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1巻
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しおりを挟む「怖がらなくていい。……こんなところで何をしているのだ?」
穏やかな口調に、少しだけライラの気持ちが落ち着く。どうやらこの男は、今までライラに触れようとしてきた男たちとは違うようだ。
「み……水浴びをしておりました」
「こんな時間にか?」
地下室に閉じ込められている状態では夜にしか出て来られない。けれどもそれを男に伝えるわけにはいかず、ライラは背を向けたままこくりと頷いた。
「お前は、この街に住む娘か」
「は、はい」
「この数日街を見て回ったが、お前を見かけることはなかったように思う」
どうしてそんなこと聞くのだろう。ちらりと肩越しに振り返ってみると、男は上質そうなマントに身を包んでいるのがわかった。
もしかしたら、国王の家臣かもしれない。
『いいか! 明日から俺がいいと言うまで、絶対にそこから出てくるなよ! お前のような気味の悪い娘を陛下のお目にかけるわけにはいかないからな!』
ふいにブルーノから言われた言葉が頭に浮かび、ライラはすくみ上がった。絶対に出てくるなと言われた言いつけを破ったどころか、お客様の目に触れてしまった――。これがブルーノに知られたら、何をされるかわからない。
「あ、あの……お願いです。どうか、何も言わずにここから立ち去っていただけないでしょうか」
ライラは震えながら口を開いた。男の目的はわからないが、彼はたぶん偶然通りかかっただけだろう。優しげな口調と高貴そうな雰囲気から、頼めばきっとライラの願いをきいてくれるような気がした。
「どうしてだ? ……もっとお前と、話をするわけにはいかないか」
思いがけない言葉を返され、ライラは凍り付いた。それと同時に、低くて魅惑的な声に胸がぞくりと震える。
「わ、私は……あなた様の前に出られるような身分の者ではないのです。どうかどうか、見なかったことにしてくださいませ……」
絞り出すように紡いだ言葉はか細く、闇夜に消えていく。できれば何も言わずに立ち去ってほしいのに、男の足はぴくりともその場から動かない。
「お前は、何をそんなに怯えているのだ?」
ライラは一刻も早く男が立ち去ってくれることを願い、無言でふるふると首を振る。すると、男が再び口を開いた。
「わかった。とにかく……そんなに冷たい川の水に浸かっていては身体に障る。早く、川から上がれ」
初対面の男性に、身体を労られた経験などない。恐怖とは全く違う胸の鼓動に、ライラはどうしていいかわからなくなった。
「あの……上がりたくても、私の服はあなた様の足元に置いてあるのです」
正直にそう言うと、男がキョロキョロと辺りを見渡している気配がした。
「わかった、それならしばらく後ろを向いていよう」
「え……」
そのまま立ち去ってくれたらいいのに、どうやら男にその気はないらしい。
恐る恐る振り返ってみると、確かに男はライラに背を向けて腕組みをして立っている。ライラはしばし迷ったが、さっさと着替えを済ませてしまおうと決めてザバリと川から上がった。手早く脱ぎ捨てた衣服に駆け寄り、男が後ろを向いていることを確認しながら急いで衣服に袖を通す。
男は近くで見るとかなりの長身だった。肩幅も広く、鍛え上げられているのが一目でわかるほど逞しい身体つきをしている。それに、後ろ姿からも高貴な雰囲気が漂ってくるようだ。
傍にいると、なぜか振り返り自分を見つめてほしいと願ってしまう。男性にこんな感情を抱くのは初めてで、ライラはいつの間にか着替えの手を止め、ぼうっと男の後ろ姿を見つめていた。
(いけない、早く着替えなくては……)
そう思って簡素な使用人服の前ボタンを留めようとしたのと、男が振り返ったのは同時だった。
「えっ……!?」
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
ゆっくりとこちらを振り返った男は、呆然とした様子でライラを見つめている。フードから覗く深い緑色の瞳と目が合った瞬間、吸い寄せられるようにお互いが動けなくなった。数秒後、ハッと我に返ったのはライラが先だった。
「……っ!」
泣きたくなるくらいの羞恥を覚え、使用人服の前を手で押さえて走り出そうとした。
「待てっ」
男の横を走り抜けようとしたライラの細い腕を、男の手が力強く掴む。
彼の指がライラに触れた瞬間、身体にびりっと痺れるような感覚が走った。
(な、なに……?)
