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いち
chapter13 何もわかってない?
しおりを挟む「でね? 私の婚約者殿が、とっても可愛いんだよ」
「ほぅそうか。………ところでおまえ、ここがどこだかわかるか?」
「さて、君しか目に入らないなぁ」
「俺主催のクラブだっ! 貴族の未成年が来るところじゃねえっ!」
王宮訪問から数日。アビゲールは情報交換のため旧友のもとを訪れていた。
ちなみに場所はアビゲールの趣味ではない。実家の警護状況的に抜け出せる夜、たまたま旧友がクラブを訪れることを知っていたので突撃しただけだ。
「………君って意外と、分別のある大人だよなぁ。反社のくせに」
「うるせえっ! だいたい惚気話を俺のところへわざわざ持ってくるんじゃねーよっ!」
突然現れたアビゲールへの怒り……じゃなくて緊張を解すため、手始めに自分の近状を話したのだが、不評だったようでなぜか怒鳴られている。
「まぁまぁ。私、中身はもういい年のオジサンだし」
「見た目は違うだろ………確かに口調は昔のおまえのまんまだが」
「君と話すと、つい戻っちゃうんだよなあ」
いけないわね、と口調を戻すと、旧友は鳥肌が立つからヤメロと言った。勝手なヤツである。
「あ、ところで………君に言われた件、私なりに探ってみたけど」
「あー、王族について裏から調べてくれって手紙で頼んだな。どうやったんだ?」
「うん。アルフレッド・ビルマンに恋してるって王子に言ってみた」
「なるほどな。それを餌に引き寄せるってわけか」
「うん、あの場には使用人がたくさんいたし、誰かが良からぬ噂を立ててくれたと思うよ。実際、もう何回か刺客さんが来てくれてるし、上々だよ」
「そっか、なんたって公爵令嬢の好きな奴が、よりによって″悪帝″だってんだもんな。まるで生きてるみたいな匂わせにもなるし、とくに王族のなかには不穏さに引き寄せられて動くやつも………って、は?」
旧友が、途中でなぜかギシリと固まった。
「王子に? 昔のおまえが好きだって言ったのか?」
「そうだよ」
「………俺の勘違いか? おまえは王子に惚れてるって思ってたんだが」
「勘違いじゃないよ。私はあの子に一目惚れしたんだってば」
「………じゃあなんでそんなことになってんだよ」
物分かりのいまいち悪い旧友に企みを話すと、とうとう彼は疲れたようにうなだれた。
「どうした?」
「……あぁ悪い。おまえと話すの久しぶりだからかな………なんか目眩が」
「大丈夫?」
「うん…………つーか、おまえさ」
アホか!
と前触れなく叫ぶ。
「なにが? 私としては上手く立ち回ったと思ってるけど。同情もされたし、これで心置きなく彼の懐に入り込める」
「発想がこえーよ! いいかもう一度言うぞ、おまえはアホだ。何もわかってない。それじゃ一生両想いにはなれねーじゃねーか」
「何か問題が?」
「あー………(おまえがイカれてるやつだって忘れてたぜ)」
「なんて?」
「うわっ、顔こえーよ! てかそれよりさ………いいか直球で聞くぞ?」
「なんだよ」
「想いは伝えないが、懐かれたい。なぁ、おまえがしているのは本当に恋なのか?」
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