傾国の魔女が殺されたら、可愛いお姫様に転生した。

夜のトラフグ

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番外編

01 冒険の誘い

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※ボーイズラブの要素があります。苦手な方はご注意願います。

――――――――――――――――――――


「エウト! 僕と一緒に海の向こうまで冒険に行こうよ」

 満面の笑みで手を差し出すユージーンを、エウトは眩しいものを見る気持ちで見つめ返し、困ったように笑って答えた。

「殿下。しかし私は、オデットの下で働くと決めているのですよ」
「僕はもう『殿下』ではないよ。それに、姉さまは連れて行きたければ連れて行っても良いって言ってたよ?」

 年下の特権を活かして可愛く小首を傾げるユージーンに、エウトは笑顔のままピキリと固まった。そして、頭の中で年の離れた弟に甘い幼なじみに、ありったけの恨み言をぶつけた。


##

「あら、良いじゃない。行きたいのなら行けば。新大陸に行くなんて心配だし、あなたが付いていってくれるのなら安心だわ」
「いやいや、心配なら止めようよ! 便利な幼なじみを付けるんじゃなくて」
「あの子がやりたいのなら仕方ないわ。あなたこそ心配なら付いていったら? 初めはあなたもユージーンに誘われて、始めはまんざらでもないみたいだったじゃない」
「………」

 エウトは黙り込んだ。その間にも、オデットは手元の書類をどんどん片付けていく。

 ユージーンの唐突な発表から四年、結局この国は王制を廃止し、表向きは国民が政治の中心を担う共和制を目指して奮闘していくこととなった。
 オデットたちの父親である元国王は、信任を失う形でそのまま隠居。暫定政府を樹立したが、しかしその代表となったのは国内外から信頼の厚いオデット姫だった。
 彼女は「私だと、政変の意味が無い」と最初は就任を拒否したものの、他に適任者も見つからず抜擢。他の役人や要人たちも殆ど顔ぶれを変えないまま、オデットたちはこの国の制度とあり方を模索していくことになる。

「……そもそも、今私が抜けて本当に問題ないんですか? オデット
「あら、お言葉ね。そこを何とかしていくまでがあなたの仕事じゃない? エウト第一秘書官殿」
「……はー。君たち元王族は勝手ばっかり言う」

 エウトは不貞腐れた気分だった。

 結果的に責任と面倒をそのまま姉へ丸投げする形になったユージーン。だが、彼の活躍はここで終わらなかった。学園の履修課程を滅多にない飛び級で終わらせ、そのまま海外へ渡航。留学の傍ら独自のコネクションを築き、戦争で途絶えていた外交関係を次々構築した。
 それと同時にどこからともなく出資の話を取り付け、商船を用意。航路の新規開拓に自ら乗り出すということだった。

「まるで籠から放たれた鳥のようね…。よほど今までの暮らしが窮屈だったとみえるわ」
「だからって、ここまで……。むかし、兄ちゃんがオデットを連れ出したみたいに、おれもユージーンさまをどこかへ連れて行けば良かったかなあ」
「過ぎたことはどうしようもないわ。諦めて、ユージーンと行くかここに残って扱き使われるか、好きな方を選びなさい」
「……どっちも嫌だー……」
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