雷に打たれたような感覚に、思わず足を止める。その隙に男はライラをぐいっと引き寄せ、気づけば力強く抱きしめられていた。
肌に触れる温かい体温に、ライラはようやく自分の置かれた状況を理解した。
「はっ、離して……っ!」
必死に男の身体を押し返そうとするが、どんなに押してもびくともしない。それどころか、益々力を入れてライラの身体を抱きしめてくる。
(どうして、こんな……!?)
パニックに陥りながらも、ライラは必死に頭を働かせ力一杯抵抗した。
今まで、悪意を持った男性に触れられそうになったことは何度もある。だがその度に不思議な力が働いて守られてきた。こんな風に直接男性に触れられたのは、初めての経験だった。
なぜ自分はこの男に抱きしめられているのか。思いがけない事態に動転して、ライラの呼吸が荒くなる。それに気づいたのか、男の腕の力がほんの少しだけ緩んだ。
「落ち着け」
低い声が触れた身体から直接響いてきて、ライラの呼吸が段々と落ち着いていく。
初めて会ったはずなのに、どこか懐かしいような不思議な感覚がする。
どうして、この人の声はこんなに身体に沁みていくのだろう。
ライラが身体の動きを止めると、男は子供をあやすように彼女の背中をトントンと叩いた。
温かい身体に包まれ、気持ちが静まっていく。
この人は、一体誰だろう。
ライラは抱きしめられている状況も忘れ、顔を上げて男の顔を正面から見つめた。
フードに隠れてよく見えなかった顔も、この距離ならはっきりとわかる。
「あ…………」
驚きで、それ以上の言葉が続かなかった。
その男の顔は、マーガレットの部屋で見かけた肖像画にそっくりだったのだ。
口を開き凝視するライラに、男がふっと目を細めた。
「その顔は……俺が誰だかわかったか」
そう言って男は、かぶっていたフードをゆっくりと外した。月明かりに、輝くばかりの見事な金髪が現れる。
「サ、サマルド国王、アレン様っ!!」
ライラはあまりのことに再びパニックを起こしかけた。そんなライラの顎を掴み上を向かせると、アレンは静かに顔を近づけてきた。
目を見開いたライラのすぐ近くに、アレンの顔が迫る。何かを確認するようにじっくりとライラを見つめるアレンの表情が、緩やかに変化していった。
頬を掴まれ視線が逸らせないライラには、その変化がはっきりと見てとれた。
ザラが自分を見つめる時と同じようにも、全く違うようにも思える眼差し。親愛よりももっと深いものが込められた視線に、ライラの頬が自然と赤味を帯びてくる。
「あ、あの……」
とくとくとライラの心臓の音が速くなる。耐え切れずに口を開けば、アレンは困ったように微笑んだ。
「初対面の女性にこんなことをすべきではないとわかっているのだが……なぜだか、離せないな」
遠目でも綺麗だと思ったアレンの緑の瞳は、近くで見るとさらに宝石のようにきらめいていた。ぼんやりとその瞳を見つめていると、アレンが目を細めた。
「美しい瞳だな。月の光が反射して……まるでサファイアのようだ。吸い込まれそうで、目が離せない」
自分のことを褒められていると知って、さらに顔が熱くなる。アレンの腕の中で心地よさを覚えながらも、間近で見つめられているのが恥ずかしくてライラは思わず身じろぎをした。
アレンは逃がすまいと片腕に力を入れ、ライラの顎を掴んでいた指を頬へと移動させる。そして大きな手の平でふわりと頬を包んだかと思うと、ゆっくりと唇を近づけてきた。
初めて出会った人と、こんなことをしていいはずがない。
頭でそう理解していても、ライラの身体は全く動かなかった。
吸い寄せられるように唇が近づき、ライラは自然と瞼を閉じる。アレンの唇が軽く触れた途端、ライラの身体がぶわりと沸騰したみたいに熱くなった。
身体から何かが剥がれ落ちていく。そんな感覚がしたが、ライラにはそれが何かわからない。
ただ、柔らかく熱い唇の感触に全身が蕩けそうだった。
一度離れた唇が再びゆっくり触れてきて、ライラの全身がどくんと鼓動する。
アレンは、瞼を開いてじっとライラを見つめてきた。
鮮やかな緑の瞳に、蕩けたような表情の自分が映っている。そこに映るライラの髪は見慣れた黒色ではなかったが、初めての経験に戸惑う彼女に気づく余裕はなかった。
