ラブレター

shoichi

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ラッキーボーイ

君の瞳に

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pm.4:55

「おはようごさいます。」

お店の入口のドアを開け、挨拶をした後、開けたドアを閉めた。

「あっ、ママ。お話が。」

女経営者のおばあさんは、飲食店に相応しくないであろうペットの、細かい世話をしていた。

「何?」

「明日から、休みください。」

三つもバイトをしていたから、ほんの少し余裕がある財布。

「どうしたの?まぁ、いいわよ。」

ありがとうございます。と言い、お店のユニフォームに身を包んだ。

pm.7:34

「そっか。ゆうちゃん、帰るのか?」

いつものオジサンが、寂しそうに言ってきた。

「一時、帰宅です。また、帰ってきます。」

毎回、僕に晩酌をさせるオジサンが、今日は可愛く見えた。

「夢か女か…。中途半端は、どちらも失うぞ?」

聞く耳を持たず、頭の中は、明日のことで、いっぱいだった。

その逆に、このお店のお客は、人が疎(まば)らだった。

pm.9:56

「そっか。やっと。って感じだね?」

バイトのお姉さんの友達の人も、今日は来てくれた。

「そうだね。今から、緊張してる。」

笑い混じりに話しながら、お土産、待ってるね。と言われる。

シェイカーを振りながら、ピルスナーに注いだカクテル。

ピンク色をしたカクテルに、ブルーキュラソを足した。

気分が良い時か、自分の練習でしか作らないカクテル。

「君の瞳に。」

いや、格好つけたかった訳ではなく、バイトの先輩に教えてもらった、裏メニューの名前。

「凄く綺麗だね。」

ピンクとブルーのグラデーション。

夕方の空から、夜に変わるような色。

味も、飲む場所、タイミングで全て変わるように作られている。

それは、飲むのが勿体無い。と言う女性の口に運ばれた。 

am.00:25

「いらっしゃいませ。」

サラリーマン。と思われる男性二人が、少し遅い時間に入ってきた。

「お席、ご案内させていただきます。」

こちらへ、どうぞ。と言いながら、靴を脱ぐ和室へ、案内した。

おしぼりを渡した後、

「お飲み物は、お決まりですか?」

いつもの台詞を、僕は言う。 
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