日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

文字の大きさ
30 / 110
第2章・湯川平原の戦い(初陣) 編

028:全軍突撃

しおりを挟む
028:全軍突撃
 俺たち歩兵団の援軍が到着したのを、豊栄共和国軍の見張り番の人間が観察する。
 そして陣を組んだのを確認してから、伝達兵が豊栄共和国軍の副将《米田 大》に報告した。


「どうやら北星王国軍は焦っているみたいだな。この丘を取られている、今は援軍を待って立て直すのが最善策だというのに………檜とは素人なのか?」

「米田中将、どう対応しましょうか?」

「第2大隊を前に進めて、乱戦となっている最前線を左右に分けさせろ。このまま数で押し潰してやる」


 副将である米田は目が血走っている。
 こんなのに夜中に会ったら、発狂して気を失ってしまうくらいのオーラは感じられる。
 そんな米田は檜大将の事を素人かと言った。
 それはわざわざ集めたはずの歩兵を、立て直す前に突撃させようとしているからだ。

 向こうが動き始めているのに見た伍長は、ゴクンッと唾を飲み込んで喋り出す。
 伍長は俺たちに声をかけをする。
 あまり強くは無いだろうが、伍長としての責任感や能力に関しては申し分ないだろう。


「最前列というのは、戦場において最も死亡率が高いところです。しかし逆を返せば、そこを切り抜けた場合はチャンスになると思います」

「そんなの無理ですよ! 伍長や上等なら、まだ分かりませんが俺たちのような素人はダメですよ!」


 伍長は色々と言って励まそうとする。
 しかしチンピラ兄弟と中性的な顔の少年は、自分たちのような素人には無理だという。
 だが伍長は表情を変えずに喋り続ける。


「乱戦になったら、私の少しの経験が活かせる。弱者には弱者なりの戦い方があるんです………まずピンチになったら5人は固まり、互いに背中を合わせながら戦って数的有利を作り続けるんです。もちろん怪我してる兵士から狙っていきます」


 伍長から、そんな言葉が出てくるとは思わなかった。
 しかし話を聞いてみたら、それは至極当然の話だ。
 これはただの子供の遊びではなく、殺さなければ殺されるような世界なのだから。
 この人は弱者ゆえに死地を何度も乗り越えたんだ。


「皆んなズルい人間だって思うかもしれないね………これは私の考えなんですけど、勝者というのは戦場に最後まで立っている人間の事を言うと思います」


 伍長の言葉に俺たちは、少し勇気つけられた。
 この人は確かに弱いかもしれないが、俺の尊敬する人間の1人まで上がってきた。
 気合が入ったところで北星王国の大旗が振られる。
 どうしたのかと思っていると、これは攻撃開始準備の合図らしく、遂にやって来たと俺はニヤける。


「月島上等は怖くないんですか? 俺たちと同じように初陣なんですよね?」

「怖い? そうだなぁ……全くもって怖くないな。俺は戦争を待ってたんだ」


 中性的な少年に怖いかと聞かれた。
 そこで俺は全くもって怖くないと笑って答える。
 すると部流少佐の「全軍、突撃準備ぃ!」と叫ぶ。
 俺は深く深呼吸して、はやる気持ちを抑える。
 いつでも行けると思いながら、変に気持ちが前のめり過ぎて隙を突かれないように集中する。

 そして遂に部流少佐から「全軍突撃ぃ!」と号令がかけられ、歩兵たちは「うぉおおおお!!!!」と叫びながら敵兵に向かって走り出す。
 俺も驚くべき所属で突撃していく。
 その速さは周りの人間よりも1人分くらい前に出てくるくらいの速さである。


「また北の田舎の侵略者が来たかっ! こっちは数で上回っているというのに、馬鹿みたいに突撃なんて愚かな人間たちだなぁ!………こっちは岩石の陣だっ!」

『はっ!!!!』


 突撃してくる北星王国の兵士たちを下に見るのは、豊栄共和国軍の准尉の男だ。
 そんな准尉は突撃してくる北星王国に対して、盾と槍を用いる岩石の陣を展開するのである。
 これは盾を上下に配置し、その間から槍を出して突っ込んできた人間を串刺しにすると言うものだ。


「げっ!? あんなのに突撃したら串刺しだぞ!」

「前の奴らの屍を乗り越えて乗り込むぞ! そうしないと串刺しの前に、挟まれて圧迫死するぞ!」


 そんな風に最前列ではない人間たちは考えて、少しペースを落として様子を見ようとする。
 しかし俺としては、そんな風に屍になって足場になるつもりは毛頭ない。
 そこで俺は死者数を減らす為に考える。
 ある事を思いついて速度を上げた。
 どういう事をするのかというと、俺は槍に突き刺さらないように地面を滑る。
 そして盾と盾の間から剣を通して脛を斬る。
 そうすると少しの間合いが生まれて、さらにそこを重点的に攻撃する事で道を切り開いた。


「おいっ! 何をやってんだ、そんなガキ1人に戦況を変えられるんじゃねぇよ! そのまま囲んで串刺しにして殺してしまえ!」


 岩石の陣をカチ割って敵兵の中に入った俺を、准尉は囲んで殺すように指示を出した。
 しかし俺は徹底的に相手の脛を狙って攻撃する。
 これは相手が俺の胴体を刺す為に、攻撃するところが大体な予想が立てられるからだ。
 それならしゃがむようにして相手の脛を斬ってから、退かすように胴体を斬り伏せるのである。


「なんだと!? あんなガキ1人に何をやってんだ……いや、あのガキは手練れか? しかも相当な使い手だ」


 あまりの活躍ぶりに准尉は衝撃を隠しきれない。
 どうなっているのかと困惑しながらも、深くまで入ってきたら囲んで数で押せると考えている。
 しかし俺は奥ではなく左右に斬り込むのである。
 どうしたのかと准尉が考えていると、ある事を思いついて「入り口を作ってんのか……」と呟く。
 そう俺は斬り込んだところから、さらに道を開いて後続の為の入り口を作っているのである。

 その甲斐もあって後続の最前列にいる兵士たちは、俺の作ったところに飛び込んでくるのである。
 豊栄共和国軍の兵士も、どうにか立て直そうとする。
 しかし俺の攻撃で広げた入り口は、そう簡単に塞ぐ事ができずにてんやわんやだ。
 これだけできれば十二分だろう。
 それによって俺たちは乱戦に持ち込む事ができた。
 これで最初の難所を乗り越えたわけだ。

 まぁ最初の難所を乗り越えただけで、ここからも地獄のような難所が続くのである。
 それを痛感するのは市民兵の3人だ。
 目の前で普段見る事は殺しの現場に立ち会っている。
 立ち会うどころか、殺しをしている人間だ。
 その現実と殺されるかもしれないという恐怖心で、心臓が激しく鼓動するのである。
 そしてこう思う……来るんじゃなかったと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン
ファンタジー
 世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。  大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。  GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。  ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。  そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。  探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。  そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。  たまに有り得ない方向に話が飛びます。    一話短めです。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...