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第一章 オメガの俺が最強勇者の子供を身ごもるまでの話
9. レオスの献身
俺と宿に戻るなり、レオスは彼より三つ歳上のヴォルフに引き摺られるようにして、彼らが泊まる部屋まで連行されて行った。
ちなみに、レオスは俺より二歳上、キリィはパットと同い歳で俺より一つ上である。
本当にものすごく心配をかけたらしいので、おそらくレオスは説教を喰らっているのだろうが、その様子は俺にはあまり想像がつかなかった。ヴォルフはとにかく真面目な性格で、しかも寡黙なのだ。
叱りつけるなら性格的にも気の強いパットの方が適任だと思うが、ヴォルフの方が普段は穏やかな分、きっとアイツには堪えるわよ、とパットがケラケラ笑いながら言った。
……なるほど、そういうものか。
「俺もあとで謝りに行かないと」
「さすがに、ぐったりしてたあんたには何も言わなかったわね」
「パット。ヴォルフには、その……」
「……あんたがオメガだってことは言ってないわよ。ヴォルフだけじゃなく、キリィにもね。本当の本当に、アイツが勝手に気がついただけ」
俺が横になっているベッドの枕元で、パットは腕を組んできっぱりとそう言い切った。
俺は、その言葉を素直に信じることができた。
パットは嘘が嫌いだし、くだらない嘘をついて取り繕えるほど、器用な性質でもなかった。
宿屋に泊まるとき、俺とキリィはいつも相部屋だったので、どこかで気づく機会があったのだろう。
ヒートが明けたら、ヴォルフにもちゃんと言って謝ろう、と俺は心に決めた。
ヒートが完全に治まるまではと、キリィは俺を部屋に一人で閉じ籠らせてくれた。夜はレオスとヴォルフの部屋で寝るという。
パットはときどき俺の様子を見にきたり、食事を持ってきてくれたりと、しっかり面倒をみてくれた。
俺は鎮静効果のある香を焚いて本を読んだり、抑制剤を飲んで横になっていたりしたが、夜が更けるにつれて、次第に寝つけなくなっていった。
原因はわかっている。俺は目を閉じて切なく疼く胸許を押さえた。
吐く息が熱い。火照った身体をどうにかしたくて、何度も何度も寝返りを打った。
俺にはわからなかったが、昨夜のことを思い出せば自明だ。この部屋にはきっと、咽せ返るような俺の発情臭……フェロモンが充満しているはず。
もしもこの部屋にいたなら、ベータのキリィにもはっきりとわかったことだろう。だから一人にしてもらえてよかったのだが、こんなにひどいヒートは初めてで、心細さのあまり涙が出た。
書物や伝聞だけに頼り、自分はヒートが軽いなどと言って、高を括っている場合ではなかった。
周りにオメガが一人もいなかったからわからなかったが、きっと今まではオメガとしてただ未成熟だっただけなのだ。
果てなく続くかに思えた孤独で苦しい時間が、ふいに終わりを告げる。
強いノックの音とともに、切羽詰まった声がした。
「……トワ!」
「レオス?」
起きて駆け寄り、扉の鍵を開ける。彼を部屋に入れてしまったらどうなるか、わかりきっているのに俺は止まらなかった。迷いもしなかった。
勢いよく開いた扉から、男が素早く身体を割り入らせてくる。
「レオス、どうして……」
無言でぎゅうと抱き締められて、俺は震える声で問う。レオスの身体も火のように熱い。
「まったく。こんな熱烈に誘っておいて、どうしてはないだろう」
怒ったように言いながら、無遠慮に硬い中心を押しつけられたその瞬間、身体の奥がじわっと濡れるのを感じた。
ああ、昨夜レオスと繋がった場所が歓喜している……。
「さ、さそって、な……、あ、ああ……っ」
「ふ、いい子だな」
気づいたレオスが、褒めるように俺の髪を撫でた。
俺の欲望はまだ中途半端な反応のままだというのに……。先にナカが濡れてしまったことに居た堪れない思いでいると、レオスが慰める調子で続けた。
「そうだ、この甘い匂い……。ヒートがまだ終わってないんだ。だからまた俺が欲しくなって、お前はたくさんフェロモンを出して誘っているんだよ。アルファを求めるのが、オメガの本能だから」
「……オメガ、の」
──本能?
