傾国の魔女が殺されたら、可愛いお姫様に転生した。

夜のトラフグ

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本編

32 頼みごと

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「無理にとは申し上げません。それに名前だけ在籍いただいて、参加はしないという形でも充分にありがたいのですわ」
「エウトさまが……あの方がそうおっしゃったんですか」

 少し唖然と固まったジークフリートは、そのまましばらくして困ったような笑みを浮かべた。

「私は構いません。それにせっかくのお話ですから、都合の付く限りは参加しますよ」
「まあ、ありがとうございます」

 快く快諾してくれたジークフリートに、オデットは感謝を示す。
 彼は基本的に、オデットの頼みを断ることはしない。それは彼の穏やかで優しい人柄とは別に、他の意味があることをオデットは未だ知らないでいた。

「そのうち、そのご友人の方にも挨拶をさせていただいても?」
「……そうですわね」

 話は纏まり、都合のつく休みに機会を設けることになった。
 オデットの立場を伏せておくという願いを忘れずに。

「ですので、私とジークフリートさまは友人ということでひとつ」
「…わかりました」

 窺うような表情でオデットを見ていた彼は、しかし何も言わずにそう答えた。


##

 そうして顔を合わせたジークフリートとナターシャは、互いに好印象を持ったようだった。学校のことや趣味のことなど話を弾ませる二人を見て、まるで見合いのようだなとオデットは思った。

 名残惜しいですがまた、と別れた帰り道でもナターシャは終始ご機嫌だった。

「とても素敵な方でしたね」
「そう」
「オデットさんの昔からのお友達なんですか?」
「そうね。エウトほどではないけれど……」

 八歳の頃からだから、いま十六歳のオデットの人生の半分付き合いがあることになる。初めて会ったのは弟のユージーンが生まれる前で、時間の流れに気が遠くなりそうだった。

 そんなことを考えているとき、ナターシャがぽつりと切り出した。

「オデットさん、私」
「なに?」

 いつになく真剣な顔をしている彼女を見て、オデットは思わず歩みを止めてその瞳を真っ向から見返した。

「私、あの人のことが気になるんです。会ったばかりなのに、忘れられない……。でも、この気持ちが何なのか私には分からないんです」

 切々と熱を灯した目で言うナターシャを、壁一枚隔てた遠くにいるような気持ちでオデットは見ていた。
 言葉は聞こえるのに、わからない。オデットはこういうとき何と言えばいいのか、前世からの経験をしてもわからない。

 そう言えば昔にも、こんなことがあったような気がする。
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