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さん
chapter27 パンツのほうが動きやすいのに。
しおりを挟む「…………うーん」
現在アビゲールは空前絶後の懊悩を抱えていた。
「…………衣装ねぇ」
ピラリ、と刺繍の巧みな赤いドレスのスカートを捲り上げてアビゲールはしばし考える。
「………男装していったら、流石に角が立つかしら」
「何をいってるんですか、お嬢様!?」
横にいた使用人が思わずというふうに振り返って叫んだ。
「待ちに待った大事なパーティーですよ!? 男装していく人がありますか!」
「パンツのほうが動きやすいのに?」
「だめです! 王子殿下の婚約者として出席するからには、節度と常識をわきまえてください!!」
「スカートじゃあ足技は使いにくいのよ?」
「どこに使う場面があるんですか! わ・き・ま・え・て・く・だ・さ・い!!」
「王子と二人で男物の服着てたら、面白くない?」
「………」
「それにね、この私に上等な服を着せて、破いても知らないわよ?」
「………お嬢様」
使用人の目がなかなか本気になってきたので、アビゲールはそろそろ押し黙ることにした。
(………けど実際問題、可能性はなくもないのよねー…………)
言わずもがな、乱闘の、である。
(まー頼まれっちゃったけど? もしもの場合には? 致し方ないわよねえ?)
遠くを見ながら手をグーパーと動かすアビゲールに、とうとう音を上げた使用人は目でメイド長に助けを求めた。
「………ごほん。えーっと、お嬢様。実はこちらに、王子殿下の好みを反映した衣装のご用意がございます。僭越ながら、ご参考になさるのもよろしいかと……」
その瞬間、アビゲールの目がキラリと光った。
「へえ。じゃあそれ、ちょっとこっちに持ってきてよ」
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