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蓮司という男

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久条蓮司は28歳。
185cmの長身、母方の祖母がフランス人のため、ミルクチョコレート色の髪、琥珀色の瞳、繊細な鼻梁に透き通る様に白い肌。
キラキラするように美しい男だった。

街を歩けば振り返る人が後を絶たない。
彼は当然、モテる。モテまくる。
なのに・・・



「蒼司さん、私来たんで、もう大丈夫ですよ」
「雅ちゃん、相変わらず冷たいね。もうちょっと、話とかしない?」
「何で?」

ガックリ。
そう、雅ちゃんこと藤堂 雅23歳。
彼の妹の悠里の中学時代からの親友。

彼女は本当に蒼司に興味がない。
今日も悠里が雅と買い物に行くというから、待ち合わせ場所のカフェまで送り届け、雅が来るまで、悠里と待っていたのだ。

で、雅は到着した途端に追い出そうとする。
彼女は追い出すつもりはないのかもしれない。
友達と遊ぶのに兄がいるのは何で?と、いうことなのだろう。

あーあ。雅ちゃん意識してもらうには、どうすれば良いのかな・・・
蒼司は雅が好きだった。

いつからだろう。
雅を特別だと思う様になったのは。


「雅ちゃん、危ないよ」
「あ、すみません、蒼司さん」

彼女は時々、どこかをじっと見つめて考え込む時がある。
自転車が来たから、思わず彼女を引き寄せた。
深い漆黒の瞳に見つめられて、思わずドキッとした。
彼女の瞳は澄んだ深い泉を覗き込んだ様な不思議な色合いをしている。
ずっと見ていたいような。

「?」
「あ、ごめん」

パッと手を離す。

「じゃあ、また」
「じゃあね、雅ちゃん」

艶やかな長い黒髪を翻して去って行く。
いつ見ても、サラサラの綺麗な髪。
真っ直ぐな背。
どこにいても一番に見つけるんだよな。
背が高いからかな。



「それ、好きだからじゃね」

兄の蓮司がサラッと言った。

「は?だって雅ちゃんだぞ」
「別におかしくないだろ。雅ちゃん、美人だし、性格良いし」

イヤイヤまさか。
蒼司が首を捻って考えてるのをみて

「悠里が雅ちゃん凄いモテるって聞いたぞ。あんまり鈍感だと、誰かに持ってかれるぞ」

自分の気持ちに気づいてない様子の蒼司に苦笑しながら蓮司が忠告した。
そりゃあんな良い子、いないもんな。
誰かと付き合う?雅ちゃんが?

そこまで考えて、胸がモヤッとした。
今は仕事が楽しいと、言ってた雅。
じゃあ忙しくなくなったら?と考えて、あれ?やっぱり好きなのかな?とぼんやりと意識してし出したのだった。





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