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呪いの指輪かっっ

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~シェリル~

あまりの美味しさにお茶に夢中になってしまった。
いかんいかん、指輪を頼みに来たんだっけ。

アシュレイさんに差し出されたカタログを見る。

「シェリルはどんなのが良いの?」
「う~ん・・あ、こんなのとかどう?」

カタログから指差したのは、少し湾曲した、極々シンプルなデザイン。
小さい石が埋め込まれた物だった。

「地味じゃない?」
「だって、お揃いにしたいし、一生外さないんでしょう。このくらいシンプルなのが良いよ」 
「シェリル・・・」

アシュレイさんは感極まったように呟くと、キュウと抱きしめてきた。
うわっ!ちょっと、みんなもいるのに、どうしたっっ。

「シェリルがそんな風に思ってくれてるなんて思わなくて、嬉しい」
「付けたり外したりしたら無くしそうでさ、私の場合。それに元々ゴテゴテしたデザインは好きじゃないし」
「あ、それはあるね」

急にスンとしてわたしを離す。何だい、もう。
仕事の時は目立つアクセサリーは出来ないし、私は元々興味も無いんだけど、同僚には普段できないからこそ、プライベートでは付けたいって人もいる。

アルスさんがうちらを見て笑いながら言った。

「うちの妻も同じようなこと言ってましたよ」
「ユーリも言ってた。異世界ではそれが普通らしいな」

ほら、といってクリストファーさんが芸術品みたいな左手を見せる。
本当だ、シンプルな指輪が光っていた。
良いな、そんな感じでずっと付けていたい。
アシュレイさんも、ほぉぉ、と感心していた。

「じゃあ、うちもそうしよっか」
「うん!」

クリストファーさんがそのデザインを書き留めた。

「じゃあ、デザインはこれで、石はお互いの瞳の色を入れれば良いよな。で、

そう言いながらこちらを見た。
ん?付けるとは?
思わずアシュレイさんを振り返る。

「クリストファーに指輪を頼んだわけは、このためなんだよ。色々とオプションで魔術を付与してもらおうと思って。
自分でも出来るけど、どうせなら、史上最強の魔術師に付与してもらいたいだろ」

なるほど!アクセサリーというより魔道具として使える、というわけか。
私が感心していると、アシュレイさんがクリストファーさんに色々と注文をつけた。

「そうだな~。まず防御に特化して欲しい。シェリルは騎士だから、鉄壁の防御。あとはおすすめはある?」
「攻撃を跳ね返すのもいいぞ。攻撃は最大の防御だ。あと毒無効とか魔術による状態異常無効とかもあるけど」
「それ全部つけて」

アシュレイさん、痺れ薬食らったばかりだからね。大事大事。

「それと、お互いの場所がわかるのとかもあるけど」
「良いね」

ギョッとした。
やましいことは何もないけど、常にお互いの場所がわかるって怖くない? 

「ちょっ、アシュレイさん、もう良いですよ。色々つけ過ぎじゃないですか?」
「そう?付けられるだけ付けたいんだけど」
「必要になったらまた付ければ良いじゃないですか。付けすぎて呪いの指輪みたいになってますよ」
「ははは。そうだよ、アシュレイ。必要なのがあったらまた付けるよ」

クリストファーさんが笑ってそう言ってくれた。
ほぅ。指輪は石を選定して一月くらいかかるらしい。

さて、一休みしようか、っていう時だった。
コンコン、と軽いノックの音がする。
クリストファーさんがサッと立ち上がって、すぐにドアを開けた。

入って来たのは、栗色の髪に琥珀色の瞳の小柄で妖精の様な人とプラチナブロンドに紫の瞳の女の子と琥珀色の瞳の男の子だった。
も、もしやこの人たちは・・・

「シェリルさん、妻のユーリと娘のヴァレリーと息子のレイモンドだよ。2歳と1歳なんだ」
「は、初めまして、シェリルです」
「初めまして~、ユーリです。ミランダさんに似て、スッゴイ美人。良かったね~、アシュレイさん」

ニッコリ笑う。
渡り人って聞いて、ちょっと緊張したけど、気さくな人だ。
確か、クリストファーさんと同じ歳だから私より5歳上のはずだけど、全然見えない。
むしろ、年下に見える。凄いな、渡り人って・・・
そして、子供たちぃぃぃっっ!天使!天~使ぃぃ。
二人ともクリストファーさんに何処となく似てる。
めちゃくちゃ可愛いっっっ!!

「こんにちは」

屈んで目線を合わせて挨拶すると、ヴァレリーちゃんがニッコリした。

「こんにちは。お姉さんはアシュレイと結婚するの?ヴァルはね、ヴァンサンと結婚するのっっ」

うおっ!さすが女の子!小さくてもしっかりしてる。
ん?ヴァンサン?って、うちの甥っ子の?
凄いな、さすがグラントさんの子。
もう既に女子を虜にしている。末恐ろしいな・・・

「ヴァレリー、ついこの間まで、パパが一番って言ってたじゃないかっっ」

急にクリストファーさんが突っ込んで来た。

「だってパパはママのだもん。ヴァルはヴァンサンがカッコよくて好き~」
「えぇぇ」

クリストファーさんはショックを受けていた。
はは、凄い美形でも娘には敵わないな。

「いつもこうなんだよ。でもヴァンサン君は既に男前だもんね~。わかるわ」

慣れてるのか、ユーリさんは気にもとめない。
グラントさんとクリストファーさんは仲が良く、子供たちの年も近いのでよく遊びに行くらしい。

静かにジーっと様子を見てたレイモンド君が、ちょこちょことやって来て私の服をくいくいと引いた。

「ねえねぇ、ヴィアとヒューは?」

大きな琥珀色の瞳で見つめられ、あまりの可愛さにクラクラする。

「今日はね、パパさんにお仕事の依頼に来たから、一緒に来てないんだよ」
「そっかぁ・・・」

可愛らい顔を曇らせてしまった。
うぅ、罪悪感。

「次来る時一緒に来れるか聞いてみるね」

そう言うと、ちょっとニッコリ笑った頷いてくれた。
何て良い子。

「私もお茶もらって良いかな?アルスさん」
「かしこまりました。シェリルさま、おかわりは?」
「ぜひ!お願いします」

勢い込んで言ったら、ユーリさんがあははと笑った。

「わかるー。アルスさんのお茶、そのくらい美味しいよね」

うんうん。
すっかりアルスさんのお茶の大ファンになってしまった。
心の師匠。このくらい美味しく淹れられるよう私も精進しよう。





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