溺愛αの初恋に、痛みを抱えたβは気付かない

桃栗

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向き合う過去

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土曜日の朝、晴から
”1日つき合え”
とメールが送られてきた。

いつも突然なんだよね、晴ってば。

昼からじいちゃんの店の手伝いをするつもりだったから、どうやって断ろうかと悩んでいると、台所から出て来たばぁちゃんに、店のことはいいから行ってこいと言われた。
ばぁちゃんも突然休みを言い渡されたから店を手伝えるんだって。

これって晴の仕業だよね?
どこまで策士なんだか。

了解のメールを入れ、待ち合わせの時間が送られて来た。


「ねぇ、晴、どこに行くの?」
待ち合わせは11時、晴は何も言わずに車は進んでいく。

「………。」

困った表情でこっちを見ると、僕の頭を撫でて手を握ってきた。
それから晴は何も言わなくなって、僕も黙って窓の外を眺めた。
なんだろう、僕も何か忘れている気がするんだけど、思い出せないんだ。
でも思い出さなきゃって?
街を出て高速道路に乗った。
2時間ほど経って高速の看板を何となく眺めて少しずつさっき考えていた”何か”がようやくわかってきた。

降り口の看板は、僕がどこかに追いやった記憶を思い出させた。

そうだ、ここって…

そう、僕の両親の…
身体が震えて口元に手をやった。
頬に伝う涙の粒が溢れて止まらない。

ごめんなさい

ごめんなさい


どうして忘れてたの?

こんな大事なこと…

なんで?

「あ…っ…」
「はる、晴、はる…はる…」

肩を寄せて抱きしめてくる晴が
「大丈夫…大丈夫だ…」


静かに車が進んで行く。
もうすぐその場所に到着する…


なぜ晴は僕をここに連れてきたんだろう?
忘れようとした?忘れていた?

ごめんなさい、お父さん、お母さん。


忘れていてごめんなさい。


僕辛かったんだ、とてもとても辛くて…

思い出したくなかったんだ…



晴翔越しに窓の景色は思い出したくない場所にもうすぐ到着する。

お父さんとお母さんの亡くなった事故の…場所に。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


とても天気のいい朝だった。
その日僕は学校の社会見学で、いつもより早く起きてお母さんの作るお弁当を眺めていた。

卵焼きにウインナー、ミートボールに僕の大好きなシャケおにぎり。
お母さんは意外に不器用で、いつもおにぎりの形が少し崩れているんだ。
卵焼きはめちゃくちゃ甘い。
これは僕のリクエスト。

お母さんの目を盗んでウインナーを口にいれる。
うん、美味しい!

「あーっ、智ダメでしょ?お弁当に入れるウインナー少なくなっちゃうよ?」

「だって食べたかったんだもん!あー、早くお昼にならないかな??もうここで食べたい!」

「朝ごはん食べたばっかりじゃない!」
母さんは笑いながら僕にデコピンをした。

横から顔を出した父さんも卵焼きをポイっと口に入れ
「うっっ、甘い」
額に皺を寄せてまずいと呟いた。

「何で?甘いの美味しいよ??」
「父さんは醤油味の方が好きだな、なー母さん!」

父さんが母さんに抱きついて頬にキスをした。
「もーーー、お父さんやめて!智がみてる!」


賑やかな朝の風景。
僕はこんな両親が大好きだった。
だからこの日が最後になるなんて思っていなかったんだ。

反対側から車線を越えてきたトラックと両親の車は衝突した。
トラックの運転手は脳卒中で意識をなくしていたらしい。

その事故で3人とも亡くなった。


その内の2人が僕の両親だった。









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