アレンは一瞬驚いた顔をしたが、すぐにそれは納得の表情へと変わっていく。その顔は、揺るぎない自信に満ちていた。
「……見つけたぞ、やっと」
そう呟きながら再び触れてきた唇は、今度はすぐに離れることはなかった。
触れているのは唇だけなのに、そこから全身に熱が広がっていくようだ。川の水に浸かり冷えていたはずの身体は、蕩けそうなほどに熱くなっていた。
長いような一瞬の口付けが終わったかと思えば、アレンはすぐにライラへのキスを再開する。唇だけではなく、頬や瞼、顔中に何度も何度も優しく唇を落としていった。
「ふ、あ……」
頭がぼーっとしたライラは無意識に息をしようと唇を軽く開く。するとすかさずその唇に吸い付いてきたアレンが、ぬるりと熱い舌をライラの口内に差し込んできた。熱い舌に口内を撫で回され、背中がぞくぞくする。
アレンの舌は奥にすくんでいたライラの舌を捕えると、唾液をまとわりつかせるように舐め回して唇で吸い上げてくる。
熱くて、柔らかくて、気持ちがいい。
ライラは初めての感覚に溺れ、自分が何をしているのかわからなくなっていった。
ゆっくりと唇を離したアレンが、ライラの唇の端から零れた唾液をすする。
「んっ……陛、下……」
「アレンだ。そう呼べ」
「アレン、様……?」
たどたどしく名前を呼んだ瞬間、ライラはアレンによって樹の幹へと身体を押し付けられた。
「あ……っ!」
ただ羽織っていただけの使用人服の前がはだけ、真っ白いライラの身体が月明かりに晒される。隠そうとしても、腕を押さえられているためにそれもできない。
さらにそんなあられもない姿をアレンに間近から見られている。頭の先からつま先に向かって視線が降りていくのを感じ、ライラは羞恥で眩暈がしそうだった。
「美しい……陶器のように、滑らかだな」
アレンはうっとりとそう囁くと、吸い寄せられるようにライラの首筋に唇をつけた。
「あ!」
途端に、びくりと身体が震えてしまう。唇が何度か触れた後、今度は舌でぺろりと舐め上げられた。
「あ、あ……っ、陛下、なにを」
「アレンだと、言っているだろう?」
身体も声も震わせているライラとは対照的に、アレンは楽しくてたまらないといった表情をしている。
「あの川に辿り着いたのは、偶然なのか運命なのか……だが、そんなことさえ、お前に触れているとどうでもいいことのように思えてくるな」
アレンはライラの耳元で囁き、ふっと息を吹きかけてくる。
「……っ」
初めての感覚に、ライラは声にならない吐息をついた。
「ああ、甘い匂いがする」
どこか意地悪な響きを含む声に、ライラは困惑して涙目になる。すぐ傍にあるエメラルドグリーンの瞳を見つめると、アレンもまたじっくりとライラを見つめ返してきた。
「最初に見た時よりも、ずっと色が鮮やかになったようだ。お前の瞳の色は、元々何色だ?」
「え?」
こんなに傍で顔を覗き込まれているのに、どうしてそんなことを聞くのだろう。ライラは数回瞬きをした後に、おずおずと答えた。
「私の瞳の色は、ほとんど黒と言ってもいいほどの濃紺ですが……」
「なるほど。では、俺と出会ったことで変わったのだな」
アレンの言葉にきょとんとしたが、それもすぐに流されてしまった。なぜなら、彼が再びライラの身体に舌を這わせ始めたからだ。
「ま、待って……っ、あ、やぁ」
拒絶しなければと思うのに、身体の芯がふにゃりとしてしまって力が入らない。アレンの舌は首筋から上に上がり、ライラの耳朶を舐めて吸い上げる。
「ふぁ、んんっ」
鼻にかかった声を上げると、アレンが耳元でくすりと笑った。
「いい声だ」
低い声と息で耳をくすぐられたかと思うと、彼の舌が耳穴の中に差し込まれる。
熱い舌がぴちゃぴちゃと音を立てながらライラの耳を舐め、その感触と音にライラはたまらず声を上げた。
「や、ふ……っ、な、なに、んん……っ!」
ずっと屋敷で閉鎖的な生活を送ってきたライラは、十八歳にしては驚くほど性への知識が乏しい。使用人たちの話をぼんやりと聞くくらいしか、知識を得る機会がなかったのが大きな理由だ。
