しかも船からは聖剣も消えていたという。



* * *



 俺たちはアカシア島で3日間もの休暇を取ってから、新たにイローナちゃんを仲間に加えて出発の日を迎える。
 船着場には兎人族の村人たちが、俺たちを見送る為に多くの人が集まってくれていた。


「本当に村の人たちを助けていただきありがとうございました!! 今度は、もっとゆっくりしに来てください」

「そうだね。今度は世界回ってから、また必ずくる様にするよ」

「はいっ!! 待っていますね!!」


 泣きそうになっているセイラちゃんに、俺たちは手を振りながら船は中陸に向かって出発する。


「それにしても他のところから連れて来られたなんて、大変な目に遭いましたねぇ」

「いきなりだったので、とても驚きましたが………昔から、こういう事に巻き込まれる体質なんです」

「そんな体質があるのかわん」

「たまに見るにゃ………」


 新入りのイローナちゃんを古参の3人が、快く受け入れてくれて俺としては安心できた。
 それどころか、美人でミステリアスな雰囲気を出しているのでエッタさんたちは妹ができたと頭を撫で撫でして可愛がる。
 それを受けてイローナちゃんは嫌がるどころか、少しニヤッと笑うくらいに気に入ってくれたらしい。


「シュナちゃんたちの国は、どんなところなんだい?」

「私たちのところかにゃ? うーん……」

「私たちの村は、ルクマリネ王国にあるザザ森林にあるわん」

「ルクマリネ王国か。本で読んだだけなんだけど、確か世界中で見ても獣人と人間が共存してる国だよね?」

「そうにゃ。もう1つ有名な国があるけど、それは大大陸の方だから関係は無いにゃ」


 これから俺たちが向かうシュナちゃんたちの故郷は、ルクマリネ王国という世界的に見ても獣人と人間が共存している国だ。
 その為に俺としては可愛い獣人もいるだろうと、楽しみが多くてワクワクが止まらないが、本来の目的はシュナちゃんたちの村をゴブリンたちから助ける事である。


「ここからだったら、あと3日くらいで着くかな?」

「そうですね。それくらいなら着くと思います」

「なら気長に行こうか………」


 俺たちは3日間の船旅をすると、3日目の朝にルクマリネ王国の港町《コナッツ》に到着した。


「おぉ。早速、獣人の人たちが多くいるねぇ」

「そうだわん。ここら辺には、多くの獣人が住んでるわん」

「私たちも、ここから避難したにゃ……」


 俺たちはザザ村に向かう馬車の時間まで、コナッツ村を探索する事にして街の中を歩いている。


「痛っ!? な 何なんだよ………」

「どうかしましたか?」

「あのローブを被った奴が肩に、ぶつかっていって………謝る事もしねぇんだなって」

「大丈夫ですか?」

「問題は無いから全然大丈夫だよ」


 俺が街を歩いていると顔まで深くフードを被った人間が、肩にぶつかったまま謝りもしないで立ち去っていった。
 人間の方が礼儀なっていないなと思っていると、前で何やら騒がしくなっているのに気がつく。


「何かあったのか?」

「周りの人たちが泥棒って言ってるので、店先から何かを盗んだみたいですね」

「ちょっと見てみるか」


 泥棒という事なので気になって見に行くと、狸人族の男の子が果物屋のオヤジに捕まっていた。


「僕は何もやってないぽん!!」

「嘘をつくなっ!! お前がリンゴを盗んだんだろ!!」

「持ってないから調べても良いぽん!!」

「そんなの仲間に渡したんだろ!!」


 オヤジは男の子の話を聞かずに、この子が犯人だと決めつけているので、俺はオヤジと男の子の中間に入る。


「ちょっと待ってくれ。怪しい奴なら俺は見たぞ」

「なんだって? 本当か!? 紛らわしい野郎だ!!」


 オヤジは俺の情報を聞いて逃げた方に向かって走る。
 そのうちに俺は狸人族の男の子を連れて、この場から急いで離れるのである。
 そこに少し離れて買い物をしていたシュナちゃんとカエデちゃんが合流した。


「あれ? カエデ姉ちゃんに、シュナ姉ちゃん?」

「ん? もしかして《ポン太》かわん!?」

「こんなところで会うなんてにゃ………」


 この男の子とシュナちゃんたちは知り合いらしく、名前は狸のポン太というらしい。
 そこには笑いそうになったが感動的な出会いかもしれない為、笑うのは我慢して話しやすいカフェに移した。


「それでポン太くん? とは、知り合いなのか?」

「はいわん!! 同じカロニ村の出身なんですわん!!」

「僕も お姉ちゃんたちみたいに逃げて来たんだぽん」


 ポン太も同じ村の出身らしくゴブリンの被害から、この街に逃げて来たらしいのである。


「そうか。そんなにも被害は大きかったのか………俺の想像を遥かに超える被害が出てるんだな」

「今はゴブリンたちが住み着いて、獣人族の兵士たちが追い出そうと毎日の様に戦ってるんだぽん」

「それなら急いだ方が良さそうだな」


 ポン太の話では毎日の様に、ゴブリンと獣人族が戦っているみたいだ。
 それでも取り返せていないのならば、相当な被害が出ているのでは無いかと考えられる。
 俺たちは急いでカフェの会計をすると、ザザ森林の近くまで運んでくれる馬車のところまで向かう。


「ここから何日で着くんだ?」

「途中の村によってだから、明日の昼には着くわん」

「案外早く着くんだな」


 思ったよりも早く着くので移動での疲れは無さそうだ。
 ポン太はついて来ても危険だと判断して、ゴブリン退治が終わるまではコナッツにいてもらう事にした。
 そして俺たちは本来の目的である、ザザ森林のカロニ村を救いに出発するのである。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...