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本編
35 いざ、変装して調査
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神官長の魔女出現の報告を受けて、オデットは直ちに魔法を用いた調査を行い、次の魔女となる人物がオデットの通う「学園内」にいるということまでを突き止めた。
ここからは、秘密裏に学園を見て回るのが確実だろう。そこでオデットは画期的な手段をとることにした。
「あははっ、懐かしいなあ。味を占めたの?」
「変装として都合が良いだけよ」
放課後、少し付き合えと言い残されたエウトが王族専用の控え室でしばし待てば、そこに登場したのは学園の男子制服に身を包んだオデット姫だった。
エウトは噴き出し笑い転げたが、オデット姫は「それにまた面倒に巻き込まれるのは御免だわ」と短く呟くだけだった。エウトは目元に滲んだ涙を拭いながら、「そういえば」と思い出したように尋ねる。
「アレはいいの? クラブ活動」
物言いに、若干面白がっている響きがあることに気付いてイラッとしたが、オデットは普通に答えた。
「――今日はいいのよ、たまにはね」
「ふーん」
「……そう言えば、ジークフリートさまがあなたがクラブに入らず自分を推薦したことを不思議がっていたわ。というより、私も意外だったけれど。あなたたち、仲が良かったの?」
「別にー?」
ペラペラと話しながら化粧をしていくオデットを、エウトはボンヤリと見ていた。いつもの野暮ったい眼鏡をケースに仕舞い、生まれ持った美貌を存分に活かしていく様子にエウトはつい、「……変装するなら、普通逆だよなあ」と思っていた。
「さあ、行くわよ。まずは学内の見回りね」
「……ま、おれはオデットに付き合うだけだけどさ」
##
「きゃあー! エウトさまー!」
「今日も素敵ですわ!」
「学年主席の王子さま! 手を振ってー!!」
「隣の方は誰ですか!? すっごい美形!」
「あんな方いたかしら! 二人並んでらっしゃると、夜空の星々よりも輝いているようだわ!」
道を歩いていると次々聞こえてくる黄色い悲鳴。その様子にオデットは思わず呟く。
「……いつもこんな様子だったかしら」
「今日はエドも一緒だからだろうね」
事もなげにそう言うが、絶対違う。一体何をすれば、ただの生徒が舞台俳優のようなこんな扱いを受けるのだ。エウトの軟派は歳を重ねて磨きをかけたようだった。
オデットが呆れていると、きゃあきゃあと騒ぎつつも一定距離を保っていたファン(?)たちの中から、一人の女性が押し出されるように、しかし着実な一歩を踏みしめてオデットたちに近寄ってきた。
「エウトさま♡」
語尾にハートマークが付いているのが明らかな、胸焼けしそうなほど甘ったるい声だった。思わず死んだ目をしそうになったオデットの横で、エウトはパチリと目を瞬かせた。
「イライザ嬢」
(……! この方が……)
それは入学式で陰口を言っていた令嬢の言う、オデットが足元にも及ばないという少女の名前だった。
「エウトさま、お疲れではないですか? クラブ活動と勉強に加えて、最近では生徒会のお仕事も手伝っていると耳にしました。わたし、お身体を壊さないか心配で……」
「大丈夫ですよ」
エウトは隙の無い笑みで穏やかに答えた。しかし、イライザ嬢は食い下がった。
「でもぉ、エウトさまはただでさえ姫さまのお守りもなさっていて、忙しいのに……。今日もお呼び出しがあったのでしょう?」
その言葉に、エウトはちらりとオデットの様子を窺うような目を向けた。
なんだろう、この程度で怒り出すと思われているのだろうか。
令嬢は隣のオデットのことは全く眼中にないらしかった。その後も身体の心配にかこつけたデートの誘いや自分のアピールを続け、ついには長い付き合いでやや分かる程度の疲れた笑顔でエウトから穏便に追い払われていた。あの顔の皮の厚さには流石のオデットも感心しきりだ。
彼女が去った後、エウトからは「なんか、ごめん」と短く謝られたが、オデットは思わず「謝るのは私でいいのだろうか」と考えた。しかしそれは口に出さず、代わりにただ不敵に笑った。
「今回は目立つのが目的だから、このままいく。おまえは存分に私の横でキラキラしてろ」
「……イエス、サー」
ここからは、秘密裏に学園を見て回るのが確実だろう。そこでオデットは画期的な手段をとることにした。
「あははっ、懐かしいなあ。味を占めたの?」
「変装として都合が良いだけよ」
放課後、少し付き合えと言い残されたエウトが王族専用の控え室でしばし待てば、そこに登場したのは学園の男子制服に身を包んだオデット姫だった。
エウトは噴き出し笑い転げたが、オデット姫は「それにまた面倒に巻き込まれるのは御免だわ」と短く呟くだけだった。エウトは目元に滲んだ涙を拭いながら、「そういえば」と思い出したように尋ねる。
「アレはいいの? クラブ活動」
物言いに、若干面白がっている響きがあることに気付いてイラッとしたが、オデットは普通に答えた。
「――今日はいいのよ、たまにはね」
「ふーん」
「……そう言えば、ジークフリートさまがあなたがクラブに入らず自分を推薦したことを不思議がっていたわ。というより、私も意外だったけれど。あなたたち、仲が良かったの?」
「別にー?」
ペラペラと話しながら化粧をしていくオデットを、エウトはボンヤリと見ていた。いつもの野暮ったい眼鏡をケースに仕舞い、生まれ持った美貌を存分に活かしていく様子にエウトはつい、「……変装するなら、普通逆だよなあ」と思っていた。
「さあ、行くわよ。まずは学内の見回りね」
「……ま、おれはオデットに付き合うだけだけどさ」
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「きゃあー! エウトさまー!」
「今日も素敵ですわ!」
「学年主席の王子さま! 手を振ってー!!」
「隣の方は誰ですか!? すっごい美形!」
「あんな方いたかしら! 二人並んでらっしゃると、夜空の星々よりも輝いているようだわ!」
道を歩いていると次々聞こえてくる黄色い悲鳴。その様子にオデットは思わず呟く。
「……いつもこんな様子だったかしら」
「今日はエドも一緒だからだろうね」
事もなげにそう言うが、絶対違う。一体何をすれば、ただの生徒が舞台俳優のようなこんな扱いを受けるのだ。エウトの軟派は歳を重ねて磨きをかけたようだった。
オデットが呆れていると、きゃあきゃあと騒ぎつつも一定距離を保っていたファン(?)たちの中から、一人の女性が押し出されるように、しかし着実な一歩を踏みしめてオデットたちに近寄ってきた。
「エウトさま♡」
語尾にハートマークが付いているのが明らかな、胸焼けしそうなほど甘ったるい声だった。思わず死んだ目をしそうになったオデットの横で、エウトはパチリと目を瞬かせた。
「イライザ嬢」
(……! この方が……)
それは入学式で陰口を言っていた令嬢の言う、オデットが足元にも及ばないという少女の名前だった。
「エウトさま、お疲れではないですか? クラブ活動と勉強に加えて、最近では生徒会のお仕事も手伝っていると耳にしました。わたし、お身体を壊さないか心配で……」
「大丈夫ですよ」
エウトは隙の無い笑みで穏やかに答えた。しかし、イライザ嬢は食い下がった。
「でもぉ、エウトさまはただでさえ姫さまのお守りもなさっていて、忙しいのに……。今日もお呼び出しがあったのでしょう?」
その言葉に、エウトはちらりとオデットの様子を窺うような目を向けた。
なんだろう、この程度で怒り出すと思われているのだろうか。
令嬢は隣のオデットのことは全く眼中にないらしかった。その後も身体の心配にかこつけたデートの誘いや自分のアピールを続け、ついには長い付き合いでやや分かる程度の疲れた笑顔でエウトから穏便に追い払われていた。あの顔の皮の厚さには流石のオデットも感心しきりだ。
彼女が去った後、エウトからは「なんか、ごめん」と短く謝られたが、オデットは思わず「謝るのは私でいいのだろうか」と考えた。しかしそれは口に出さず、代わりにただ不敵に笑った。
「今回は目立つのが目的だから、このままいく。おまえは存分に私の横でキラキラしてろ」
「……イエス、サー」
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