日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

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第4章・郡山市の戦い 編

089:天災

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089:天災
 謎の大男が生山・田野丘連合軍の夜営地に現れた。
 そして月虎隊の歩兵たちを片っ端から斬り殺し、この人間は何なのかと困惑と恐怖が広がる。
 それにしても男を見ているだけで、全身の寒気が止まらないでいるのである。


「我は神の使者だ。ここにいるお前たちは、ただ運が悪かっただけだ」


 そういうと男は虐殺を続行する。
 自分たちの方に来ると、戦っても勝てないので必死に逃げていくのである。
 伍長が部下を逃がす為に時間を稼ごうとする。
 しかし一太刀で簡単に伍長を斬り伏せる。
 それはまさしく天災と言わざるを得なかった。

 この抗う事ができぬ、その圧倒的な暴力の前に足腰が立たぬ者、ひたすら逃げる者、立ち尽くす者。
 それは周囲にいる者も同様だった。
 この光景を見ている香さんは、このままでは月虎隊が死んでしまうと思っている。
 遂に正たちのところにもやって来た。
 しかし正は腰を抜かして立ち上がれずにいる。
 男は矛を振り上げ、正たちに向かって振り下ろそうとした瞬間、ギリギリで俺が止めに入った。


『隊長っ!!??』


 俺の登場に月虎隊の人間たちは、ほんの少しだけ気持ちが楽になっているのが表情から分かる。
 俺は周りに転がっている月虎隊々員の死体を見る。
 すると何と言葉にすればいいのかという気持ちになると、人生で初めてと言っても良いほど黒い何かが心の内を覆い尽くすのである。


「テメェ何をしてくれてんだよ………タダで死ねると思うんじゃねぇぞ!」


 俺は完全に男を殺す気で剣を構える。
 伍長たちは俺の性格を理解しているので、これは文句なしで斬りかかると察した。
 しかしどれだけ倉智を討ち取った俺だとしても、この目の前の男は倉智とは格が違う。


「止めろ隊長っ! とてもじゃないが人間が、太刀打ちできる奴じゃねぇ!」


 どれだけ俺が強かったとしても、この男はとても人間じゃないと安土伍長は叫ぶのである。
 だから逃げるようにいうが、俺の耳には言葉が届いておらず、めちゃくちゃ猛撃を喰らわす。
 伍長たちは「す 凄いな……」と驚く。

 男は俺の攻撃を、矛を上手く使って防いでいる。
 だが俺は後ろの方に少しづつ押し出していくり
 これはいけるかもしれないと月虎隊々員が思い始めたところで、男は俺の刀と矛で鍔迫り合いにする。
 俺は鍔迫り合いをした瞬間、ある違和感に気がつく。
 さっきまでは押していたが、鍔迫り合いになると岩と押し合いをしているような感じがした。

 そして次の瞬間、逆に俺が後ろに吹き飛ばされた。
 俺は全身がビリビリするような感覚に襲われている。
 これだけで、とてもじゃないが普通の人間じゃないと察せざるを得ないのである。
 地面に膝を着いている俺に、男は「立て」と言って来て、追撃を喰らわしに来ない。
 この光景に俺は「舐めてやがる」と思った。


「お前ら、心配すんな! 死ぬのは………コイツだ」


 俺は月虎隊の隊員たちに、この戦いで死ぬのは俺たちではなく男の方だというのである。
 それは俺がある事に気がついたからだ。
 その正体とは気配を消して近寄っている花菱が、俺の視界に映ったからである。
 花菱は男の胴体を真っ二つにしようとする。
 しかし明らかにノロマそうな巨体なのに、素早い花菱の攻撃を避けた事に驚愕した。


「ほぅ? どうやら我を導いたのは、お前たちのようだな………子供だが、我が神の為に命を貰うぞ」


 男は自分が、ここに来たのは俺たちが目的だと意味の分からない事を言い始めた。
 意味の分からない事を言いながらも、化け物じみた実力に関しては本物の力である。

 一方で日中軍本陣は、まだこの事態を知らない。
 普通に明日からの会議について話し合っていた。
 各武将たちの立ち位置や戦況についての情報を、染谷に伝えて策を考えるのである。


「(この山中では、味方の動向も伝わりづらい………しかしそれは北星軍も同じ事だ。この先やつらも徐々に孤軍となっていくだろう)」


 そんな風に山中での戦いについて色々と考えている。
 こっちも向こうも条件としては、ほぼ同じ事で孤軍となれば打つ手は増えていくという。
 するとそんな本陣に伝言兵がやってきて「染谷さま! 急報です!」と言いに来る。


「護衛をしている隊が、最上さまのお姿を見失ってしまったとの事です!」

「な なんだと!? それは本当か!」

「また後方の見張り隊が最上さまらしき人影が、北星軍が夜営している場所に消えていったとの報告が!」


 この報告を受けた染谷は「そ そんな馬鹿な……何が起きているんだ!」と困惑を隠せない。
 その当の本人である最上は俺たちの目の前にいる。
 さっきの神の為に命を貰うなどの発言から、何を言っているのかと頭がおかしいんじゃないかと思う。
 というよりも、そもそもこの男は誰なんだ。


「(4万を超える俺たちの夜営地に、1人で飛び込んできて殺しまくりやがって………日中兵なのか? だとしたら、1人で夜襲なんて何を考えてるんだ………ちょっと待てよ、コイツが来たのは俺と花菱のどちらかって言ってたよな)」


 俺は目の前の男に対して、何を考えて誰なのかと疑問が多すぎるのである。
 それにしても来た理由に、俺か花菱が呼び寄せたような発言をしていた事に気がつく。
 どういう事なのかと思っている。
 すると花菱が口を開いた。


「お前みたいな怪物を呼んだ覚えは無いぞ」

「お前の本意では無いではなく、存在自体が我を呼び寄せたのだろう………我の中にいて導く神は、他の強き者を求めて突き進むのだ」


 花菱は男なんて呼んでいないと言うが、その花菱に男は自分の中にいる神が導いたのだと言う。
 何を言っているのかと俺たちは困惑する。
 そこで花菱が「一体何者なんだ……」と聞いた。
 すると男は答えるのである。


「武神《蘇芳すおう》に導かれし使徒………我の名は《最上 仁也もがみ じんや》である!」


 名乗りをあげはしたが、俺は武神の使徒とは本当に何を言っているのかと引いている。
 しかしこの言い口は花菱が天日王を襲撃した大和桃源教の人間たちと似ているような感じがする。
 そんな事を俺は感じていたが、月虎隊の隊員たちは別の事が気になったのである。
 それは男の名前が《最上 仁也》という事だ。
 最上は日中軍総大将の名前である。

 しかし隊員たちは偶然に過ぎないと話す。
 だって20万を超える兵士たちの総大将が、たった1人で夜襲をかけてくるわけがないからである。


「花菱っ! これって大和桃源教みたいな奴か?」

「分からん……」


 俺は大和桃源教と何か関係があるのかと聞いた。
 だが武神・蘇芳なんて聞いたことが無いと答える、
 しかし大和桃源教のように、カルト宗教のようなモノが存在しているはずだとも考えている。
 これだけの力があるという事は、この男が崇拝している武神と大和桃源教の武闘派と同格と考えられる。

 しかしそんな人間が存在するわけがない。
 大和桃源教の剣術は、呼吸や古武術を取り入れた人智を超えた剣術なはずである。
 だが最上から出ている気配は、明らかに神自身と言っても過言ではない感じがしている。
 コイツが本物の武神の使徒だとするならば、ここで戦うのは危険が過ぎるのではないかと花菱は思う。
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