自分とは関係ないことだと思っていたので、時折漏れ聞こえてきた話もおぼろげにしか理解していない。具体的な行為となると、さっぱりだ。
アレンの指がライラの身体を撫で上げるごとに、身体は火照り甘い声が漏れる。
うっすらとしか理解していなかった男女の関係が、もしかしてこれなのかとライラはさらに顔を赤くした。
ライラの耳をしきりに舐めていたアレンは、大きな手の平をゆっくりとライラの胸に伸ばしてくる。細い身体の割に大きな胸は、興奮と羞恥でほんのり桃色に染まっている。まるで誘うみたいにふるりと揺れた膨らみを、アレンは持ち上げ両手で包み込んできた。
「あ、そ、そんな……っ」
温かい手が、弾力を楽しむようにやわやわと動く。なにが起こってるのか確かめるために自分の胸を見下ろしたライラは、アレンの骨ばった指が自分の柔肌に軽く食い込んでいるのを見てしまった。
大きな手が、我が物顔でライラの胸を弄ぶ。しかし膨らみをつぶすように揉まれても、手加減しているのか痛みはない。それどころか、胸の頂がぷっくりと立ち上がってきた。
「わかるか? 自分の変化が」
自分の胸を見下ろすライラに気づき、アレンが耳元で甘く囁く。そして見せつけるように、人差し指を胸の頂へと近づけていった。
「ん、ん……っ!」
指で胸の頂を軽く押されると、きゅうっと身体の芯が縮むような感覚がした。それは不思議と脚の付け根にある秘めた場所までも締め付け、ライラは咄嗟に唇を噛み締め背中をしならせた。それに気を良くしたのか、アレンは口の端を歪めながら少し力を強めて頂をさらに押し込んでくる。
「ふぁ……、あ、あ……っ」
身体を突き抜けるような刺激に、ライラは頬を赤く染め激しく首を振る。アレンはそんな彼女にそっと口付けると、今度は二本の指できゅっと頂を摘まんだ。
「いや……だめぇ」
「何がだめなんだ? こんなに気持ちよさそうな顔をしているのに」
アレンは強弱をつけながら、先端をこりこりと捻るように弄り始めた。触られているのは胸の先端なのに、なぜか身体の芯がどんどん熱くなっていく。自分の身体の反応がわからないまま、ライラは自然と腰をくねらせていた。
「もうここが動き始めている。……いやらしい身体だ」
いやらしい。
そんな言葉を言われたのはもちろん初めてで、ライラは恥ずかしくてたまらなくなった。
「ご、ごめんなさいっ……」
何かあった時にすぐに謝ってしまうのは、使用人としてのクセかもしれない。アレンは宥めるようにライラの頬に唇をつけた。
「謝るようなことではない。俺の言い方が悪かったな……」
アレンはそう言いながらライラの胸へと顔を近づけていく。そして赤い舌を唇から覗かせたかと思うと、そのまま頂をぺろりと舐めた。
「いや、そんなっ、あ、あああぁっ!」
既にコリコリと硬くなっていた頂を、熱い舌で何度も舐められる。
月の光に照らされ頂が唾液で濡れているのがはっきりとわかり、ライラはもう顔が熱くてどうにかなってしまいそうだった。
「お前の身体は、柔らかいな……」
ライラの胸に顔を埋めたまま、アレンがうっとりと呟く。愛撫を受けているのはライラなのに、なぜか彼までもが至福の表情をしている。
肖像画を一目見て心を奪われた人が、こんな風に自分の身体に触れてくるなんて――
それを意識した途端、足の付け根がじわりと熱を持ち、何かが滲み出してくるのがわかった。
まさか、こんな時に月のものでも始まってしまったのだろうか。慌てて開きかけていた脚を閉じようとしたら、なぜかそれをアレンに阻まれてしまった。ライラの脚と脚の間に、アレンの太腿が差し込まれる。
「お、おやめください……陛下の脚を、濡らしてしまいます」
普通の民の服のように見えても、傍で見ると上質な生地で作られているのは一目瞭然だ。そんな高価な服を汚してはいけないと、ライラはアレンの厚い胸板を必死に押した。
「どうしてだ?」
アレンはにやりと笑いながら、さらに際どいところまで脚を上げてこようとする。女性の身体のことを男性に告げるのは本当に恥ずかしくてたまらない。だが、彼の衣服を汚してしまうよりはずっとマシだと思い直し、ライラは恐る恐る口を開いた。
「あ、あの……その、月のものが来てしまったようなのです。そんなはずないのに……。ですから、あの、服を汚してしまいますから……っ」
