gnikaerb

祜ヰ

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気付かぬ者

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9月  夏休みが終わって学校が始まった。憂鬱で仕方が無いけど、友だちとまた会うのが楽しみだ。

10月  高校生活最後の体育祭で1歩届かずに準優勝で終わった。それでもひとつになった気がして、負けた悔しさは無かった。

11月  今度は文化祭のし物で総合優勝した。有志のバンド演奏も盛り上がって思い出が増えた。行きたかった音楽大学への進学も決まった。

12月  文化祭の時に出来た彼女と、人生で初めて友だち以外とクリスマスを過ごした。今までの冬と違い何故か温かかった。

1月  新年と同時にまた学校が始まった。変わった事と言えばお昼ご飯を彼女と食べる様になったことくらいだった。それと学校が嫌じゃなくなった事。

2月卒業式に向けての準備が始まった。少しずつ湧いてくる実感と、歳下の彼女と離れてしまう辛さ。

3月  卒業式で全校生徒に見送られて、いよいよ彼女とも離れ離れになった僕は、進学先の大学がある県へ引っ越した。新しい環境を楽しみながら、家族の居ない寂しさも少しだけ分かった。

4月  大学生活開始と共に体調を崩して周りに少しだけ置いてかれた。クラスの端で猫背を誤魔化すように人に隠れながら授業を受け続けた。

5月  彼女からの連絡が途絶えた。既読も付かなくなってSNSもブロックされていた。一晩寝たらもうどうでも良くなっていて、夜に出歩いては道の目立たない所でギターを無心で弾き続けた。

6月  学校にも行かなくなった頃、いつもの場所でギターを弾いていると、同じ大学の生徒だと名乗る女性が現れた。その人に誘われて組んだバンドが楽しくてまた学校に行き始めた。

7月  バンドを組むきっかけとなった女性と付き合い始めた、明るくて誰とでも分け隔てなく接する彼女が誇らしかった。彼女のお陰で成績も戻り、何とか日常を取り戻した。

8月  世界に光の雨が降り注いだ
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