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さん
chapter33 聞き捨てなりませんね。
しおりを挟むかの悪帝は、武器を好んだ。
無垢な子供も血濡れの罪人も等しく傷付けるところが愛しいのだと笑い、己に向かう刃にさえ寛容だった。
その証拠に最期、彼の子が剣を突き付けたときさえ、悪帝アルフレッド・ビルマンは笑っていたのだから。
♯♯
「ははははははは!」
「閣下、お声が大きいかと」
「これが笑わずにいられるか! もっと聞かせろ! アビゲール・ビリーが、何だって!?」
「閣下」
「アルフレッド・ビルマンが好きだと!? あの人形男がか!! はは、面白い! いずれアビゲール嬢とはお会いしたいものだ!」
男の高らかな笑い声が部屋に響く。
ここは王宮の、パーティー会場からは程遠い奥まった部屋。しかしそんな立地に見合わず、内装は王室のように豪華だった。
「暗殺者を数多く差し向けたが、いまだに死にやせん! ここはひとつ、取り込む方向で考える方がいいかもなあ!」
男は、下品に笑う。
「まだ、王子さえ何も知らないが………二人纏めてワシの玩具というのも面白い!」
そう言ってゴテゴテと指輪の絡んだ手で、男が膝を叩いたときだった。
「あら、聞き捨てなりませんね」
どこからか若い、女の声が聞こえた。
「………!? 何だっ!」
辺りを見渡すと、いつの間にか開け放たれていた窓にもたれて、一人の女がいた。
「殿下はこの国の宝。私以外の手で苛められる相手ではありませんわ」
「………誰だ、おまえは!?」
「あら、御存じではないの?」
スタン、と女は窓枠から飛び降りる。
その動きに、さっ、と呼ばれてきた衛兵が身構えた。
「私はアビゲール・ビリー。悪帝アルフレッドの狂信者にして、王子殿下の婚約者よ」
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