日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

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第2章・湯川平原の戦い(初陣) 編

026:大将と大将

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026:大将と大将
 少佐の騎馬隊がやって来た事で、伍の兵士たちはピシッと整列して待機するのである。
 これは位の高い武将がやってきた事の恒例行事だ。
 さっきまでオラついていた奴らも、少佐の登場で冷や汗ダラダラで緊張している。
 俺はそんなに畏怖される少佐とは、どんな人間なのかと本人が来るのを待つのである。

 綺麗な軍服に身を包んだ兵士たちが、騎馬に乗って行進しているのである。
 それは俺たち伍とは比べ物にならないくらいだ。
 凄い兵士たちだと思いながら、周りがザワザワしだしたので大佐が来ると理解した。
 すると一層ピシッとしている集団を見つけて、あそこに大佐がいると分かって目を凝らす。
 その少佐の顔を見てみると、見た事がある人だった。


「おぉ! 葵くんじゃないか!」

「伊馬子さんっ!? 伊馬子さんって少佐になられたんですね! 凄いじゃ無いですか!」

「君も16歳で初陣なんて凄いな! 君とは少し話してみたいし、ちょっと俺の天幕まで来てくれるか?」


 そう少佐は、この前のクーデター鎮圧で武功を挙げた伊馬子さんだったのである。
 向こうから気づいてくれたのも嬉しいが、何者なんだろうという視線が少し気持ち良い。
 伊馬子少佐は、ただ声をかけてくれただけではなくて天幕に来て話したいと言ってくれた。
 俺は言われるままに少佐の天幕に着いていく。

 南須原伍長たちは、俺が何者なのかと少し興味が湧きながら天幕の外で待機するのである。
 俺は諭されるまま椅子に座る。
 伊馬子少佐も座って会話がスタートする。
 最初に言われたのは「成長したねぇ!」だった。
 アレから大して経っていないのに、そこまで成長したのかと俺は困惑してしまった。


「そんなに成長しましたか? アレから時間は大して経っていないと思いますけど」

「いやいや葵くんくらいの歳の子の時間と、俺のようなオッサンの時間は一緒じゃないよぉ」

「自分が成長したっていうなら、伊馬子少佐なんて少佐じゃ無いですか!」


 俺が成長したというのならば、伊馬子少佐は次の昇格で将軍の仲間入りする。
 互いに褒め合って大笑いする。
 ある程度の雑談が終わったところで、伊馬子少佐は膝を叩いて本題に入るのである。


「この間の話なんだけどね。他国の戦争犯罪者を、王族が雇っていたなんてなると大問題になるから、この間の事は内密にして貰えないかな?」

「それはもちろんですよ!」


 どうやら井出咲の存在は他国や国民に、バレると面倒な事になるから黙っていて欲しいという事だった。
 この国にリスクとなる事は話すつもりは無い。
 だから俺は伊馬子少佐の頼みを快諾するのである。


「そんな事よりも俺としては、また伊馬子少佐と一緒に戦える事が嬉しく思います!」

「そうだねぇ、確かにまた戦えるのが嬉しい………だけど、今回の戦争は上手く行かなそうじゃないかな」

「そんなに大変な事になってるんですか?」

「まぁ気負いし過ぎないようにね。とりあえずこれから作戦会議があるから、俺はここで失礼するね。それじゃあ会津若松城で会おうか」


 話が意外にも盛り上がって時間が経つのが早い。
 もう作戦会議の時間なので、伊馬子少佐は天幕を離れるから会津若松城で会おうと別れた。



~~~~~~~~~~



 俺たちが狙っている阿賀城に、喜多方城を攻略してから戻ってきた間堂大将が入城したのである。
 阿賀城の城主である《羽間打 龍國はまだ りゅうこく》は立膝をついて深々と頭を下げる。
 明らかに媚を売っている感じだ。
 まぁ18万を超える軍が攻め込んで来るのだから、ここで媚を売っておくのは悪い事じゃない。


「大将、心より感謝いたします! 大将の軍が、ここに入っていただけるのならば百人力です!」

「ここには援軍として来たわけじゃない」

「な なんですと? 今なんと仰られたんですか? 私の耳には援軍ではないと聞こえたのですが………」


 媚を売っている羽間打に対して、間堂大将は援軍に来たわけじゃないと言った。
 城主は何を言っているのかと困惑する。
 苦笑いをしながら間堂大将に話を聞き返す。


「そう言ったのだ。2度も言わせるんじゃない」

「そ それでは何をしに来たのでしょうか?」

「ここの軍を全て吸収しに来た」


 あまりにも端的な回答で、城主はさらに困惑した。
 ここの軍を全て吸収するという意味は、どういう事なのだろうかと城主は考えている。
 すると間堂大将は北星王国の方を見る。
 そして苦虫をすりつぶしたような顔をする。


「あんな野蛮な人間たちを、この豊栄共和国の地に踏み込ませるわけには行かない」

「ま まさか……そんな事を考えているのでは?」

「それ以外に何かあるのか?」


 間堂大将は阿賀城で戦うのではなく、こっちから攻撃を仕掛けてやるのだという事だ。
 その為にわざわざ加賀城に戻って来て兵を補充した。



~~~~~~~~~~



 北星王国の会津若松城に兵が集結した。
 そして伊馬子大佐も含めて、軍の上層部の人間たちが集まって会議を開いていた。
 その会議は会議というには罵声が飛び交っている。
 こっちの方が良いとか、こっちが良いに決まってるとかの意見が激しく話し合っている。
 するとガチャッと会議室の扉が開いた。
 伝令兵が息を切らしながら「緊急事態です!」と言って報告しにやって来たのである。


「豊栄共和国の北方軍が阿賀城を出立しました! その数は16万を超え、この会津若松を目指して進軍しているようです!」


 本当ならば阿賀城で衝突するはずの軍が、この会津若松城を目指して出立したとの事だ。
 その報告に上層部は動揺している。
 喜多方城を取った後は、この城を取ろうとしているのかと上層部は苛立っているみたいだ。


「そんなに狼狽えるじゃない! こんな事で狼狽えるなんて他の国が見たら舐められるぞ。それに間堂は、こんなところを狙っていない………あの男は自慢の装備馬隊を活かせる戦い方をしたいんだ」


 動揺が広がっている上層部の人間たちを、たった一言で黙らせて落ち着かせる。
 そんな事ができるのは、この場において1人だけだ。
 その人物は牛丸大将や谷村大将と肩を並べている大将の1人《檜 栄市ひの えいいち》だ。


「豊栄軍が攻め込んで来るのならば、会津若松城ここと阿賀城の間にある湯川平原を決戦の地とする。有利な場所を取る為に、今すぐにでも出発するぞ!」

「今直ぐにですか!? しかし第9師団の一部は、この城に到着していない状況ですが………」

「そんなの直接向かわせれば良いだろ! そんな事よりも遥かに平原で有利な土地を奪われる方が痛手だ」


 今すぐに城を出発して会津若松城と、阿賀城の中心にある湯川平原に向かうという。
 それは向こうよりも有利な場所に陣を張る為だ。
 まだ第9師団の一部は到着していないが、それでも直ぐに出発した方が良いと意見を突っぱねた。
 従うしかないので上層部の人間たちは、直ぐに出発の準備を整えるのである。
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