前世で悪帝と呼ばれた令嬢は、婚約者の王子に一目惚れをする。

夜のトラフグ

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chapter16 彼と彼女のプロローグ

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入学した学園に、好きな子がいた。

その子は物静かだけど優しくて綺麗で、窓辺でしゃんと咲く百合の花みたいな女の子だった。

彼女はいつも人に囲まれて笑っていた。穏やかで平和な空気を持つ人だったから、人に囲まれているのが良く似合った。僕はその様子を、遠くから見るのが好きだった。


♯♯

「さて、クラダディくん。私の言いたいこと、わかるかしら」

アビゲールさんはそう言って不敵に笑い、僕を壁へ追い込んだ。

「………あ、アビゲールさん……?」

「ふふふー、………顔色悪いわよ、クラダディくん。いつも冷静なのに、どうしたっていうのかしら」
「だっ………て、え? アビゲールさん、が…………いつもと違うから」
「ふっ、ふふ…………そーね、ちがうかも」
「………え?」
「………普段の私。それってどんな人なの?」

真っ直ぐそう尋ねるアビゲールに、いつもの柔らかな春のような気配はどこにも無かった。代わりに、静かな痛みを纏っていた。

ピリピリと肌に沁みる冷たい空気。
それは、殺気だった。


「………私はね。人も自分も嫌いだよ」

凍えるような、言葉から凍てついてゆくような声。
それは、彼女………の初めての告白だった。
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