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本編
28 善性
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必死の形相で詰め寄ってくる令嬢たちを相手に、オデット姫は「あぁ、家に帰って本でも読みたいわね。何が良いかしら」などと一人現実逃避していた。
そんなとき、廊下に待ち人現るとばかりに空気を変えてくれる救世主が登場した。
「あれ、オデットさん! どうしたんですか?」
「ナターシャさん」
天衣無縫な笑みを浮かべて、パタパタと近寄ってくる。その様子にぎょっとしたのは、取り囲んでいた令嬢たちだった。
「えっ、オデットさん!?」
「あなた、この方をどなただと思ってるの!?」
「え?」
「いいのよ、私がそう呼んでって言ったのですわ」
騒ぐ令嬢たちを宥めながら、オデット姫は混乱に乗じてナターシャと共にその場を去った。最後に噂とは無関係だと念を押し、エウトの好きな人について聞いておくという約束をして。
たまたま次の授業が一緒だった二人は、教室に移動して後ろの方の席に並んで座った。
「あなたが来てくれて助かったわ。私一人じゃ収拾がつかなくなっていたの」
「いえ、私は何も……」
オデットがお礼を言うと少し考えるようにした後、ナターシャは言いにくそうに口を開いた。
「あの、オデットさんってもしかして結構良い家のお嬢さまなんですか?」
「えっ」
「私、今からでも様付けしたほうが……」
「いいのよ、そんなのいいわ」
オデットはそう言うが、少女は暗い顔で言った。
「……実は私は、親を亡くして親戚を転々としていたところをたまたま男爵家の夫妻に引き取られただけの孤児なんです」
オデットはその言葉に驚いた。明るく無垢な笑顔を浮かべる彼女に、そんな過去があったなんて思いもよらなかったからだ。
「私は本当はこの学園に通うには、身分違いで……」
「ねえ」
オデットは言葉を遮った。
「あなたがもしこの学園に通う生徒で一番身分が高くて、私がただの平民だったら、それで態度を変えたかしら」
「え……」
「しないわよね、あなたは。だからそれを返しているだけ」
オデットは確かに身分でいえば高貴な人間である。
しかし、それはただの生まれの話だ。オデットの前世は災いの魔女だし、この少女の魂はオデットがこれまで会った他の誰よりも清い。
「私はあなたを尊敬してるわ。友達になるならそれだけで充分でしょう? ナターシャ」
オデットはニッコリと笑ってそう言った。
そんなとき、廊下に待ち人現るとばかりに空気を変えてくれる救世主が登場した。
「あれ、オデットさん! どうしたんですか?」
「ナターシャさん」
天衣無縫な笑みを浮かべて、パタパタと近寄ってくる。その様子にぎょっとしたのは、取り囲んでいた令嬢たちだった。
「えっ、オデットさん!?」
「あなた、この方をどなただと思ってるの!?」
「え?」
「いいのよ、私がそう呼んでって言ったのですわ」
騒ぐ令嬢たちを宥めながら、オデット姫は混乱に乗じてナターシャと共にその場を去った。最後に噂とは無関係だと念を押し、エウトの好きな人について聞いておくという約束をして。
たまたま次の授業が一緒だった二人は、教室に移動して後ろの方の席に並んで座った。
「あなたが来てくれて助かったわ。私一人じゃ収拾がつかなくなっていたの」
「いえ、私は何も……」
オデットがお礼を言うと少し考えるようにした後、ナターシャは言いにくそうに口を開いた。
「あの、オデットさんってもしかして結構良い家のお嬢さまなんですか?」
「えっ」
「私、今からでも様付けしたほうが……」
「いいのよ、そんなのいいわ」
オデットはそう言うが、少女は暗い顔で言った。
「……実は私は、親を亡くして親戚を転々としていたところをたまたま男爵家の夫妻に引き取られただけの孤児なんです」
オデットはその言葉に驚いた。明るく無垢な笑顔を浮かべる彼女に、そんな過去があったなんて思いもよらなかったからだ。
「私は本当はこの学園に通うには、身分違いで……」
「ねえ」
オデットは言葉を遮った。
「あなたがもしこの学園に通う生徒で一番身分が高くて、私がただの平民だったら、それで態度を変えたかしら」
「え……」
「しないわよね、あなたは。だからそれを返しているだけ」
オデットは確かに身分でいえば高貴な人間である。
しかし、それはただの生まれの話だ。オデットの前世は災いの魔女だし、この少女の魂はオデットがこれまで会った他の誰よりも清い。
「私はあなたを尊敬してるわ。友達になるならそれだけで充分でしょう? ナターシャ」
オデットはニッコリと笑ってそう言った。
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