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最後の恋
ガラスの靴
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夜の十二時を越え、南瓜の馬車は、ただの車に変わっていた。
「行こうか。」
うん。と返事がきて、見ていた景色を後にしながら、あいの手を引いて歩く。
車の前で、ほどけたあいの指。
もう、触れることはないんだな。と、少しだけ寂しくなった。
バタン、バタン。と二つのドアが閉まる音が、静寂な闇に響きわたる。
車の鍵を回し、再度鳴り始めた音楽と、激しいエンジン音。
ギアを切り替えると、僕らを乗せた車が、動き始めた。
「最近、どうなの?」
踏み込んだアクセルを、一旦離しては踏み込み、通り過ぎる景色を見ながら、あいと話してた。
「うん。大変だよ。」
もう少しで学校も終わるから、それに向け、今からでも忙しいことが、話していて伝わってくる。
「あっ、そうだ。」
赤信号で止まった時に、お尻の方から、慌てて財布を取り出した。
長財布のチャックを開け、それをあいに渡す。
「なに?」
チャックを閉め、両膝に置かれた財布。
青信号になり、また、踏み込んだアクセル。
「いや、大したことないけど。」
暇な時に、作ったんだ。と、説明して、可愛いでしょ?と少しだけ、わき見運転をしながら、隣の顔を覗きこんだ。
「犬…かな?」
車に乗り込んでから、また、一度も笑わないあいがいて、ももちゃんをイメージした。と言っても、そっか。と、一言しか返ってこなかった。
「それが、これから先、あいを守ってくれますように。」
恥ずかしくて、片手でハンドルを握っていた僕の空いていた左手で、そっと、あいの頭を撫でた。
「何それ。」
微笑んだあいがいて、とても嬉しい気持ちになったよ。
そんな思いを過ぎて行く、サヨナラの時間が、次第に近付いてくる。
遅くまで、無理して付き合ってくれた。と思うと、何とも言えない罪悪感が襲ってきた。
暗くなりそうになる自分に気付き、目を閉じて、首を振り、笑ってあいと話をしていた。
「俺はさ、笑ってるあいが好きだから。」
「うん。」
「だから、笑えよ。」
頬を摘まんでみると、うぅ。と、変な声が返ってくる。
段々とスピードを落とし、見慣れた家の前で、車が止まった。
「ありがとね。」
ゆっくりと、シートベルトを外しながら、僕の顔を覗きながら開かれたドア。
目を見たら、泣き出しそうな気がして、下を向いて、おう。と呟く。
「あっ、待って。」
もう、後悔したくなくて、あいの方のドアが閉まる前に、僕も車を降りていた。
それと同時に閉まるドアが一つあって、走るようにあいの前に立つ僕。
「お母さんに、怒られちゃうよ。」
また、遅くなる。と思われたのか、申し訳ないな。とも思ったけれど、
「おいで?」
と、身体を寄せた二人。
優しく抱き締めた僕と、それに、身を預けてくれる君と。
目を閉じて考えていた、沢山のありがと。
「…よし。」
長い時間をかけてはいけない。と、離れた二人。
「もう、大丈夫?」
年上の余裕からの言葉なのか、おう。と平静を装って言ってみても、ゆっくり階段を上っていく君が、
「ありがと。」
と、微笑んで手を振る仕草に、やっぱり敵わないな。と、僕も叶わない願いと一緒に、微笑んで手を振った。
パタン。と玄関の閉まる音が聞こえ、それを確認してから、一人、車に乗った。
温かさが残ってあるサイドシートに、置き去りにされた笑顔。と言う名の硝子の靴。
それを乗せて、動き出した、小さな車があった。
「行こうか。」
うん。と返事がきて、見ていた景色を後にしながら、あいの手を引いて歩く。
車の前で、ほどけたあいの指。
もう、触れることはないんだな。と、少しだけ寂しくなった。
バタン、バタン。と二つのドアが閉まる音が、静寂な闇に響きわたる。
車の鍵を回し、再度鳴り始めた音楽と、激しいエンジン音。
ギアを切り替えると、僕らを乗せた車が、動き始めた。
「最近、どうなの?」
踏み込んだアクセルを、一旦離しては踏み込み、通り過ぎる景色を見ながら、あいと話してた。
「うん。大変だよ。」
もう少しで学校も終わるから、それに向け、今からでも忙しいことが、話していて伝わってくる。
「あっ、そうだ。」
赤信号で止まった時に、お尻の方から、慌てて財布を取り出した。
長財布のチャックを開け、それをあいに渡す。
「なに?」
チャックを閉め、両膝に置かれた財布。
青信号になり、また、踏み込んだアクセル。
「いや、大したことないけど。」
暇な時に、作ったんだ。と、説明して、可愛いでしょ?と少しだけ、わき見運転をしながら、隣の顔を覗きこんだ。
「犬…かな?」
車に乗り込んでから、また、一度も笑わないあいがいて、ももちゃんをイメージした。と言っても、そっか。と、一言しか返ってこなかった。
「それが、これから先、あいを守ってくれますように。」
恥ずかしくて、片手でハンドルを握っていた僕の空いていた左手で、そっと、あいの頭を撫でた。
「何それ。」
微笑んだあいがいて、とても嬉しい気持ちになったよ。
そんな思いを過ぎて行く、サヨナラの時間が、次第に近付いてくる。
遅くまで、無理して付き合ってくれた。と思うと、何とも言えない罪悪感が襲ってきた。
暗くなりそうになる自分に気付き、目を閉じて、首を振り、笑ってあいと話をしていた。
「俺はさ、笑ってるあいが好きだから。」
「うん。」
「だから、笑えよ。」
頬を摘まんでみると、うぅ。と、変な声が返ってくる。
段々とスピードを落とし、見慣れた家の前で、車が止まった。
「ありがとね。」
ゆっくりと、シートベルトを外しながら、僕の顔を覗きながら開かれたドア。
目を見たら、泣き出しそうな気がして、下を向いて、おう。と呟く。
「あっ、待って。」
もう、後悔したくなくて、あいの方のドアが閉まる前に、僕も車を降りていた。
それと同時に閉まるドアが一つあって、走るようにあいの前に立つ僕。
「お母さんに、怒られちゃうよ。」
また、遅くなる。と思われたのか、申し訳ないな。とも思ったけれど、
「おいで?」
と、身体を寄せた二人。
優しく抱き締めた僕と、それに、身を預けてくれる君と。
目を閉じて考えていた、沢山のありがと。
「…よし。」
長い時間をかけてはいけない。と、離れた二人。
「もう、大丈夫?」
年上の余裕からの言葉なのか、おう。と平静を装って言ってみても、ゆっくり階段を上っていく君が、
「ありがと。」
と、微笑んで手を振る仕草に、やっぱり敵わないな。と、僕も叶わない願いと一緒に、微笑んで手を振った。
パタン。と玄関の閉まる音が聞こえ、それを確認してから、一人、車に乗った。
温かさが残ってあるサイドシートに、置き去りにされた笑顔。と言う名の硝子の靴。
それを乗せて、動き出した、小さな車があった。
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