前世で悪帝と呼ばれた令嬢は、婚約者の王子に一目惚れをする。

夜のトラフグ

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いち

chapter14 悔い

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(※他者視点)


「ねぇアニキー。あの女の人との付き合い、いつまで続けるんすか?」


アビゲールが帰ったあと、席をはずしてた部下が戻ってきてそんなことを聞いた。

いつまで、か。それを聞きたいのは俺の方なんだが。


『私はね。君のそういう優しくて真面目なところ、ずっとすごいなって思ってたよ』 


……正直、予想外のことばかりだ。生まれ変わりは勿論、死んで尚あいつとつるんでいることも。どうしてこうなったのか。

『でも私は狡い方法しかわからないから。上手く利用してやることしかできない』

あぁいっそあんなやつ、もう一度やらかして殺されればいいんだ。

『簡単なことだよ。私は彼に好かれたい。それを目的に死力を尽くしてるだけのことだ』

『そのためなら情報戦に負けないために反目した友人を訪ねることもできるし、手札のために命をドブに晒すことだってできる』

『恋かなんて知るか。私は私の業深さを知っているだけだ』

……そんで今度は魂を綺麗に洗われて、来世では馬鹿みたいに幸せになればいいんだ。


「……アニキ?」

部下の不安そうな声を聞いて、我に返った。

「………ああ」

あいつはろくでもないヤツだ。それは前世でも、死んでも変わらなかった。
それでも学生時代はもうちっと真っ当で、素直だった気がする。変わったのは、即位の直前。あいつが兄王を殺したとき。


『僕はわかったよ。僕の人生は、不幸になるか不幸にするかの二択しかない』

『ならよりたくさんの人を巻き込んで、みんなみんな、不幸にしてやる………』


あそこで失望するべきではなかった。
あいつの下を去るべきではなかった。

死体を積み上げて血溜まりで笑うあいつの胸倉をつかんで、なんてことをしたんだと殴り飛ばせば良かった。俺くらいあのイカれた″悪帝″を、止めることができれば良かったんだ。

それができるのは、おそらく俺だけだった。

………俺がこんなことを思ってると知れば、あいつはまた『甘いなあ』とでも抜かすんだろうが。


「まあ………俺くらい、見ててやらないとな」

今度こそ。
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