(じゃあ、レオスが俺を求めてくるのは、俺が、オメガだから?)
何か言い知れない感情が込み上げてきたが、それをはるかに凌駕する欲情にすぐ押し流されてしまった。
熱っぽい唇を触れ合わせてきたかと思うと、レオスの舌が強引に口内に押し入ってくる。
「……んっ、ぁふっ」
逃がそうとした舌に痛いほど吸いつかれ、執拗に舐られる。
感度が上がって、鼻から抜けるような喘ぎ声が漏れ出す。
ようやく解放されたときには、ぐにゃりと力の入らない身体でレオスにもたれかかっていた。
レオスは後ろ手に鍵をかけると、俺を横抱きにしてベッドまで運ぶ。
剥ぎ取るようにして寝間着を脱がされ、露わになった胸の突起をちゅ、と吸い立てられた。
身体中に、昨夜レオスによって付けられた印や歯型が残っている。その印の上を、ひとつも余さずに唇と舌が丹念に這わされていく。
……それもとても気持ちがいいのだが、足りなかった。
頭の中が真っ白になるような底無しの快楽を、俺の身体はもう知ってしまっているからだ。
その甘くて残酷な愛撫にとうとう耐えきれなくなった俺は、終いには自分から足を開いて濡れ濡った秘所を晒す。
そして、このときまで一度も口にしたことがないような淫猥な言葉で、レオスのモノを挿入れて欲しいと泣きながら強請った。
早く、その大きな熱いペニスを嵌めて欲しい。それで滅茶苦茶に動いて、いっぱいナカに擦り付けて欲しい。太い雁首で奥の奥までこじ開けて、結腸の奥に潜んでいるオメガの子宮をぐちゃぐちゃに犯して欲しい……。
俺が抱く欲望は、全てレオスによって暴き立てられたもの。
何を望んで、何が行われているのか。頭の芯では最初から全部わかっているだけ、初めてのときよりも辛くて惨めだった。
結局、生まれついたメスの獣性からは、どう足掻いてもけっして逃れられないのだと、そう思い知らされているようで。
「トワ……!」
「……ッ、ぐ、ぁ!」
ようやく足を抱えられたかと思うと、正面から一気に貫かれた。待ち望んだ挿入に、全身をゾクゾクとした鋭い快感が走りぬける。
レオスの熱い身体が覆いかぶさってきた。びくっびくっと快感に戦慄く身体を肌身で味わうように抱きすくめられて、互いの汗みずくの身体がぴたりと密着した。
「ん、れお……、っん、ふっ」
レオスは舌で俺の口腔を犯しながら、強い律動で内奥を強く突き上げてくる。
ぴんと勃ちあがった胸の突起にむしゃぶりつかれ、俺はまた、蛙がへしゃげたような「ぐえっ」とか「ぐおっ」などと、色気もへったくれもないひどい声を上げていた。
相当耳につくはずだったが、今回もレオスは何も言わなかった。ヒートに当てられてさえいなければ、きっと幻滅ものだっただろう。
昨夜のレオスは、アルファの激しい獣欲に煽られるがまま、オメガである俺を求めて無心に奪いつくしているように見えた。
だが、今は。俺の目をじっと覗き込み、加減を窺っているような意思を感じる。
自らの獣欲は抑え、ただひたむきな献身をもって俺の底無しの欲望を満たし続けている……。
──そうして三日三晩の間、俺たちは番よろしく部屋に閉じ篭り、まるで獣のような激しい交尾に明け暮れたのだった。
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