恥ずかしさでどうにかなりそうなのを堪えながら、それでもなんとか状況を告げた。
ところがアレンは、一瞬ぽかんとした後にくっくっと笑い出す。
「な……そんな、何が可笑しいのですか!?」
いくらなんでも、笑うなんてひどすぎる。ライラが目に涙をためてそう抗議をすると、アレンは相変わらず笑いながらライラの目尻にちゅっとキスをした。
「ああ、悪い。お前、こういうことには不慣れか?」
「こういうことって……」
何を指しているのだろうと首を傾げてみれば、すかさずアレンが胸の先端をぺろりと舐め上げる。
「こういう、男女の交わりについてだ」
「し、知りません! こんなこと……他の人にだってされたことなどありません!」
なんてことを言うのだろう。ライラは怒りのあまり、思わずそう言い返してしまう。憤慨するライラとは逆に、アレンはなんだか嬉しそうな顔をしていた。
「それはよかった。この身体に触れるのが、後にも先にも俺だけだとわかってほっとしたぞ」
「何をおっしゃって……んっ!」
ライラが全て言い終わる前に、アレンの手がライラの内腿に触れた。ぞくりとした感覚を覚えたのもつかの間、その手がするりと上がりライラの繁みを撫でる。
「おっ、おやめください……お願いですからっ」
「月のものではないことを、教えてやろう」
不敵に笑ったアレンは、必死に身をよじるライラを難なく押さえ込むと繁みの周りを撫で始めた。くすぐったさに気を取られていると、その手はもっと奥へ進もうとする。
「え、やっ、だめぇっ!」
慌ててアレンを止めようと手を伸ばしたら、逆にその手を掴まれてしまった。
「じっとしていろ」
アレンはライラの両手を片手で掴むと、そのまま頭上でひとまとめにしてしまう。
逞しい身体を密着させてライラの華奢な身体を樹の幹に押さえつけながら、アレンの指は繁みを分け入りライラの秘めたる部分に近づいていった。
何をされるのかと顔を強張らせるライラに、アレンの唇が落ちてくる。
「んむっ……ん、あ」
強引な手とはまるで違う、優しい口付けだ。温かい唇がライラの唇を挟み、舌でちろりと舐めてから吸い上げる。
唇を合わせるだけなのに、なぜこんなに気持ちがよくなってしまうのだろう。
次第に強張った身体の力が緩んでいく。するとそれを見計らったように、アレンの指が秘所を撫でた。
「あ、ん……っ!」
何かが流れ出る感触と同時に、腰が痺れるような甘い感覚が押し寄せてきた。さらに、アレンの指が秘所を擦る度に、ぴちゃぴちゃと水音がする。
「あ……ふぁ、な、に……?」
キスの合間にそう呟くと、アレンは唇を離してライラの瞳を見つめながら小声で囁いた。
「これは、お前が気持ちよくなっている証拠だ」
(気持ちいい、証拠……?)
必死に考えようとするが、頭が回らない。必死に身をよじろうとしていると、アレンはライラの秘所からすっと指を離した。
「ほら、見てみろ」
何度も秘所を往復していた指先は、透明のとろりとした液体で濡れ光っている。月のものではないとわかってほっとしたものの、それではどうしてこんなに濡れているのだろうと疑問が浮かぶ。
ライラに、この手の知識が乏しいことを知ったのだろう。アレンは濡れた指先を見せつけるようにしながら、面白そうに口を開いた。
「お前の身体が俺を受け入れるために、こうやって蜜を溢れさせて濡らしているのだ」
「俺をって……何をでしょうか……?」
「それは、近々身体で教えてやろう」
アレンはそう言ったかと思うと、濡れた指先に赤い舌を這わせた。
「あ……そ、そんな」
ライラから流れ出した蜜を、アレンは妖しい表情で舐め上げる。
よくわからないけれど、なんだかとてもいけないことをしているような気がする。
真っ赤になりながらもライラがその光景から目が離せないでいると、アレンの指が再び秘所に伸ばされた。
ライラは、自分を押さえつけているアレンを、間近で見上げる。彼から漂う男の匂いを意識した途端、身体の奥から蜜が湧き出してきた。
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