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本編
20 朝一番の肝試し
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「姉さま。今日こそは一緒に遊びましょう!」
朝一番に、宮へ乗り込んできたユージーン。オデット姫はちらりと時計を一瞥して、仕方なさそうに微笑んだ。
「――まあ、今日は予定が入っていないから大丈夫ね。それでユージーンは何がしたいのかしら?」
「探検です! 先日見ることができなかった後宮の西側を見て回りたいのです!」
目をキラキラと輝かせているユージーン。その後ろでそっとユージーンの服の裾を引く少女がいた。彼女はオデット姫と目が合うと、そのまま平伏せんばかりの勢いで頭を下げた。
「姫さま、先日に引き続きお止めすることができず申し訳ありません。私は、乳兄妹失格ですわ…」
しょぼん、と落ち込む小さな肩。彼女は潤んだ目で俯き、下を見ていた。
オデットは慈愛の笑みを浮かべて首を振る。
「いえ、いいのよカイラ。あなた一人の責任ではないわ。監督不行き届きと言うなら、私の方でも同じですもの。愚弟二人が揃って迷惑をかけたわ」
「姫さま……」
尊敬の眼差しでオデットを見上げるのは、ユージーンの乳姉弟のカイラだった。彼女は真面目で抱え込むような性格で、同い年でありながら主人であるユージーンをいつも諫めている。
「それにしても…。後宮の西となると、ちょうど聖堂のある方面かしら?」
王宮は広く、敷地内には様々な建物が併設されているが、その一つが教会の本部である聖堂だ。そこに務める人々は特別な力を持ち、神官として日々国の未来を占い行く先の安寧を祈っているとか。
しかし、ユージーンは首を振った。
「いいえ。始めはそのつもりだったのですが……多くの市民や役人が出入りする聖堂は、王子が遊びで足を踏み入れる場所ではないと、リビアに叱られました」
「なるほど、その通りね」
「なので今回は、ここに行こうと思います!」
パラ、とユージーンが王城の見取り図を広げる。彼の指差す先は……。
「まあ。聖堂の……離れ? こんな所に小屋なんかあったかしら」
教会の区画に人目を忍ぶようにしてこっそりと存在するような、小さな建物があった。
「そこも礼拝堂だそうですわ、姫さま。信心深い先々代国王が、日頃お祈りするのに使用していたそうです」
「そうなの」
「ですが、もう何十年も使用されていないので荒ら屋同然だとか」
「しかも、姉さま! 中には秘密の地下室があって、夜な夜な異端の者たちが秘密のミサを行っているという噂があるのですよ…!」
「関係の無い人間が近付くと、捕まってぱくりと食べられてしまうそうです……」
真剣な顔で言い募る二人に、オデット姫はなるほど、とばかりに頷いた。
「つまり、私たちは肝試しに行くわけね」
「!? いえ、私たちはあくまで不審な噂のある小屋を確かめて、場合によっては処罰するために…!」
「その通りです!」
何やら言い募っていたカイラに対し、あっけらかんと肯定するユージーン。そんな彼を、カイラは「えっ、殿下!?」と振り返っていた。
「筋書きはだいたいわかったわ。で、行くのは夜でなくていいの?」
「夜は外出できません。それに、本当に何かあったときに夜では護衛の数が足りなくて危ないので」
「確かにね」
ここにきて真っ当なことを言うユージーンに「ならもう行かなくて良いんじゃないか」とオデットは思ったが、口に出すのは野暮だと思ったので控えた。
「じゃ、行きましょうか」
こうして三人(と護衛やお付きたち)は、連れ立って西の小屋へと向かっていった。
朝一番に、宮へ乗り込んできたユージーン。オデット姫はちらりと時計を一瞥して、仕方なさそうに微笑んだ。
「――まあ、今日は予定が入っていないから大丈夫ね。それでユージーンは何がしたいのかしら?」
「探検です! 先日見ることができなかった後宮の西側を見て回りたいのです!」
目をキラキラと輝かせているユージーン。その後ろでそっとユージーンの服の裾を引く少女がいた。彼女はオデット姫と目が合うと、そのまま平伏せんばかりの勢いで頭を下げた。
「姫さま、先日に引き続きお止めすることができず申し訳ありません。私は、乳兄妹失格ですわ…」
しょぼん、と落ち込む小さな肩。彼女は潤んだ目で俯き、下を見ていた。
オデットは慈愛の笑みを浮かべて首を振る。
「いえ、いいのよカイラ。あなた一人の責任ではないわ。監督不行き届きと言うなら、私の方でも同じですもの。愚弟二人が揃って迷惑をかけたわ」
「姫さま……」
尊敬の眼差しでオデットを見上げるのは、ユージーンの乳姉弟のカイラだった。彼女は真面目で抱え込むような性格で、同い年でありながら主人であるユージーンをいつも諫めている。
「それにしても…。後宮の西となると、ちょうど聖堂のある方面かしら?」
王宮は広く、敷地内には様々な建物が併設されているが、その一つが教会の本部である聖堂だ。そこに務める人々は特別な力を持ち、神官として日々国の未来を占い行く先の安寧を祈っているとか。
しかし、ユージーンは首を振った。
「いいえ。始めはそのつもりだったのですが……多くの市民や役人が出入りする聖堂は、王子が遊びで足を踏み入れる場所ではないと、リビアに叱られました」
「なるほど、その通りね」
「なので今回は、ここに行こうと思います!」
パラ、とユージーンが王城の見取り図を広げる。彼の指差す先は……。
「まあ。聖堂の……離れ? こんな所に小屋なんかあったかしら」
教会の区画に人目を忍ぶようにしてこっそりと存在するような、小さな建物があった。
「そこも礼拝堂だそうですわ、姫さま。信心深い先々代国王が、日頃お祈りするのに使用していたそうです」
「そうなの」
「ですが、もう何十年も使用されていないので荒ら屋同然だとか」
「しかも、姉さま! 中には秘密の地下室があって、夜な夜な異端の者たちが秘密のミサを行っているという噂があるのですよ…!」
「関係の無い人間が近付くと、捕まってぱくりと食べられてしまうそうです……」
真剣な顔で言い募る二人に、オデット姫はなるほど、とばかりに頷いた。
「つまり、私たちは肝試しに行くわけね」
「!? いえ、私たちはあくまで不審な噂のある小屋を確かめて、場合によっては処罰するために…!」
「その通りです!」
何やら言い募っていたカイラに対し、あっけらかんと肯定するユージーン。そんな彼を、カイラは「えっ、殿下!?」と振り返っていた。
「筋書きはだいたいわかったわ。で、行くのは夜でなくていいの?」
「夜は外出できません。それに、本当に何かあったときに夜では護衛の数が足りなくて危ないので」
「確かにね」
ここにきて真っ当なことを言うユージーンに「ならもう行かなくて良いんじゃないか」とオデットは思ったが、口に出すのは野暮だと思ったので控えた。
「じゃ、行きましょうか」
こうして三人(と護衛やお付きたち)は、連れ立って西の小屋へと向かっていった。
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