傾国の魔女が殺されたら、可愛いお姫様に転生した。

夜のトラフグ

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本編

13 襲撃

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 思えばオデットの知る彼は、いつも思い詰めたような顔をしている気がする。
 そのことに、積極的に踏み込むつもりはなかったが――

(こうも露骨に暗い顔をされると、流石に文句の一つも言いたくなるわね)

 まあ、実際に口に出すことはしないのだが。
 暗い空気を追いやるため、適当な話題を振ろうと思った、そのときだった。


 空が急に暗くなった。驚いてオデットは顔を上げる。そこにはナイフを持って降ってくる、人……。

「…敵襲!?」

 魔女であった過去を持つオデット姫には、相手が明確な敵意を持っていることが目を見るだけでわかった。思わず身構えるが――

(……対抗手段が、ないわね)

 これまで、暗殺未遂のような事件がないわけではなかった。しかし、王城では近衛たちに万全に守られていたため、脅威を感じることは無かった。
 しかし、この場にはジークフリートと二人。婚約者たちの逢瀬の場と気を利かせた使用人たちは、揃って席を外していた。わずか十二歳の少年など、いないも同然。護衛があてにできないとあれば……。

(魔法を、使うしか)

 しかし、見られて良いのか?
 魔女を倒した男の息子に。

 迷いがオデットを鈍くした。そのときだった。


「危ない、オデットさま!」

 ジークフリートの声が聞こえた。それと同時に、腕をぐいっと引かれて身体が地面を勢いよく転がった。咄嗟の判断で受け身をとる。髪や服に泥が付くのも厭わず、オデットは顔を上げて敵を見る。

 キイィィンッ!

 ジークフリートが、剣一本で敵と切り結んでいた。
 小回りの利きそうなナイフを両手に構えて器用に攻める敵を、ジークフリートは慌てた様子もなく冷静に躱す。普段の気弱で暗い様子が嘘のような、強者の余裕がそこにあった。

 ジークフリートのひと太刀、ひと太刀が相手の手を塞いでいく。そして最後には、敵のナイフが宙を舞った。

「――投降してください」

 敵の喉元に剣をかざしながらそう言った。その頃には、騒ぎに気付いた使用人たちも駆け寄ってきて、あっという間に襲撃犯は捕まった。
 未だ倒れたままだったオデット姫にジークフリートが気付き、駆け寄ってきて手を差し出す。

「申し訳ありません。……あの、姫さま。お怪我はありませんか」
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