日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

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第2章・湯川平原の戦い(初陣) 編

035:歯を食いしばる

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035:歯を食いしばる
 俺たちが守備隊を突破していた頃、丘の下の歩兵たちを援護している伊馬子少佐と今枝少佐。
 しかしさすがの数の多さで、今枝少佐は敵兵の槍を脇腹に貰ってしまったのである。
 伊馬子少佐が近寄ろうとする。
 だが今枝少佐が手で制して来ないように言う。


「俺の方は大丈夫だ。そんな事よりも部流隊が、どうやら頂上に向かっているみたいだぞ」

「なにっ!? 嘘だろ、本当か?」

「あぁ豆粒くらいの大きさにしか見えないが、中段の守備隊を抜けるのが見えた」


 自分の心配をさせないように、丘の方を指さし話を部流隊の方に変えるのである。
 それを聞いた伊馬子少佐は本当かと丘を見る。
 自分には見えないが、今枝少佐が言ったのだから、そうなのだろうと驚いている。


「完全に無謀だと思っていたが、戦争には無茶をする人間も必要なんだな………」

「何言ってだ、着いていく人間からしたら大迷惑だろ。それにしても今日は特に酷いな………あいつは昔から身内が大勢やられたら無茶苦茶する奴だからな」


 2人が見つめる先には突撃する俺らがいる。
 もう直ぐ頂上だと言うところで、先頭を走っている1人の騎兵が目を矢で射抜かれた。
 部流少佐は矢で射抜かれた事に驚き嫌な予感する。
 直ぐに騎兵たちに「弓隊が居るゾォ!」と叫ぶ。

 部流少佐の警告と共に、頂上から雨のような矢が降り注いでくるのである。
 そして固まっていたら蜂の巣になるので散らばる。
 俺は馬の機動力と剣で、何とか矢を回避する。
 ドンドン牙がやられていく。


「軍師気取りの人間がやりそうな手だ………どれだけ矢で射抜かれようが、俺には通用しないぞ! 全軍頂上に向けて前進だっ!」


 部流少佐は怯む事なく突き進み、積成には武将であると見抜かれてしまうのである。
 俺たちが向かってきているのに米田は焦っていない。
 それは米田自身、この戦の勝利を確信している為だ。


「王国兵が調子に乗るなよ。わずか数十の兵士で、何万もの戦局を変えられると思うな………そんなに戦は甘くないのだからな!」


 俺たちの特攻に米田は焦りを見せていない。
 それどころか、先頭を走っている部流少佐の胸に積成が放った矢が命中するのである。
 そのまま満足した積成は立ち去ろうとする。
 しかし部下の人間に「積成さまっ!」と呼び止める。
 部流少佐は落馬する事なく、ニヤッと不敵に笑って、また頂上に向け出発するのである。


「ほぉ……それじゃあ脳みそをバラ撒いても笑っていられるのかな?」


 今度は部流少佐の頭を狙おうとした。
 そんな事をさせたら、この隊は壊滅すると俺は考えて馬を無理矢理に走らせる。
 そして俺は部流少佐の前に出るのである。
 こんなところで部流少佐を失うわけにはいかない。

 しかし俺が部流少佐の前に立つと、向こうの兵士からしたら「あの騎馬は何だ?」や「少年兵か?」などと、不思議がられているのである。
 積成は俺の事を憐んでくる。


「北星王国というのは、ここまで兵士不足なのか………かと言っても、これは戦争だ。少年兵とは言えども、ここは全力で射抜かせてもらうからな!」


 積成は力一杯弓を引く。
 そして俺に向かって弓矢を放ってくる。
 しかし俺は瞬きはせずに、積成の弓矢から目を離さずに剣で矢を弾くのである。
 まさか自分の矢を弾かれるとは思わなかった。
 それは積成の部下たちも同じで、見切られた事を認めたくない為に「まぐれか?」「そうに決まっている」などと話しているのである。

 だが積成は口にはしないが、矢の軌道を見る才能に歳なんて関係ないと思っている。
 だからこそ俺には才能があると見抜く。
 まぁ自分の矢を見抜かれたので悔しさを感じる。
 2矢目を背中から取ると、直ぐに弓を引いて構える。


「どれだけ目が良くても距離が近づけば、その体感速度は2倍に跳ね上がる! 今のように防げるかな!」


 積成の渾身の2矢目も俺は見抜いて防いだ。
 その凄さには積成も思わず「なに……」と言ってしまうくらいには凄い事だ。
 そしてこの瞬間、1発目が偶然じゃないと周りの敵味方関係なく理解する事になった。
 この事態に危機感を持った指揮官は、さすがにマズイと思って弓隊に準備するように指示を出す。


「待てっ! アレは俺の獲物だ………お前たちは、あの少年兵の周りにいる奴を狙え!」

「は はいっ! 承知いたしました。総員、先頭以外の騎馬を狙って弓を放てっ!」


 俺を殺すのは自分だと指揮官に待ったをかける。
 そして矢を背中から取ると、そのまま弓に付けてグググッと弦を引くのである。
 さすがの俺でも近すぎて見切る事はできない。
 それでも攻撃を喰らわなければ、こっちが逆に積成の首を取る事ができる。
 どうにか防いでやると覚悟を決める。
 しかし積成は心の中で俺に謝る。


「(悪いが勝つのは俺だ……これがもしも1対1の戦いであれば、こんな事はしない。しかしこれは戦争)」


 そう言いながら積成が放った矢は、俺が乗っている馬の顔面を貫いたのである。
 これでは落馬してしまう。
 そしてせっかく弓を打たせないように近寄ったのに、ここで落馬してしまったら何発も喰らってしまう。
 どうにかしなければいけない。

 もう完全にヤバいと思った。
 その瞬間、息絶えるはずの馬がグッと歯を食いしばって、最後の力を使うように前に飛んだ。
 この光景に誰もが、その場から動けずにいる。
 そして俺は瞬間を見逃さず、矢を取ろうとしている積成を真っ二つに斬り伏せたのである。

 そのまま弓隊の中に入るのであるが、もうこの間合いになってしまったら弓隊の意味を成さない。
 その場にいる敵兵たちを俺は斬り伏せていく。
 もう完全に丘に登られた事で、窮地に立たされた米田の部下が「米田さま、ここは撤退して下さい!」と叫んで逃がそうとするのである。
 しかし米田は動こうとしない。


「貴様のような男には、目の前で何が起きているのかなんて理解できないだろう? 座って部屋に籠り、軍学が戦いの全てだと思っている人間の頭ではな」


 部流少佐は米田の前に立つと、その言葉を投げる。
 すると俺と部流少佐の馬が、ここまで来れたがバタンッと倒れて力尽きるのである。
 まさかここまで来れるなんて思っていなかった。
 俺は倒れた馬の頭を撫でて剣を構える。


「なるほど、ここまで来れたのは奇跡の積み重ねか。下らないな………奇跡なんて非力なものに頼らずを得ない状況にありながら、そんなものに助けられて得意げにしているなど、全くもってありえない!」


 米田は立ち上がると俺たちがやってきたのは、奇跡に頼って馬鹿馬鹿しいと否定してくる。
 この米田は完全に軍学を全てだと思っている。
 だからこそ俺たちは戦うのだろう。
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