15 / 37
いち
SS 完璧なデート(1)
しおりを挟む
「殿下。私、室内での遊戯に飽きました。外に遊びに行きません?」
もはや数えるのもバカらしくなるほど負かした王子へ、アビゲールはあっけらかんとそう言った。
「………あのねえ」
はあ、と王子はため息をつく。このところ、王子は素を見せてくれることが増えた。良い兆候だとアビゲールは思う。
「忘れちゃったのかも知れないけど、一応僕も君も要人なんだよ? そんな思い付きでフラフラ遊び回れる身分じゃなくてね?」
「大丈夫、私、体術と剣術には一日の長があります。護衛と諜報には是非お気軽にご利用ください」
「遊びに行きたいからってデタラメ言っちゃダメだよ? 何で公爵令嬢に体術と剣術の心得があるんだ」
「昔とった杵柄ですね」
「過去どんなことがあったんだ………」
悪帝やってました。
「とにかく。遊びに行くのは良いとして、そんな思い付きで動くことはできないんだよ。だから、もしいきたいのならきちんと申請して計画を……」
「行ってくれるのですか!?」
アビゲールは目を輝かせた。
「なるほど、なるほど。許可をして頂けなかったのは、『ぷらん』が未熟だったせいですのね!」
「……は? いや………」
「そーゆーことでしたら、お任せください。このアビゲール、殿下のために完璧な『でーとぷらん』を立案してみせますわ!」
「………へっ? で、デート!?」
「少々お待ちください、完璧なエスコートをしてさしあげるためにはあと五日………いや三日! 三日だけください!」
「えっ、ちょっ」
アビゲール。君はエスコートされる側ではないか。自分が今女で、王子が男であることを完全に忘れてはいまいか。
そんな的確なツッコミをかませる人間は、この場にはいなかった。アビゲールはハンドルを失った車体のように暴走し、加速して、その勢いのまま部屋を出ていった。
「言質はとりましたよ! では、失礼しますわ!!」
ポカーンとしてる間に取り残されたのは、使用人や王子の護衛、そして王子本人だった。
「な、なにが起こるんだよ………三日後に」
ポツンと王子の声が響いた。
もはや数えるのもバカらしくなるほど負かした王子へ、アビゲールはあっけらかんとそう言った。
「………あのねえ」
はあ、と王子はため息をつく。このところ、王子は素を見せてくれることが増えた。良い兆候だとアビゲールは思う。
「忘れちゃったのかも知れないけど、一応僕も君も要人なんだよ? そんな思い付きでフラフラ遊び回れる身分じゃなくてね?」
「大丈夫、私、体術と剣術には一日の長があります。護衛と諜報には是非お気軽にご利用ください」
「遊びに行きたいからってデタラメ言っちゃダメだよ? 何で公爵令嬢に体術と剣術の心得があるんだ」
「昔とった杵柄ですね」
「過去どんなことがあったんだ………」
悪帝やってました。
「とにかく。遊びに行くのは良いとして、そんな思い付きで動くことはできないんだよ。だから、もしいきたいのならきちんと申請して計画を……」
「行ってくれるのですか!?」
アビゲールは目を輝かせた。
「なるほど、なるほど。許可をして頂けなかったのは、『ぷらん』が未熟だったせいですのね!」
「……は? いや………」
「そーゆーことでしたら、お任せください。このアビゲール、殿下のために完璧な『でーとぷらん』を立案してみせますわ!」
「………へっ? で、デート!?」
「少々お待ちください、完璧なエスコートをしてさしあげるためにはあと五日………いや三日! 三日だけください!」
「えっ、ちょっ」
アビゲール。君はエスコートされる側ではないか。自分が今女で、王子が男であることを完全に忘れてはいまいか。
そんな的確なツッコミをかませる人間は、この場にはいなかった。アビゲールはハンドルを失った車体のように暴走し、加速して、その勢いのまま部屋を出ていった。
「言質はとりましたよ! では、失礼しますわ!!」
ポカーンとしてる間に取り残されたのは、使用人や王子の護衛、そして王子本人だった。
「な、なにが起こるんだよ………三日後に」
ポツンと王子の声が響いた。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる