ある夏の思い出

shoichi

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第2章

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「飯、食うか!!」

その一言で、僕は手に持った物を置いて、その場を足早に逃げ出した。

木陰が当たる小さなベンチで座っていると、星矢がビニール袋を持って現れた。

「ほら。」

少し熱が足りないのでは。と思う、コンビニの牛丼弁当。

さっき、アパートの大家に貰った。と言う、ペットボトルのお茶。

「あ、ありがと。いただきます。」

とても、十七歳とは思えない対応と顔。

「星矢は、何のために、こんなことやってるの?」

あ?と、口をモグモグしながら言った後に、

「生きるためかな。それと…」

「それと?」

星矢は、照れ笑いをしながら、

「ゆ、夢…のためだ!!」

食べていた同じ牛丼弁当を、一気に食べ干した。

「ふーん。」

そんな答えを望んでいなかったのか、星矢が急に説教をしだす。

「人に聞いておいて、ふーん。は無いだろ!!」

ご、ごめん。と言った時には、もう遅かった。

星矢の手が上がった時、この間のゲンコツと、イジメられていた時の条件反射で、頭をかばった。

「いてっ。」

持っていた弁当の蓋が、星矢の腕をかすり、血が滲み出ていた。

「ご、ごめん!!」



振り上げていた星矢の右手は、僕の頭を優しく撫でてくれるものだった。
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