日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

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第4章・郡山市の戦い 編

096:良い奴だった

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096:良い奴だった
 再集結し始めた月虎隊の人間たちは、俺の到着を待っているのである。
 しかし本当に智と正に任せて来て良かったのかと、集まっている人間たちで話している。
 すると「正伍長だっ! 正伍長が戻ったぞ!」と聞こえてきて伍長たちは集まる。
 正は仲野伍長に抱き抱えられており、その後ろには田邑伍長が花菱を抱えていた。


「た 田邑たち!? 一体どうして正と………」

「ちょっと待て!? 隊長と智がいねぇぞ!」

『なにっ!?』


 どうして正が田邑たちといるのかと困惑しながら、そもそも俺と智の姿がない事に伍長たちは驚く。


「追っ手を騙す為に、正が囮になったらしい。隊長を追ってた俺たちも囮に騙されて瀕死の正と合流したんだ。そこから俺らは日中兵に追われたが、花菱が殿になって無茶をしてくれた………」

「もう下せ、自分で歩ける」


 田邑伍長は自分が正たちと会った理由を話すと、花菱は自分で歩けるようになったと言って下りる。
 そしてその話を聞いた茶沖伍長は「って事は、隊長を守ってるのは智だけか………」と心配する。


「兄ちゃんなら……大丈夫だ」

「正っ!? 目を覚ましたのか!」

「兄ちゃんは頼りになる。ただ矢の傷で動けなくなってるだけだ………捜索隊を出してくれ、2人が向かった場所は大体分かる。俺が先導するから………」


 正は自分が先導をするから捜索隊を出すようにいう。
 そうなったら仕方ないと茶沖伍長たちは、もう一走りしに行くぞと言って捜索隊を編成する。
 武器と水、あるのならば食料も持つようにいう。
 そして怪我人を連れていくわけにはいかないので、怪我人は置いていくというが「怪我人じゃないやつなんていませんよ」と声が飛んでくる。


「黒巾族も何人か連れていくぞ。山ん中だったら、アイツらは頼りになるからな」

「その必要は無い」


 矢沼伍長は黒巾族も連れて行った方が良いと言った瞬間、西塔伍長は必要ないという。
 その言葉にどういう事かと伍長たちが聞く。
 すると西塔伍長は「隊長が帰還された」という。
 月虎隊の人間たちは「なに!?」と言って指を指した方を見てみると、智を背負っている俺が現れた。


「やっぱり生きてやがったか!」

「さすがはウチの大将だな!」


 月虎隊のメンバーは俺に駆け寄ってくる。
 そのまま智を抱えるのを変わるというが、俺は「いい俺が運ぶ」と言って断る。
 すると少し離れたところから見ている花菱は、その異変に気がついたのである。
 花菱以外の人間たちは気づいておらず、正がフラフラになりながら「よく戻ったな」と労ってくれる。
 その言葉に俺は胸が締め付けられる想いだった。
 俺は「正、すまねぇ……」と言って、智を地面に静かに寝かせてあげるのである。

 俺は月虎隊の人間たちに、一体何があったのかという説明を全て行なった。
 フラフラになりながら正は智の傍に座る。
 そして同じ村の出身者たちは、声を出しながら涙を流していて、伍長たちも顔を顰めている。
 俺は自分を守るせいで智が亡くなってしまい申し訳ないと、正に謝罪をするのである。


「へっ何で隊長が謝るんだよ。お前らも泣くんじゃねぇよ………泣く事はねぇ、兄ちゃんはやり遂げたんだ。立派に自分の役割をやりきったんだ」


 正は泣いている人間たちに、泣く必要は無いと落ち着いた声で言うのである。
 この智は俺を守るという役割を完璧にやりきった。
 だからこそ涙はいらないのだと正はいう。


「こういう時は笑って褒めてやるんだよ………よく頑張ったなってな」


 正は震える声を、どうにか抑えながら言っているのであるが涙が止まらなくなるのである。
 そのまま智の亡骸を抱き抱えるのである。

 俺は気持ちを整理する為、少し離れた丘の上に行く。
 そこには花菱と水城も同行する。
 俺は頭を抱えて黙り込んでいると、水城が場の空気を変える為に喋り始める。


「正くん、よくあの一撃を喰らって死ななかったのね」

「あれは気を上手く使って内部から壊す技だ。大和桃源教にも同じような技がある」


 正は俺を守る為に盾を構えた際、最上の一撃を喰らっているのである。
 それなのによく生きていると水城は言った。
 そしてあの技は、かなり危険なものなのだと花菱が言って、自分たちの技にも似たものがあるとも言う。


「最上……アイツは一体何なんだ? あの現実味の無い強さは………神の使徒ってつってたよな? 本当に人間じゃないんじゃ無いか?」

「バカな……人に決まってるだろ」


 俺は最上の現実味の無い強さ的に、あの最上という人間は本当に人間なのかと疑ってしまう。
 しかしそれは花菱たちも否定する。
 人間じゃないわけがないのだという。


「ただあの男はある種の………我求者だ」

「我求者? なんだそりゃ?」


 花菱が口に出した我求者という言葉に疑問を持った。
 我求者とは一体どんなものなのかと。
 すると花菱は我求者についての説明を始める。

 我求者とは人里離れ、ひたすら自分と向き合いながら武力を極めようとする人間の事らしい。
 元を辿ればカルト宗教を起源とするものであり、個別で活動する場合や集団で活動する場合もあるという。
 花菱の剣術も元を辿れば、最上たちのように神に捧げる舞を行なう我求者である。
 しかし花菱たちの剣舞に対し、最上のような我求者は武力を徹底的に追求するというものだ。


「まぁ集団で活動していると言っても、その集団とは子供を村から攫って育て上げる」

「なにっ!? 攫って育て上げるだと………」


 全ては伝説とされている事で、それくらい最上のような人間は人前に現れないのである。
 しかしごく稀に人前に現れる事がある。
 それは道を極めた事を確認するためだ。


「我求者は修行者だ。奴に特殊な異質があったのは間違いないが、それが全てでは無い………あの強さは、タダで手に入れたものでは無い。想像を絶する鍛錬を積み重ねた結果と言える」


 花菱は確かに異質な才能を持ってはいるだろうが、それでも死ぬ気で取り組んだ鍛錬の積み重ねだという。
 そして花菱の考えではあるが、呼吸の制限が無いわけではなく、とてつもない長さなのだという。


「少し反省だな。元々まじめな性格では無かったが、村を出てから随分と鍛錬をサボっていた………国落としとの舞で、倒せなかった事が癪に触るな。半年の修行をしたら、今度は私が勝つ」

「半年もねぇぞ、花菱………この戦争で討ち取るぞ。奴が日中軍の大将である限り討たなきゃならねぇ」

「智は……良い奴だったな」


 俺たちが見据えている目線の先には、この戦争の大将首である最上が存在する。
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